表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

やがて君を魔女にする

最弱で落ちこぼれな私でも、“諦めなければ”負けてない!

作者: 蒼久保 龍

私たちは夢を追うと同時に夢に追われ始める。


「水魔法、水流衝撃波!」


 私は思い切り宣言をしながら、左手の人差し指を立てる。

 そして、その指を前に指し、クルクルと三回転させてから上に立てた。


 すると、私の目の前に、握り拳サイズの水の弾が発生する。

 その弾は私史上最速ーー、小さな石を全力で投げた時と同じくらいの速度で、数メートル前方にいる模擬決闘相手の魔法使いに飛んでいく。


 模擬戦相手の魔法使い、光線魔法を使うアリスちゃんは私を完全に舐めている。


 そのため、堂々と仁王立ちをしていた。


 バシャッ!


 その弾は完全に相手の腹部に命中した。

 

「痛っーー」


 よしっ! 完全に当たった!

 私は一気に距離を詰めるべく走り出す。


「ーー、なーんてね」


 目の前に立つ決闘相手、アリスちゃんは茶髪をちょこんとポニーテールにしているのが特徴的でーー、同期の中で総合成績4位の、とっても優秀な魔法使い候補生。

 そして、非常に勝ち気で、意地悪で、勝つために手段を選ばない性格だ。


「光線魔法、ライトニングショット!」


 アリスちゃんが、私に向けて魔法を放つ。


 眩い閃光。


 その光が、私の視界を真っ白にした。

 そして……。


 ガツンッ!

 

 脳天から雷が落ちるような衝撃。


 意識がーー。


「そこまで!」


 そんな声が響いた瞬間、私はふらっと地面に倒れた。

 意識が遠くなる。


「フィナ! 大丈夫!?」


 私の名前を呼んで駆け寄ってきたのは、おそらくクロエちゃんだ。

 肩ほどまでの長い黒髪を低い位置のツインテールにしているのが特徴的な、私の1番の親友で、同期で総合成績1位のとっても優秀な魔法使い候補生。

 魔法使い候補生はみんな黒色のワンピースを着ることとされているが、彼女の黒髪はそのワンピースよりも深い黒色だ。


「大丈夫……、ちょっと、まともに受けちゃってーー」

 私が立ち上がろうとすると、クロエちゃんは気の強そうな吊り目で心配そうに私を見た。

 そして、すぐに顔を上げて言う。


「ちょっと、アリス! そんなに強く当てる必要ないでしょ!? しかも試験の前日に!」

「フィナが本気でやってって言ったんじゃん」

「だからって、あんな勢いで脳天からーー」


 私のせいで、2人が口論を始めてしまった。

 早く、立たないと……。


「ちょっと、フィナ!? 大丈夫!?」


 私は立ち上がって言う。


「大丈夫。私が弱いのが、悪いから」


「ふん。ほんっと、フィナって弱いのに、なんで強いやつとばっかやりたがんの」


「アリス、私より弱いくせに調子乗ってんじゃない」


「は? クロエ。私とあんたは通算戦績互角じゃん」


「私の34回勝ち越しだから」


「なんですって……!?」


 クロエちゃんの上から目線の物言いに、アリスちゃんが先に怒るいつものパターンだ。

 

「光線魔法ーー」


 アリスちゃんは早速魔法をーー、って、は!?

 今日、いつもより怒るの早くない!?


「アリスちゃんちょっと!?」


 私が叫ぶ前に、アリスちゃんは魔法を宣言する。


「ライトニングショット!」


 瞬間的に目が眩むような光。

 

 この光が、クロエちゃんに向かって一直線に飛ぶ。


 しかし、クロエちゃんはそれを読んでいたように、目を瞑った。

 アリスちゃんの光線魔法は、目を開けていると眩い光で視界を奪われ、目を閉じても結局視界を奪われる、かなり強い魔法。


「もらった!」


 アリスちゃんはそう言って、クロエちゃんに木の棒を持って殴りかかる。

 私もあの棒で脳天から殴られたのだろう。


 その棒は、クロエちゃんの脳天に振り下ろされた。


 が。


 その棒は空を切る。

 クロエちゃんは目を瞑ったまま、横に避けつつ右手に拳を作り、アリスちゃんの懐に放り込む。


 ゴフッ。


 アリスちゃんは顔を歪ませた。


「な……」


「見え見えの攻撃。魔法を使わなくたってかわせるわ」


 ……、私、さっき見事に当たったんですけど……。

 ってクロエちゃん……、なんでアリスちゃんの気持ちを逆撫でする言い方するかな……。

 殴られたアリスちゃんはその場でゴホゴホと咳き込んだ後、クロエを睨んでいう。


「あいつ、今日こそぶっ殺す」


「はあ、めんどくさい」


 クロエちゃんの煽りスキルは一流だ。

 呆れたように背の低いアリスちゃんを見下ろして言う。


「アリスちゃん、冗談でも殺すなんて言っちゃダメ! それに、クロエちゃんもなんで戦おうとしてるのーー」

 

