二話 混乱
初取り調べの翌日
私は警察から連絡があり、彼女が居る警察署へ向かった
署内の受け付けにて一通り身分を話し待っていると
階段から一人の刑事が降りてきた
谷
「倉田先生ですか?」
私
「はい、そうです。」
谷
「そうですか、私は刑事捜査一課の谷と申します。この度はよろしくお願いします」
私
「いえ、こちらこそよろしくお願いします。」
自己紹介が済んだ後、谷刑事は私を刑事一課の捜査会議室へ案内してくれた
向かう最中に彼は色々話してくれた。
捜査が難航し不可解な所があるらしく、捜査に参加する刑事達の意見も割れに割れているのだという。
会議室へ入ると谷刑事は私を紹介した
谷
「こちらが精神科医の倉田先生です。」
刑事達はこちらを一目すると何もなかったように会議を続けた。
私は会議の内容を聞いておく事にした。
「だから、本人が認めたんだろう?なら被疑者が被害者を殺害したという事で、この事件は終わりだ!」
「しかし、たかだか16歳の女子高生が11人も、しかも大人を殺害する事は可能なのか?」
「今の世の中、何があるか分からん。例えば睡眠薬を飲ませ殺害すれば可能だ」
「遺体から薬物等の接種の痕跡はありません」
「一番の謎は面子だろ!
11人の内2人は両親だ、しかし、問題は後の9人だ。医者、整形医師、看護婦が二人、産婦人科医、無職の男が二人、後は身元不明の二人…
何の繋がりもない。」
「唯一まとまってるのは、医者と看護婦だけですね」
私
「それならその病院に容疑者について聞いてみたらいかがですか?産婦人科にも整形クリニックにも」
押し問答に嫌気が差した私は会議室からも洩れる程の大きな声で叫んだ
一瞬刑事達は私を見て固まっていたが、そんな事は言われなくても分かっているという風に半数以上が部屋から出ていった
渡辺
「いやぁ、すみませんでしたね。先生」
私
「いえ、捜査が難航しているようですので。仕方ありませんよ」
渡辺
「いやぁ、そう言ってくれると助かりますよ
事件の大体の事は、今の会議で分かっていただけましたか?」
私
「はい、ざっと流れは分かりました。論点は被疑者が被害者全員を殺害した方法という訳ですか?被疑者は何と言っていますか?」
渡辺
「さすが先生ですね、そうなんですよ。
実はこれは私の勝手な想像なんですが、今捕まっている被疑者が犯人では無いと考えているんです。
当の本人は殺害事実は認めたものの、経緯やその他については分からないの一点張りで」
私
「そこで私の出番という訳ですか?精神鑑定をしろと」
渡辺
「先生はカウンセリングもやっているんでしたね?出来ればカウンセリングも兼ねて殺害方法も聞き出せないかと……ね」
私
「なるほど。今回ばかりは大役を任されそうですね」
渡辺
「ご理解頂けたようで良かった。谷、すぐ取り調べの準備だ」
それよりしばらく会議室にて休んでいた自分を谷刑事が呼びにきた
慣れている犯罪者の精神鑑定であったが、毎回取り調べ室の前に立ち扉が開くまでの間は緊張する。
ついに取り調べ室の扉が開いた
扉の向こうには16歳の女子高生が居た、当たり前だが
しかし歳に比べて少し大人っぽく見えた、顔は綺麗だったが、その綺麗な顔には喜怒哀楽の感情は消えてしまっていた
そして私は見つけてしまったのだった
それは彼女の喉元にある確かな喉仏を
それは彼女が男である事を示すものであった