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虚無な人生を終えたので、二度目はケモ耳メイドとして魔物を愛でながら飼育係の青年にお世話されます。  作者: 宙色紅葉(そらいろもみじ) 週1投稿


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理想の少し反対

「あの、ミモザ様、本当にどうしちゃったの? こんなところに忍び込もうだなんて正気じゃないですよ」


 普段はミモザに呆れられ、引かれてばかりの犬井だが、今日ばかりは立場が逆転している。


 なにせ、ミモザが天井裏の次に忍び込んだのはウェディングドレスが保管されている衣装部屋で、その次に入り込んだのは、なんと厳重に守られている式の会場だった。


 屋敷のすぐ隣に建てられた大きな教会。


 それこそがミモザたちの結婚式の会場で、外には複数の警備が張りついている。


 反面、会場の中は警備が非常に手薄で特に人もおらず、花で飾り立てられただけの厳かで美しい空間が広がっていた。


 ミモザは他の場所同様、興奮し、はしゃいで教会内を楽しそうに歩き回っている。


 ミモザも一応、息は殺していて静かだが、いつ外の警備にばれるとも分からない犬井は常に肝を冷やしている。


 呑気なミモザにはため息が出た。


「ミモザ様は屋敷の主なんだから厨房も衣装部屋も堂々と入れば良いし、会場に関しても下見をしたいって一言いうだけで済むのに」


 ポツリと愚痴をこぼすように言葉を口にすれば、ミモザはブンブンと首を横に振った。


「駄目よ! そんなの、皆に迷惑かけちゃうわ。ただでさえ皆忙しくて、結婚式を成功させようってピリピリしてるんだから」


「周囲の空気感とか、分かってたんですね。でも、侵入する方が迷惑ですよ。バレたら警備だって今より厳重にしなきゃいけなくなるだろうから。少ない人手を無理にでもさかなきゃいけなくなる」


 淡々とミモザを叱れば彼女はプイッと顔を背けた。


「そんなお説教、聞きたくないわ」


「お説教って……ミモザ様、なんか子どもみたい」


 告げれば、ミモザはしゅんと落ち込む。


「だって、当日は絶対にゆっくり式を楽しむなんてことできないもの。陛下がいらっしゃるから、今回の式はベリア家が獣人と共に歩む未来を指し示すパフォーマンスでもあるから、絶対に失敗できないの。私、当日はずっと緊張して何も目に入らないわ。美しい衣装も、美味しいご飯も、素敵に飾られた教会も、愛しい人の顔さえも」


 小さく言葉を出すミモザはしょんぼりとしていて酷く不安そうだ。


「結婚式、嫌ですか?」


 問いかけると、ミモザは首を横に振る。


「そんなわけないじゃない。すごく楽しみよ。今回の式は屋敷が前に進むための大きな一歩になる。花婿衣装に包まれたベルテだって、きっと、すごくすごく素敵だわ。彼と結婚できるのが嬉しい。私、式が楽しみでしかたがないの。だからこそはしゃいで、本当はもっと楽しみたくて、我が儘を言ったの。でも、悪かったわ。頭も冷えた。もう、執務室に戻るから最後に教会を抜け出す手助けだけしてくれる?」


 少し前までとは打ってかわってミモザは殊勝な様子だ。


 萎れた花のような態度のミモザに犬井も少し調子が狂う。


『ミモザ様にはきっと、理想の結婚式があるんだろうな』


 犬井は結婚式には興味がない。


 彼女が興味あるのはトレーと一緒にいられるかどうかだけ。


 それをより確実にする結婚そのものには興味があっても式には一切の興味がなく、面倒なものとまで思っていた。


 だからこそ、政治的な意味合いを抜きにした式への情熱はあまり理解できない。


 だが、それでもミモザが結婚式に夢を見ていることは知っていて、それを微笑ましくも思っていた。


 大切な友人にとっての大事なイベントは成功してほしい、素晴らしいものであってほしいと願っていたから、犬井は理想と外れた結婚式を心から楽しもうとするミモザに同情的になって、ポンと頭を撫でた。


 訳も分からず頭を撫でられた彼女は少し不思議そうな顔をして、それから、


「急にどうしたの? 変なマオ」


 と、花が咲くように笑っていた。

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