「光線魔法ーー」


 アリスちゃんが目の前の空を指で切りながら言う。


「幻影魔法ーー」

 

 クロエちゃんも対応するよう、同じように魔法を使う準備をする。


 あぁ、どうしよう。


 二人の魔法を使った喧嘩は、私の唯一まともな魔法じゃ到底止まらない。

 決闘訓練を待っている周囲のみんなも、呆れたように「また始まった」と言っているが、誰も止めようとしない。


「フォトンレーザー!」


 アリスちゃんは宣言しながら、クロエちゃんに向けて指を指す。

 すると、差した指を中心に、前から見て円形に光が発生し、それがクロエちゃんに向けて集中して放たれる。

 当たるとめっちゃ熱い魔法。


「イリュージョンリリック」


 対するクロエちゃんは、そう宣言すると軽やかに横にステップを踏んで、光をかわす。


「さすがは臆病者のクロエ様ね」


 アリスちゃんがそう言うや否や、クロエちゃんは迷わずパッと走り出してアリスちゃんに襲いかかる。

 幻影魔法を使うクロエちゃんは、臆病と揶揄されることを一番嫌ってーー。


 って! そんなこと考えている場合じゃない。


「ちょっと二人とも、喧嘩はやめーー、」


 こんな時、私に力があれば……

 私はいつも叫ぶことしかできない。私は唇を噛む。


 アリスちゃんは私の言葉を無視してもう一度宣言する。


「光線魔法ーー、ライトニングショット!」


 アリスちゃんはクロエちゃんの幻影に魔法を撃っているからか、あらぬ方向へ魔法をなんども撃つ。

 そんな彼女に、クロエちゃんは悠々と接敵し、後ろから首を絞めた。


「なっ!? いつもと、違う、パターン!?」


 アリスちゃんがそう言うと、クロエちゃんはブチ切れているようで、そのまま宣言する。


「投石魔法ーー」


 え、投石魔法!?

 触れたものや人を飛ばす魔法。

 アリスちゃんの身体ごと吹き飛ばすつもりだ……!


「ちょっとクロエちゃん、やめーー」


 私がそう叫んだ瞬間。


「はーい。ストップ」


 落ち着いて、優しげな声が響く。


「ラ、ラミアちゃん……」


 私は思わず呟く。

 ラミアちゃんはグレーの髪の毛を肩までのショートカットにしていて、いつも細いフチの眼鏡をかけている女の子。そして、彼女もまた、総合成績が二位のとっても優秀な魔法使い候補生。


 ラミアちゃんは横からクロエちゃんの口を塞いだ。

 そして、アリスちゃんを解放させつつ、彼女に優しくチョップして言う。


「アリス。先に魔法を使ったから謝る」


「だって! クロエが私に勝ち越してるって見栄を張るから!」


 そして、クロエちゃんの口から手を離しながら言う。


「クロエもやりすぎ。50メートルくらい飛ばそうとしたでしょ」


 ラミアちゃんはそう言うアリスちゃんの身体を引きずっていく。

 いつも、2人の喧嘩を止めるのはラミアちゃんだ。

 

 っていやいや! 私も止めないと!

 私は慌てて駆け出し、クロエちゃんに近づいて言う。


「クロエちゃん心配してくれてありがとう。私は大丈夫だから! アリスちゃんも、ごめんね」


 クロエちゃんはプイッと私から目を逸らしたが、想定の範囲内。

 私がクロエちゃんの身体を無理やり押しながら移動を始め、なんとかこの場は収まった。


 ・


 魔法使いの里外れの森の中にある空き地。

 そこは戦闘訓練などに使われる空き地で、魔法使い候補生は明日に控える「最終試験」の最終調整を行っていた。

 しかし、私は今日も3戦全敗。


「明日は最初で最後の魔法使い候補生試験の日だ。15歳まで、よく訓練を頑張った。明日の試験、合格をしてもしなくても、この経験は絶対に生きていて役に立つ。でも……、明日の試験、魔法使いを目指している者や、異世界に行きたい者は悔いのないようにな」


