プロローグ
「ミレイユ、もう二度と、君を失うまい」
ミレイユの手を包み込むように取って、レオナルド・ヴァレンティン侯爵はそう言った。
王国の魔導部隊を率いる侯爵様と、爵位も家も失った元伯爵令嬢のミレイユ。
本来なら、二人は言葉を交わすことすらなかっただろう。それが今、婚約者として向かい合っている。逃げ場のないほど近い距離で。
ヴァレンティン侯爵邸の夜は、ひどく静かだった。高い天井から落ちる月光が、白いカーテンを淡く照らしている。
レオナルドは身を屈め、ミレイユの指に嵌められた指輪へ唇を落とした。その祈るような所作に、ミレイユは見入ってしまう。
光を受けた髪が滑らかに揺れ、端正な顔立ちが影の中に浮かび上がった。その横顔は、儚く見える。
(ああ、本当にあの子なんだ)
ミレイユは、レオナルドに幼い面影を見た。
淡い色の髪、落ち着いた佇まい。懐かしさと今の彼への想いが、胸の奥で重なる。
レオナルドが顔を上げる。美しいアイスグレーの瞳が、ミレイユを真っ直ぐに捉えた。
「才能ある君がどんな未来を選んでもいい。ただし、その隣は、必ず私だ」
ミレイユの胸が跳ねる。甘い言葉なのに、そこには逃げ場を与えない響きがある。
「それは、とても素敵なことですね!」
一度だけ瞬きをしてから、ミレイユは微笑む。
運命を変えたこの出会いに、心から感謝したいと思った。
――これは、すべてを失ったわたしが、父の名誉と自分の未来を取り戻すまでのお話。
新連載、見つけていただきありがとうございます。
しばらくどどっと投稿します。
感想やブクマ、★★★★★など大変力になりますので気が向いた時にぜひぽちっとお願いいたします〜!




