六話 創造の子 一葉
荒木先生の通夜に出席した私
私は居たたまれないくらい辛かった。
荒木先生が自ら命を絶ったのは私が会いに行った為だと責任を感じていたからだ。
そんな私の気持ちを察したのか、渡辺刑事が声を掛けてきた
渡辺
「先生、気に病むことはありませんよ」
私
「私が会いに行かなければ…」
渡辺
「荒木先生の顔、見ましたか?」
私
「いや、合わせる顔が無くて」
そう言った私の手を渡辺刑事が強引に引き荒木先生が横たわる前まで連れてきた
横たわる荒木先生の顔は心なしか微笑んでいたように見えた
渡辺
「見てくださいよ、この笑顔。
長い事刑事をやっていますがね、自殺でこんな顔してるなんて初めて見ましたよ。
苦しんだんではなく安堵なんでしょう?最後のありがとうは本当の感謝なんでしょうね」
その時、私の中の何かに火が点いたようでした。
当たりどころの無い怒りが吹き出した
私
「渡辺さん、この事件の真相はかならず説き明かします!」
渡辺
「あの日記を?」
私
「えぇ、出生の秘密はわかりました。産婦人科にいく必要もないでしょう。明日じっくりと」
渡辺
「そうですね…」
翌日、私達は例の日記を見る事にした。
生育日記と題打たれた表紙、以下日記の重要部をそのまま書き写す事にする
一年目7/21
始まりの日、この子は何才まで生きるのだろう?楽しみである
四年目12/25
この子と共に過ごす四回目のクリスマス
少しづつだが言葉を話し始めた。ずっとこの子では可哀想なのでクリスマスプレゼントとして名前をあげた
あの子が双葉だから…
この子は
「一葉ヒトハ」
としよう
六年目 4/21
一葉ますます活発で六歳で九九を覚えた。
しかしいくら学問を覚えても誉めても笑ってくれない
七年目 12/1
クリスマスプレゼントは何が良いか聞いてみる
ランドセルが欲しいと言った、明日買いに行こう
七年目 12/25
一葉七回目のクリスマス
起きた時隣に置かれたランドセルを見て一言
「お父さんありがとう、でも一葉は体が無いから背負ってあげられないね。ごめんね」
また笑顔を見ることができなかった
十年目 5/1
今日は私の事を書こう
十年前から勉強してきた脳並びに神経の手術を行う事が出来るようになった
一葉、もう少しだからね
十五年目 1/21
一葉はますます可憐に成長している
誕生日に私が付けてあげたピアスが嬉しいらしい
しかし未だ笑顔みれず
十六年目 1/26
やっとこの日がきた!
一葉に体を移植する
娘の為に体となってくれたのは清水 美希ちゃん
私が担当していた子だった
目を付けていた通り、一葉との相性は良いようだ
未だ麻酔が効いているが、明日目覚めたら何と言うだろう?
十六年目 1/27 一葉目覚める、体を動かす
念願ようやく叶う、一葉は今まで私が願ってきたように笑顔で
「ありがとう」
と言ってくれた
父として、こんなに嬉しい事は無い
しかし、一つ気になる事を言いだした
「これなら本当のお母さんやお父さんに会えるかな?」
全ての事を話していた自分自身を呪った
十六年目 3/20
明日酒井家に伺う事を約束する
今日の一葉は本当に嬉しそうだ、笑顔はいつにも増して眩しかった…
私
「日記はここまでですね。この翌日が事件の日ですね」
渡辺
「こんな事が…信じられない」
私
「これが事実ならこの一葉という女の子が事件に関わっている可能性も出てきますね」
谷
「あ!ありました!」
渡辺
「なんだ?」
谷
「先生も先輩も話の衝撃で流れてしまっていますが、清水美希という女の子は実際に今年の一月に行方不明になっています。」
私
「頭だけを変える手術なんて…ありえない。しかしこれが事実な…」
渡辺
「先生!どうしたんですか!」
私は立ち上がり考えていました
私
「渡辺さん、すぐに精神鑑定をしましょう」
少しだけ真相が解けそうだったのです。
酒井双葉が言った、私がやりましたという言葉が……