 最終調整の監視役をしてくれた魔法使いの先輩は、そう言った。

 こうして、有志で企画した最終調整も終わる。

 あとは、明日の最終試験を残すだけだ。


「フィナ。本当に大丈夫? 明日はもう試験なのに」


 帰り道、隣を歩くクロエちゃんが私に向けて声をかけて来る。


「大丈夫だよ! 心配してくれてありがとう」


 私がそう言うと、向こうの方から声が聞こえてくる。


 ーーフィナ、今日も全敗だったね。

 ーーそりゃ、実用的な魔法があんな小さくて遅い球を発射する魔法だけじゃ、誰にも勝てないって。

 ーー修行に出たいって言ってるけど、出られたとしても普通に生き延びるの無理でしょ。

 

「フィナ」


 クロエちゃんの声が響く。


「どうしたの?」


 私が聞き返すと、クロエちゃんは真剣な目で私を見て言う。


「やっぱり、フィナは修行に出ることを諦めた方が良い」


 クロエちゃんは一心に私を見つめて言う。


「……、いや、私は魔女になりたいからーー」


「魔女になりたいって、それがどれだけ難しいことか分かってるの?」


「うん、分かってるよ」


 魔女になるには、修行に出てからいろんな魔法使いと魔法で決闘して、何回も何回も何回も勝って、宝具と呼ばれる不思議な道具を100個も集めなければならない。

 

「フィナ。真剣な話。私はあなたに死んでほしくないから聞いて」


 クロエちゃんは、私を見つめて言う。


「フィナは修行に出る前の時点で、同期の誰に対しても勝率が低い。このまま明日の試験を受けて、仮に合格したとしても……、修行先の異世界でフィナが生き延びていけるとは思えない」


 私は笑顔を作って言う。


「大丈夫大丈夫! 私、運だけは良いし!」


「大丈夫じゃない!」


 クロエちゃんは大きな声で言ったから、周囲を歩いていた同期の皆が私たちを見る。

 

「フィナ。まともな魔法を1種類しか使えないじゃない! その魔法も全然強くないし、本当に真面目に考えてよ!」


 私の心がチクリと痛む。


「修行先の異世界には他の里の魔法使いだけじゃない! 魔女狩りと言われる私たちを狙う輩もいるの。今のフィナは、魔法使いどころか魔法を使えない凡夫にすら勝てない」


「で、でも。挑戦してみないと分からないんじゃ……」


「分かるよ! 小さなサイズの水の玉を当てたって、普通の人間にすら勝てない! 女の魔女狩りならまだしも、男の魔女狩りは体格も大きいし筋力も違う! 体術で何とかなる相手じゃないの!」


