拝啓 勇者様へ
荒いですがそれでもいいという方はどうぞ。この作品は自分的テンプレートな作品です。
────此処は地球とは違う所謂異世界。
この世界は人間族、妖精族、獣人族、竜人族、神族、魔族が国を作って暮らしていたり、竜やオーク、コボルトやゴブリン等の魔物が住んでいたり、まぁ一言で表せば『よくある剣と魔法のファンタジーな世界』だ。
そしてこの世界でもテンプレの如く魔族や神族、人間族が争いはじめたのだ。
─?side─
とある昼下がり。今日は晴天ということもあり、大通りはいつも以上に活気づいており、市場では商人達の声がよく響く。
こうした光景を目の当たりにすると、この国でこれから戦争が始まり、此処もいつかは戦場になるなんて気配は微塵も感じられない。
俺としてはこんな日は仕事を抜け出して木陰で昼寝でもしたいのだが、残念ながら今は見張りがいる。
「はあ、かったりぃ…」
「いきなりですね、魔王様。とうとう頭が湧きましたか?」
と、隣で毒づく側近兼護衛のアスタロト。
ホントは護衛も側近も要らないのだが、俺が仕事をサボり過ぎた為に監視としてコイツが派遣されてきたのだ。因みにコイツは俺のことが嫌いらしく、この程度の毒舌ならいつものことだ。
あぁ、自己紹介がまだだったな。俺の名前はバール。バァル・ゼブルっていうんだ。一応この『魔国レーヴァディン』で魔王を勤めるものだ。
最近は『皇国ミッドガルド』と『神国ヴァルハラ』から宣戦布告を受けて絶賛フル稼働中だ。
「…………本当にどうしたのですか、魔王様。さっきからぼうっとして、ほら、手が止まってますよ?」
とアスタロト(鬼教官)が呆れながらたずねてきた。
「うっせぇよ。…………ただ、これから戦争が始まるたよなって考えてただけだ。つうか何で戦争しなきゃねぇんだ?別に『皇国』とも『神国』とも商業とかは寧ろ友好関係に有るはずだろ?
だいたい『皇国』や『神国』といがみ合ってたのなんて百年も前じゃねえか。
…………つうか俺の行動の一つ一つに呆れられると流石に傷付くんだけと」
と俺は本音を包み隠さずコイツに言ってみる。
「まあ、実際はそうなんですけど『皇国』が勇者を召喚したらしいのですよ。
それで勢いのついた『皇国』に先日我が国の過激派が独断専行し、あえなく返り討ちに。その後、これは『魔国』の侵攻だと『皇国』は主張し『神国』まで便乗してきて今に至ったというわけです。以前にも話したのに聞いてなかったのですか?あぁ、聞いていてもその鳥頭では覚えられないですか。これは失礼」
…………本当に失礼だと思う。だけどこれは半分自業自得だから反論も出来ない。
涙を堪えたので若干視界が滲むが気を取り直して仕事に戻る。
アスタロトが愉悦に浸った笑みを見せているがこの際無視だ。
しっかし、勇者かぁ。
勇者が来たらこの街は荒れるだろう。
そう思うと溜息が出る。
「どうしたのですか?今日はいつになく溜息が多いですね。…………全く、蚤のような脳みそしてるクセに何を考え事をしてるんだか(ボソッ」
アスタロトがなんか言ってる。
「ぐすん」
不覚にも涙が出てきた。
「あぁ、流石にいじめすぎましたか。謝りますから機嫌を直して下さい、魔王様」
なんか言ってるけど気にしない。いくらなんでもこんなの毎日くらっていたら心が折れる。だから
「ぐすん…………確かにさぁ、お前から見たら蚤のような脳みそかもしれねえけどよぉ、俺だって無い知恵絞って一生懸命国を治めようと努力してんだぜ?それなのにお前はいつもいつも俺のやることなすこと否定しやがって…………俺は本当にいい部下に恵まれたなぁ。そんなに俺が嫌ならすぐにでも違う部署にかえてやるよ!」
って本音混じりに皮肉っても文句は言われないはず。
するとアスタロトは
「あぁ、スイマセン!流石に言い過ぎました!以後気をつけますので異動だけは勘弁して下さい!」
…………珍しく頭を下げてきた。それも必死の形相で。
あまりの事態に思わず呆けてしまったが、まあ今回は許してやろう。
「それでだ、アスタロト、『皇国』と『神国』の現状は?」
「はっ、現在は『皇国』『神国』ともに戦争の準備中でごさいます、魔王様」
うわぁ、やりずれぇ。
「ふーん、そうか。それで勇者の方はどうなんだ?」
「はっ、勇者は召喚されたばかりで力の扱いに慣れておらず現状では我々の敵では無いかと」
力の扱いに慣れて無いねえ。
「へえ、そうか。なら話が早い」
「どうするおつもりですか?」
「何、簡単な話さ、俺が『皇国』に『皇帝』を倒すために攻め込む」
「成る程、軍を率いて『皇国』からせm「ハッ?何言ってんだ?お前」…………へ?」
「だから、俺『一人』で『皇国』に攻め込むんだよ」
「イヤイヤイヤ、それはないですよ魔王様!
敵陣に単身で突っ込むなんて自殺行為ですよ!」
「何言ってんだ?勇者だって少数精鋭で攻めて来るんだぜ?
勇者に出来て魔王である俺に出来ない訳が無いだろ」
「イヤイヤイヤ、出来ない訳が無いだろじゃなくって魔王様は魔王様なんですからココは玉座に座りながら『フハハハハハ、よく来たな愚かなる勇者どもよ!』ってかんじで、どーんと大きく構えていてくださいよ!?魔王様とは常に相手を見下し余裕を持って相手を蹂躙するのがもはやしきたりなんですから!」
「そんな風に慢心なんかするから勝てる戦も勝てないんだろうが!それがしきたりだって言うなら、そんなもん犬にでも食わせておけ!」
「そんな無茶苦茶な!?」
「それじゃ、明日の早朝に出発するから今から準備しとけよ」
「俺一人でいくんじゃなかったんですか!?」
「うるせぇな、男が細けぇこと気にしてんじゃねえよ。つうかお前は俺の側近兼護衛だろ?
さらにいえば、お前はこんなか弱い女性に一人旅をしろと?」
「あぁ、何処から突っ込んでいいのか解らない!?とりあえずか弱い女性は魔王になれませんよ!」
「あぁそうかい、それじゃ明日朝日が昇る頃に出発な。遅れるなよ」
といって窓から飛び降りる。
後ろから「朝って早!仕事放置してるし!ていうかどこ行くんですか魔王様ぁ〜〜〜〜!!」なんて声が聞こえるが関係ない。
さて、拝啓、未だ見ぬ勇者様、草木の新緑が鮮やかに揺れる今日この頃、貴殿ますますの御活躍のこと、心よりお喜び申し上げます。さて、これから魔王(俺)が貴方達に会いに行きます。逃げずにそこ(皇国)で待っててくださいね。お土産も持っていくつもりですのでよければ何がよいか返答して下さい。敬具
────魔王より
というわけでちょっと変わったものがたりでした。よければ感想お待ちしてます。