総統の対応2
『総統は大日本帝国藤咲瑞希内閣総理大臣の演説に、怒りを爆発させていた。何せ敢えてアメリカ合衆国東海岸での大日本帝国海軍連合艦隊第7艦隊への核攻撃は一切触れずに、長距離弾道ミサイル[富士]、潜水艦発射弾道ミサイル[海龍]、戦略爆撃機[富嶽改]という大日本帝国の全ての核戦力が、核攻撃臨戦態勢に移行していると発表したのだ。これを総統はある種の恫喝だと判断したのだ。ここまで大々的に世界に発表したとなれば、神聖ゲルマン連邦帝国は今後は核兵器の使用を控えねばならなかった。
何せ核弾頭保有数は推定ながら、大日本帝国の方が遥かに多いと国防省は判断していたのだ。それにも関わらず大日本帝国海軍連合艦隊第7艦隊への核攻撃は、大日本帝国を混乱させその間に各戦線での侵攻を優位にさせる為だった。
しかしその目論見は早くも打ち砕かれたのだ。大日本帝国は一切混乱する事無く、素早く決断し核兵器を使用不可能な状態にさせたのだ。その事について総統は招集した国防軍最高司令部総長、SS各部門トップに怒りを爆発させていた。
だがそれは前総統の時から続く理不尽な怒りだった。何せ大日本帝国海軍連合艦隊第7艦隊への核攻撃を命令し、大日本帝国を混乱させ云々は総統が語ったものだった。だがそれが神聖ゲルマン連邦帝国の構造でもあり、総統大本営に集まった面々は耐えるしか無かった。何せ大日本帝国の全ての核戦力が、核攻撃臨戦態勢にあるという事は神聖ゲルマン連邦帝国が核攻撃を行えば、即座に長距離弾道ミサイル富士と潜水艦発射弾道ミサイル海龍が発射され、戦略爆撃機富嶽改が空を埋め尽くして飛来して来るのだ。そうなれば世界の終わりである。戦略の見直しは必要であった。
一通り怒りを発散させた総統は、落ち着きを取り戻そうと席に着いた。宣伝大臣が如何致しましょう、と尋ねた。総統は暫く考えたが決断し、宣伝大臣に対し、大日本帝国が東海岸での核攻撃を触れなかった為に同じく触れずに、今後は我が帝国は核兵器を使用しないと発表するように命令した。
そして国防軍最高司令部総長には、核攻撃臨戦態勢は維持しつつも厳格なる管理を命令したのである。その後宣伝大臣の公式記者会見が行われた、これにより世界は核戦争の事態を回避したのだった。』
カーリアノエル著
『第三次世界大戦戦争録』より抜粋




