杞憂
「ねぇ、あの本読んでくれた?」
例の通り、昼食を共にしていると君が言った。
あの本とは先週君におすすめされたあれのこと。
「まだ読めてない」
金曜日に貰って土日挟んでのまだ月曜日だ。
当然何百ページもある本を読み切れるわけがない。
そもそもまだ読み始めてすらいないが。
「え、そうなんだ。・・・忙しかったの?」
君は3日で読み切れると思っていたのか。
「いや、、、うん」
本当は忙しくなんてなかった。
ただ、ここで否定しても、説明を求められそうだった。
なにより、君は感情が表に現れすぎる節がある。
あまり悲しい顔は見たくない。
君は唇を噛んですこし不服そうな顔をしている。
「そうだ、文化祭の担当係一緒のでいいよね」
話は急に変わる。
「いいけど、なにするの」
「クラス旗はどう?」
君は用意していたように即答する。
「僕、絵かけないんだけど」
クラス旗と聞いた瞬間、僕も脊髄反射で反応する。
「色ぬるだけでいいよ」
・・・
「そう」
後日、正式に僕と君はクラス旗係になった。
色を塗るだけといわれても、あまり気乗りはしない。
単純に自分の不得手だからでもあるが、なにより君がクラス旗のリーダーで大丈夫なのかと心配だ。
クラス旗係のメンバー総勢5名、その中で絵を描けるのが君だけらしい。
だから必然的にリーダーになってしまった。
もっと慌てふためくかと思っていたが、自信があるのかあまり気にしていない様子。
学園祭まであと1か月。君は少し焦っているように感じる。
この心配が杞憂に終わればいいが・・・