優先順位
深夜。国防省は大日本帝国軍統合運用司令本部での検討会議、内務省警保局での検討会議を経て帝都東京首相官邸地下3階戦闘指揮室では藤咲瑞希内閣総理大臣が、閣僚と陸海空軍首脳陣を集めての会議を開催した。第三次世界大戦の勃発による世界同時侵攻、第7艦隊への核攻撃、アメリカ合衆国大統領の殺害等々、問題山積みだった。そして昨日の開戦して直後の会議では、藤咲総理は大日本帝国軍統合運用司令本部で作戦を練るように命令し、内務省警保局には国内治安維持の対策を練るように命令した。それを受けてのこの深夜の会議であった。
そしてまずは大日本帝国軍統合運用司令本部総長である篠原一馬元帥が、藤咲総理の指名により立ち上がり説明を始めた。篠原総長は大日本帝国軍統合運用司令本部での検討会議では第三次世界大戦勃発による、優先順位が決定されたと語った。藤咲総理達は最優先事項として取り組むべき場所は何処なのか、篠原総長の言葉を待った。
篠原総長は神聖ゲルマン連邦帝国は中東属州の国境線を接するイランに対して侵攻し、北アフリカ属州の国境線を接する中部アフリカ一帯に対して侵攻し、アメリカ合衆国へはニューヨーク上陸作戦を実行し侵攻し、ロシア属州の国境線を接するロシア連邦に対して侵攻し、南米属州は国境線を接するブラジル・ペルー・エクアドルに対して侵攻をそれぞれ開始したと語り、世界5カ所で同時進行での侵攻を開始していた。
そして篠原総長は最優先事項として阻止するのはロシア戦線だと語り、その次が中東戦線だと断言したのだ。国防大臣を歴任し『国防族』の藤咲総理、坂内梨華国防大臣は篠原総長の言葉に頷いていた。だが根っからの『大蔵族』である石森智香子大蔵大臣は、その理由が分からず質問した。その為に代表し坂内国防大臣が説明を始めた。
最優先事項として阻止するのがロシア戦線であり、その次が中東戦線なのはなんと言っても、その地理的要因だった。大亜細亜連合加盟国が連なっているとはいえ、世界最大の陸軍である神聖ゲルマン連邦帝国陸軍の侵攻を阻止しないと、直接的脅威があるのだ。
北アフリカもアメリカ合衆国・南米も例え陥落したとしても、渡洋作戦を行わなければならない為にそれは海軍連合艦隊が阻止出来る。だからこそロシア戦線と中東戦線を優先する。そう坂内国防大臣は説明した。
だが高木晋作外務大臣は、もし再び神聖ゲルマン連邦帝国が核攻撃で連合艦隊を消滅させたら、その戦略も通用しないのでは、と疑問を口にした。それには坂内国防大臣や篠原総長達は言葉に詰まった。
しかし藤咲総理は断固とした口調で、長距離弾道ミサイル(所謂大陸間弾道ミサイル、戦略兵器制限交渉が存在しない世界の為に弾道ミサイルの分類が定められていないが、ある程度の射程で大日本帝国と神聖ゲルマン連邦帝国は分類していた。)も潜水艦発射弾道ミサイル・戦略爆撃機全てが核攻撃臨戦態勢にあり、再度神聖ゲルマン連邦帝国が核攻撃をすれば全面的な報復を行うとし、それは明日の記者会見で発表すると語った。




