表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
曖昧me妹  作者: 栗栖紗那
一章 コンクラ(ー)ベ
5/8

第五節

 飛香に言われた通り、放課後に下校する生徒へ向けて挨拶を行った。

 完全下校時刻になり、俺も挨拶を切り上げて下校することにした。秀次と飛香は用事があるとのことで、途中で帰ってしまったので、千華雅ちかげと待ち合わせて帰ることにした。

「おにいちゃんっ!」

 下駄箱で待っていた俺にタックルしてくる妹。いや、正確に言えば胸に飛び込んできたのだが、勢い余って俺は背中から転倒。危うく頭を強打しそうになった。

 妹はそんな俺の事情など斟酌せず、心地よさそうに胸に頬をこすり付けていて、今にも喉を鳴らしそうな状態だ。

「こら、離れなさい。ここは学校です」

 おでこに軽くでこぴんをしてやると、彼女はしゅんとした顔をして俺の上から退く。そして、そのまま立ち上がると思いきや、

「ちゅっ」

 頬に温かく、柔らかいものが押し付けられ、そしてすぐに離れて行った。ただし、頬とはいっても唇すれすれ。いや、少しかすっているぐらいの場所だった。

「…………」

 顔を見やって意図を確かめようとしたが、無駄だと悟る。妹の愛情表現はたまに行き過ぎるが、唇にしなかっただけまだましだ。子供のころなんか、もろに唇にしてきたこともある。ということは、ファーストキスはすでに妹様に奪われているわけだ。

 それについてはいいんだ。合意の上だったし。

「さてと」

 あまり気にするのもあれだ。妹の思うつぼのような気がするので、いつも通りの態度。千華雅は少し不満そうだが、頭を撫でてやると相好を崩した。

「行こうか」

「うん」

 俺たちははたから見れば恋人のように仲睦まじく、戯れながら帰路を歩む。そして、俺たちは周囲の視線など意に介していなかった。

 家についた俺たちは母の用意した夕食を頂く。父は仕事で遅くなることが多く、あまり家では食べない。その代わりというように、昼食は常にお弁当を持たせている。かくいう俺の弁当もその時のついでというわけだ。

「そういえば御影」

 いつも通りにおいしい夕食をぱくついていると、母が話しかけてきた。俺は顔を上げ、目を見返すと、

「生徒会長の選挙に出るらしいわね、あなた。ちぃちゃんから聞いたわよ」

 俺はジト目で“ちぃちゃん”こと我が妹千華雅を見やる。彼女は素知らぬ顔で、

「おにいちゃんってば積極的だよねっ。わたし、うれしいな」

「そうね。御影ってば、めったに自分から動こうとしないのに、どういう心境の変化かしらね? お母さん逆に心配よ」

「…………」

 そこにおわす小悪魔が原因ですよ、お母様。心ではそう思うが、口には出さない。言ったところで意味はないからだ。

「しかし、結構大変なんだな、選挙って。そう思うと、街頭演説してくるおじさんたちがえらく見えてきちゃうぐらいだ」

「そうね、結構大変だと思うわよ。対抗馬がどれだけいるか知らないけど、結局人望がなきゃ誰もついてきてくれないし、スキャンダルなんてもってのほかよ」

「スキャンダル、ね……」

 たかが学校の生徒会長をめぐる選挙でそんなスキャンダルが起こりうるだろうか?

「まあ、それはともかくとして、人望は大事だよな」

「わたしはおにいちゃんに入れるからねっ!」

「はいはい、ありがとさん」

 立候補者は投票権ないんだからな、言っとくが。

 夕食を終え、お風呂に入って部屋で一息。飛香に言われた公約を考え、しかし、それはすでに胸の内にあった。なにも、難しいことではない。そして、言うだけなら簡単。実現に伴う苦労や障害を無視しても、俺はそれをやり遂げたいと思っていた。たぶん、それは学校のみんなも共有してくれるものだろう。しかし、それまでに通るであろう労苦を背負わなくていいならば、の話ではあるが。

 まあいい。他人に頼るようだが、秀次や飛香も手伝ってくれる。そう、素直に信頼できる奴らだ、二人とも。

 俺は信頼に胸を軽くしながら、眠りの淵へと落ちて行った。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