ロシア戦線
1965年5月7日、ロシア連邦クラスノヤルスク周辺。
神聖ゲルマン連邦帝国の第3機甲軍団は、侵攻開始からわずか2日でロシア連邦の防衛線を深く突破していた。神聖ゲルマン連邦帝国陸軍の誇る第2世代主力戦車アイアンレギオンが雪を蹴散らし、50キロの速度で前進していた。春の雪解けにより進撃は容易な筈だったが、この時期の気候は気紛れであり一夜にしてドカ雪となるのも普通だった。日中は気温が高い為に数日もすれば溶けるが、その雪を蹴散らせて神聖ゲルマン連邦帝国陸軍は進撃し続けていた。
55口径110ミリ主砲が咆哮を上げ、ロシア軍の陣地を粉砕していく。戦車の履帯は雪を巻き上げ、灰色の煙幕のように視界を覆ったが、神聖ゲルマン連邦帝国陸軍兵士たちはそれを恐れなかった。むしろその煙幕は、彼らの進撃を隠す盾となった。
先頭を切るのは、第7SS機甲師団ヴィキングだった。師団長のハンスフォンシュタイナー大佐は、指揮車輌の砲塔から顔を出し、双眼鏡で前方を睨む。顔には凍りついたような笑みが浮かんでいた。
その笑み通りロシア連邦陸軍の第12自動車化狙撃師団は、既に壊滅状態に近かった。ロシア連邦陸軍のこの師団は国境警備に主軸を置き、旧ソ連時代の旧式兵器であるT-34やIS-2を主力にしていたが、神聖ゲルマン連邦帝国空軍の第3世代ジェット戦闘機メッサーシュミットMe485サラマンダーの制空権掌握によって、地上部隊の移動は極めて危険だった。
Me485サラマンダーの機銃掃射やロケット弾斉射が雪原を切り裂き、ロシア連邦陸軍のトラック車列は炎上し、兵士たちは雪に伏せて逃げるしかなかった。
そしてシュタイナー大佐の命令で、155ミリ自走榴弾砲群が一斉に射撃を開始した。雪原を震わせる轟音とともに、榴弾がロシア連邦陸軍の陣地に着弾し、凍土が吹き飛ぶ。陣地にあったT-34は、装甲を貫通され爆発炎上した。生存者の悲鳴が雪風に混じって消えていく。
ロシア連邦陸軍の指揮所では、師団長のイワンペトロフ中将が、無線機を握りしめていた。顔は蒼白で、額に汗が浮かんでいる。
援軍を要請しているがロシア連邦全域への侵攻は、一斉に行われており何処も兵力不足だった。それはロシア連邦に駐留する大日本帝国陸空軍も同じであり、手一杯だったのだ。
別の無線機でやり取りしていた副官が首を振る。ペトロフ中将は拳を握りしめた。撤退という言葉は、敗北を意味する。だが、現実は容赦なかった。神聖ゲルマン連邦帝国陸軍の第7SS機甲師団は、既に師団本部から30キロ以内に迫っていた。アイアンレギオンの砲塔が雪原を切り裂き、50キロの速度で迫ってくる。ロシア連邦陸軍の対戦車砲は、アイアンレギオンの装甲を前に無力だった。
そして神聖ゲルマン連邦帝国陸軍の砲撃が再び始まった。雪原は地獄と化した。凍土が爆ぜ、兵士の体が吹き飛ぶ。T-34の残骸が炎上し、黒煙が空を覆う。生存者は雪に伏せ、凍えながら銃を構えるが、神聖ゲルマン連邦帝国陸軍の歩兵は容赦なかった。武装親衛隊の兵士たちは、雪上をスキーで移動しながら、MG42機関銃を乱射した。弾丸が雪を抉り、ロシア兵の体を貫く。
フォンシュタイナー大佐は、指揮車輌から無線で命令を下す。神聖ゲルマン連邦帝国陸軍の進撃は止まらなかった。アイアンレギオンの履帯が雪を踏みしめ、凍土を砕きながら前進する。ロシア連邦陸軍の陣地は次々と陥落し、生存者は雪原を逃げ惑うしかなかった。雪は血で赤く染まり、黒煙が空を覆い、爆音が響き渡る。
この日、ロシア連邦第12自動車化狙撃師団は、実質的に壊滅した。神聖ゲルマン連邦帝国陸軍は、侵攻開始からわずか2日で、防衛線を深く突破した。ロシア連邦軍の残存部隊は、後退を余儀なくされ、援軍の到着を祈るしかなかった。だが、大日本帝国からの支援は、まだ届いていなかった。




