一日目
おはよう。
それが初め、僕に向けられた言葉だと理解できなかった。
だから普通に無視してしまった。
君は胸元で小さく手を振っていたのに、その手を隠してしまった。
そこでようやく僕に向けられていたことを理解して、今度は僕から改めて、おはようを言った。
そのままいつも通り席につく。
君は僕を目で追ってくる。
ホームルームまであと5分ほど。
いつも通り適当に本を読む。
いつもと変わらない。
昨日の今日で友達になって、それで何もかも変わるわけではないのだ。
きっと少しずつ変わっていく。
そう思っていたのだが。
僕と君は席が隣で、本を読みながらでも視界の端で互いの動きが分かる。
いつもなら君はこの時間、読書をしているはずだが、今日は何もしていない。
詳しく言えば何もしていない訳ではなく、ずっと僕を眺め続けている。
机に肘をついて、手で頬を支えて。
だから僕もそれを真似て、君を見つめ返した。
君は、まるで小動物を見るような目で僕を見ていた。
一瞬目が合って、すかさず目を逸らす。
君は慌てて本を取り出し、いつもの君に戻る。
いったい何だったんだろうか。
僕等は友達を知らない。だから少しずつでいい。
友達を、君を少しずつ知っていけばいい。
僕はそう思うよ。