 私は何故か、視線を下に落とす。

 と、その瞬間。


「ちょーいちょいちょい」


 聞こえたのはラミアちゃんの声。


「ラミア、何!? 今、私は真剣な話をーー」


「私はフィナを応援するよ」


 ラミアちゃんは私の顔を見て、細い一重の眼をくしゃっと寄せて笑った。


 私は、そんなラミアちゃんの笑顔に、作り笑いで答える。


「クロエは過保護すぎって」


「ラミア……! これは冗談じゃない。あなたもフィナを止めて! 真剣に考えて!」


「考えてるよ」


 ラミアちゃんは即答し、私の方を見て言う。


「私とフィナは魔女を目指しているという点では変わらない。だから、私はフィナの気持ちがわかる。私がフィナの立場なら、死ぬって分かってても修行に行くよ」


「だから、私はそれが嫌なの! ラミアも嫌でしょ!? フィナが……、死ぬってなったら」


「大丈夫。同門同士守ればいいの!」


 ラミアはにっこりと私を安心させるよう笑った。

 その笑顔を、私は直視できなかった。


「修行に出たら、全員ライバルでしょ? はぁ、ラミアは甘いんだから」


 クロエちゃんは納得していないような表情でそう言うが、肩を組むラミアちゃんは私に優しい声で言う。


「私は修行に出た同門同期を誰も死なせない。だからフィナも絶対、一緒に修行に行こうね」


 ラミアちゃんは輝くような笑顔で言うので、私は頷いた。


 私は、ラミアちゃんが同世代で1番の魔法使いだと思う。

 クロエちゃんの方が決闘は強いから総合1位だけど、ラミアちゃんの方が強くて、かっこよくて……、将来、魔女になるんだろうなって思う。


 また、心のあたりがチクリと痛んだ。   


 ・


 夕刻。

 家に着くや否や、私は小袖に着替えて家の掃除を始めた。


 一緒に住んでいる私の直属のお師匠様、未来の魔女は今日も家を散らかしている。

 ここは里の中で一番大きな木造屋敷。

 無駄に部屋の数が多い屋敷の畳の上、いろんなところに道具が落ちている。


 お師匠様のことは心から尊敬しているが、こんなに広い屋敷で、毎日いろんな道具が散乱させるのは勘弁して欲しい。

 また、学舎に行く時と、お師匠様と一緒の時以外は、屋敷の敷地から出るなと厳命されていることも、本当に勘弁してほしい。


 私はそれが嫌で何度も家出を試みたが、これまで一度も成功していない。

 そして、その家出失敗のせいで、よりルールが厳しくなっていく。


 ……、はぁ。

 今日も家出に使えそうな道具を探しつつ、片付けを終えた。


 あ。

 今日はお師匠様、帰ってこないって言ってたかな。

 夕食は一人分でいいなら……、川魚を焼こうかな。雑穀米も残りがあったような。


 ・


「ふうー」


 家事と一人の夕食を済ませた私は、自室に戻り一呼吸つく。

 そして、6畳の自室に入ると、墨汁で大きな半紙に書いた文字が目に入る。


 ーーみんなを守る最強の魔女になるーー


 壁に貼り付けたその半紙は、フチが破れかかっていてボロボロだ。


 そして、その隣には写真が貼ってある。

 魔法使い候補生になる前の3人の友達。


 習得する魔法の中に攻撃性のある魔法がない限り、魔法使いの候補生にはなれない。

 みんなで将来は魔女になろうって言っていたけど……、3人の友達はみんな、魔法使い候補生になれなかった。


 アンナちゃんは手芸魔法、だっけ。

 ユミちゃんは田植魔法、コトちゃんは作文魔法。

 

 みんな、元気にしているかな……。


 私はその写真から目を逸らして、自室に置いてある背の低い机の前、座布団に座る。

 と、目の前の手帳の表紙に、また文字が書いてある。


 魔女になるためのトレーニング帳

 

 目を逸らして寝転がろうとした時に思い出す。

 日課のトレーニングをしないとーー。


 私は急いで外に出て、屋敷の裏庭に出る。 

 そして、小袖のまま下駄を履いて、裏庭で火を起こす。

 暗い夜の空気に、焚火の炎がめらめらと光る。


「水魔法、水流衝撃波」


 私はそう宣言しながら左手の人差し指を立て、目の前の空気に結界を描く。


 すると、目の前にビー玉サイズの水の弾が発生し、それが高速で目の前に飛んでいく。

 そして、その弾は焚火に命中するとーー、焚火の炎をさらに強くした。


「あの炎を消すには、もう少しサイズが必要かな……」 


 明日の試験で、私が信じられる魔法はこの魔法だけ。

 水の塊を目の前に作って、それを射出する魔法。 

 

 握り拳ほどのサイズまであれば、ある程度の距離でも速度が出るし百発百中で命中させられる。

 けど、当たった時の痛みは、同期のみんな曰く、ちょっと硬い水風船が当たった感触、とのこと。


 他のみんなの魔法みたいに、相手の目を眩ませたり、幻を見せたりといった効果もない。


 サイズを大きくすると、スピードが落ちて弧を描くように飛んでいくため、相手に簡単に避けられてしまう。


「水魔法、水流衝撃波」


 私がその魔法を唱えると、私が両手で抱えられるほどの大きさの水の塊が出現する。

 が、その塊は、まるで私が重たいものでも投げたかのように弧を描いて、ゆっくりと焚火に命中し、その火を完全に消した。


「やっぱり速度を速くするには、小さくしないとーー」


 再び、焚火を熾す。

 速度を速くするため、何度も何度も魔法を使ってトレーニングを繰り返す。


 ただ、最近は小さな弾で目を狙うのも対策されてしまった。

 でも、私はアイデアで戦うしかーー。

 

 その瞬間。

 ふと、クロエちゃんの言葉を思い出す。


 ーービー玉サイズの水の弾を当てたって、普通の人間にすら勝てない!


