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真相  作者: 紅煉
7/9

七話 苦しみの子 双葉

渡辺刑事はすぐに精神鑑定の準備を整えてくれた

一度目にしただけで会話はしていないあの子

机を挟んで対峙するあの子の顔は今日も感情がなかった

「はじめまして、私は精神科医の倉田といいます」

双葉

「はじめまして、私は酒井双葉です」


「さて、本題にいこうかな。今回君が起こしたとされる事件、これは君が本当にした事なのかな?」


双葉

「はい、私がやりました」


「本当にそうかな?

もしかしたら君の姿をした〈誰か〉が事件を起こしたのではないかな?」


その言葉を聞いた時彼女は一つの感情を見せた

それは

「驚き」


「君はつい最近まで家から出してもらっていなかったね?」


双葉

「それが何か関係あるんですか!」


また彼女は感情を見せた

それは

「怒り」


「ごめん、怒らせてしまったね。

これはあくまで私の推測として話を聞いてほしい

君は整形するまで十六年間外に出してもらえなかった、君は両親を愛しながらも憎んでいた、殺したいほど…

そんなある日自分が尋ねてきた」


双葉

「違う」


「その自分は全てを滅した、自分が憎んでいた両親をも」


双葉

「違う!あの人は私、私の心、私が全てを滅したの」


「つまり、君がした事ではないんだね?」


双葉

「あの日、何故か両親は嬉しそうだった

母親は鼻歌まじりで私に化粧をしたの、訳を聞いたら私を助けてくれたお医者さんがくるらしかった」


「それが藤田先生だったわけですね?」


双葉

「さぁ?名前は分からないけど」


「それでその後はどうしたんですか?」


双葉

「その日は客人が多かった、産婦人科の先生に看護婦さん。

そして私を助けてくれたお医者さんが来た、玄関まで出迎えたの

そこに私が居た、お医者さんと並ぶ私が

両親の歓迎ムードも場のお祝いムードもがらりと変わってしまったの、両親は私に部屋に戻るように諭した」


「貴方は部屋に戻った、そしてその後に事件があったんですね?」


双葉

「私は部屋で思い出していた。

あの部屋の窓からいつも見ていた公園、他の子は元気に遊んでいるのに私は遊べない

助けてくれたお医者?

私は十六年間、幸せだと思った事は無かった、初めて外に出た時私は少しだけ嬉しかったけど…

そんな事思っていたらリビングから悲鳴が聞こえたの、一つ、二つ悲鳴が上がり、静かになった。」


「そして君はリビングへ?」


双葉

「そう、リビングには鬼の形相をした私が立っていた、私に気付くと泣き始めたの。

私に謝っていた、必死に何度も。後は分からない、気付いたらここに居たの」


「何か話をしませんでしたか?」


双葉

「私は貴方、貴方は私

私は家に帰るって」


「そうですか…

話してくれてありがとう。」


今日の精神鑑定、それはとても精神鑑定と呼べるものでは無かった

彼女の清々しさはしがらみから解放されたものだったのだろう

縛るものがなくなった事の清々しさ

しかし、私にはもう一人会わなければいけない人が居る

一葉と名付けられた創造の子に

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