表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/8

意外と

 文化祭当日。

 僕等の担当するクラス旗は途中、アクシデントがありながらも進捗には問題なく今日を迎える。

 体育館で開会式の後、僕等は自由時間を得る。

 だが、正直なところあまり気乗りはしない。

 僕は文化祭が嫌いだ。

 あまりにも暇すぎる。

 例年は意味もなく徘徊するだけのつまらない行事だったわけだが、今年は違うのかもしれない。

 それは、君がいるから。

 そう、両手を大きく振って少し早歩きの子供みたいな君がいるから・・・。

 自分が付いていけるかと不安になりながらも、色んなことに熱量を持つ君が少しうらやましいよ。

 それは僕が無くしてしまったものだから。

「ね、どこからいこっか」

 君の声に向かって顔を上げる。

「どこでもいいよ」

 僕の返答を聞いて、君は唇を噛んで考える。 

「んー悩みますねぇ」

 そんなことを冗談めかしく言っては、各クラスの展示を廊下から見て回る。

 周りを見渡して歩いていると、君は急に振り返って僕に言う。

「メイド喫茶いきたい!」

 その強い語気からは特段の意思を感じた。

 廊下の奥の方、メイド姿で客引きをする女子生徒がいた。

 君はこういうのが好きなのかと新たな発見に驚きつつ、僕はつられるまま君に付いていく。

 彼女らに近づくと、僕等をご主人さまと呼称し、笑顔を振りまいた。

 君はこういうので喜ぶのかと思っていたら、存外そうでもないらしく、さっきまでの情熱はどうしたのやら、実に静かなものだった。

 このメイド喫茶は大変繁盛しているらしく、順番待ちの行列ができている。

 人が多い故か、メイド喫茶だからなのか、こういった空間には独特の空気がある。

 どうもそれが僕等には少しばかりの毒なのかもしない。

 とはいえ、そんなのは今まで何百回と経験してきたことであり、今更どうこうできる話でもない。

 口数の減った君を見て、改めてそう思う。

 雑多な喧騒のなか、僕等だけの静けさはそれそれで悪くないとも思いつつ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