中東戦線
同時刻、イラン帝国国境地帯。
神聖ゲルマン連邦帝国の中東属州第4機甲軍団は、侵攻開始からイラン帝国の防衛線を突破していた。第2世代主力戦車アイアンレギオンが砂塵を巻き上げ、50キロの速度で前進する。55口径110ミリ主砲が咆哮を上げ、灼熱の砂漠を切り裂きながらイラン軍の陣地を粉砕していく。戦車の履帯は砂を蹴散らし、灰色の砂嵐のように視界を覆ったが、ゲルマン兵士たちはそれを恐れなかった。むしろその砂嵐は、彼らの進撃を隠す盾となった。
先頭を切るのは、第12SS機甲師団『ヒトラーユーゲント』だった。師団長のクラウス中佐は、指揮車輌の砲塔から顔を出し、双眼鏡で前方を睨む。顔には冷たい笑みが浮かんでいた。
前進速度を落とすな。イランの異教徒どもに、ゲルマン民族の優位を刻み込め、彼の言葉通り、イラン帝国軍の第3機甲師団は、既に壊滅状態に近かった。この師団は大日本帝国の第1世代主力戦車である49式戦車を主力にしていたが、神聖ゲルマン連邦帝国軍の第3世代ジェット戦闘機メッサーシュミットMe485サラマンダーの制空権掌握によって、地上部隊の移動は極めて危険だった。Me485サラマンダーの機銃掃射が砂漠を切り裂き、イラン帝国陸軍のトラック車列は炎上し、兵士たちは砂に伏せて逃げるしかなかった。
そんな状況にクラウス中佐の冷酷な命令により、155ミリ自走榴弾砲群が一斉に砲撃を開始した。砂漠を震わせる轟音とともに、榴弾がイラン帝国陸軍の陣地に着弾し、砂塵が吹き上がる。陣地にあった49式戦車は、装甲を貫通され爆発炎上した。生存者の悲鳴が熱風に混じって消えていく。
イラン帝国陸軍の指揮所では、師団長のアリハッサン少将が、無線機を握りしめていた。顔は汗と砂で汚れ、目には絶望が浮かんでいる。総本部からの連絡では、一斉侵攻に対処する為に派遣すべき援軍は出し尽くしておりない袖は振れないという状況だったのだ。ハッサン少将は拳を握りしめた。
撤退という言葉は、敗北を意味する。だが現実は容赦なかった。神聖ゲルマン連邦帝国軍の第12SS機甲師団は、既に師団本部から40キロ以内に迫っていた。アイアンレギオンの砲塔が砂漠を切り裂き、50キロの速度で迫ってくる。イラン帝国陸軍の対戦車砲は、240ミリ厚の装甲を前に無力だった。そんな状況でも神聖ゲルマン連邦帝国軍の砲撃が再び始まった。砂漠は地獄と化した。灼熱の砂が爆ぜ、兵士の体が吹き飛ぶ。49式戦車の残骸が炎上し、黒煙が空を覆う。生存者は砂に伏せ、焼けつく熱風に耐えながら銃を構えるが、神聖ゲルマン連邦帝国軍の歩兵は容赦なかった。武装親衛隊の兵士たちは、砂上を装甲車で移動しながら、MG42機関銃を乱射した。弾丸が砂を抉り、イラン兵の体を貫く。
クラウス中佐は、指揮車輌から無線で総統からの命令を下す。
──中東を灰にせよ――
神聖ゲルマン連邦帝国軍の進撃は止まらなかった。アイアンレギオンの履帯が砂を踏みしめ、灼熱の砂漠を砕きながら前進する。イラン帝国陸軍の陣地は次々と陥落し、生存者は砂漠を逃げ惑うしかなかった。砂は血で赤く染まり、黒煙が空を覆い、爆音が響き渡る。
同時刻、ペルシャ湾岸のイラン海軍基地では、海軍第2艦隊の司令官モハンマドレザー提督が、無線機を握りしめていた。支援艦艇が神聖ゲルマン連邦帝国海軍の砲撃型原子力潜水艦U-900級の砲撃を受け、炎上している。イラン帝国海軍の艦艇は、必死に反撃を続けるが、潜水艦の30センチ砲は容赦なく艦体を貫く。
神聖ゲルマン連邦帝国海軍潜水艦隊は湾内を自由に遊弋し、イラン帝国の石油タンカーを次々と撃沈した。黒煙が湾を覆い、原油が海面に広がる。生存者は炎上する艦から海に飛び込み、焼けつく海水に耐えながら泳ぐが、機銃掃射が容赦なく降り注ぐ。
空では神聖ゲルマン連邦帝国空軍のMe485サラマンダーが数的優位から、イラン帝国空軍の58式戦闘機極光改を次々と撃墜していた。サラマンダーのミサイルが空を切り裂き、イラン帝国空軍の戦闘機は炎に包まれて墜落する。地上の対空砲は、ジェット機の速度に追いつけず、無力だった。
イラン帝国軍の全戦線は、圧倒的な劣勢に立たされていた。陸ではアイアンレギオンの重戦車が砂漠を蹂躙し、海ではU-900級の砲撃が湾岸を焼き、空ではMe485が制空権を完全に掌握していた。イラン帝国の兵士たちは、必死に抵抗を続けるが、弾薬は枯渇し、補給線は寸断され、士気は崩壊寸前だった。
そしてイラン帝国軍は、国境地帯の防衛線をほぼ失った。生存者は後退を余儀なくされ、援軍の到着を祈るしかなかった。