「水魔法ーー」


 と、言ったところで、私は止まっていた。

 そして、その場で立ち尽くす。


 ーーそりゃ、実用的な魔法があんな小さくて遅い球を発射する魔法だけじゃ、誰にも勝てないって。


 今日、言われた言葉を思い出してしまう。


 ーーお師匠様のお気に入りだから魔法使い候補生になれたって。普通じゃ候補生にすらなれないよね。

 ーー誰よりも努力しててあれって、ちょっとかわいそうだよね

 ーー努力の効果はあるよ。数年前はもっと弱かったって。いや、今も弱いけど


 いつか、聞こえてきた言葉を、思い出してしまう。


 でも、私は頭を振った。


「私は、みんなを守れる魔女に……」


 ーー私は修行に出た同門同期を誰も死なせない。だからフィナも絶対、一緒に修行に行こうね。


 今日、ラミアちゃんが言っていた言葉。


 私はみんなを守れる存在になりたい。だから、もっと頑張らないとーー。


 あれ……?


 突然、私の目頭が熱くなる。


「水、魔法、水流衝撃波」


 それを紛らわすようにトレーニングを再開する。

 けど、なぜか、私の目から落ちる涙は止まらない。


 ……、そういえば、お師匠様からも、今日は早く寝るよう指示があったかな。


 自分にそんな言い訳をしながら、部屋に戻った。


 ・


 翌朝。

 私は黒いワンピースを着て、3回荷物を確認してから家を出た。


 朝から、心臓の高鳴りが止まらない。

 今日、合格できなければ、私は一生、魔法使いとして修行に出ることができない。


 つまり、魔女になれない。

 

 ーーこの里は魔法使い候補生が少ないから、最終試験はほとんどの人が合格するんだって


 そんな噂を聞いていたが、私は落ちこぼれだから噂を鵜吞みにするわけにもいかない。

 でも、裏を返せば、今日の試験に合格することで、来週から一人前の魔法使いとして異世界に修行に出ることができる。


「行ってきます」


 誰もいない家の中へ、私は呟くように言う。

 黒色の片手カバンに筆記用具や復習用のノートを入れて、お師匠様の屋敷を出た。


 屋敷から試験会場となる魔法使い候補生の学舎までは、徒歩20分程度。

 他の魔法使いたちに羨ましがられる好立地だ。


「はぁ」


 緊張で、朝から胸の辺りがずっとドキドキ痛む。

 どうしたら、この緊張が紛れるかな。


 どんよりとした曇り空の下、そんなことを考えながら歩いていると……。


「う……、ひっぐ」

 

 ん?

 なんか、泣いている声?

 私が顔を上げると、草の上に女の子が座っていた。

 

「どうしたの!? 大丈夫!?」


 泣いていた女の子は小さい顔で私を見上げる。


「私のお師匠様、どこかに行っちゃった……」

 

 小さい子。

 見ない顔だし、最近里に来た魔法使いなのだろうか。


 私は昔の自分を思い出す。

 私の師を担当しているのはこの里の長、未来の魔女なのだが、私はよく迷子になっていた。


 この子を助けないと。

 試験開始の1時間前に家を出ているからーー、まだ時間はある。


「ほら、泣かないで。一緒に探そっ?」


 私は安心させるよう、彼女ににっこりと笑いかけた。


 ・


 その数十分後、私は全力で走っていた。

 女の子の師匠は近くにいると言っていたが、探しても探しても見つからない。

 結果、本格的に試験に遅刻しそうになったので、女の子を巡視担当の魔法使いさまに預けた。


 そして、その時点で時間を確認すると試験開始の10分前。


 私は学舎の中に駆け込んだ。

 学舎は一階建ての木造建築で、お師匠様のお屋敷と同じくらいのサイズ。

 部屋は初等前教育、初等教育、中等教育、魔法使い候補生と別れている。


「ご、ごめんなさい!」


 人をかき分けながら、みしみしと音が鳴る床を駆け抜けて、私は教室の扉を開く。


 ガラガラッ!


 ドアを開く音が響く。


「すいません!」


 教室中の視線が私に集まる中、呼吸を荒くしながらいうと、前に立つ一回り先輩の魔法使いは小さな声で言う。


「早く席に着いて。一分後に試験開始だから」


 なんとか間に合った……。

 私は汗を拭いながら席につき、慌てて筆記用具を鞄から出す。

 と、すぐに一次筆記試験の問題用紙と解答用紙が私の机に置かれる。

「よし、試験開始!」

 直後、そんな声が響く。

 全員がペンを動かし始める。


 よし、私も早く問題をーー。

 あれ? 1問目の答えが……。


 って、そうだ。


 今日、きちんと問題が解けないと、私はーー、魔女になる夢が途絶えてしまう。


 慌てていたから忘れていた緊張感が、私の鼓動を早くする。

 ペンを持つ手が震える。


 ダメだ、よく問題を読まないとーー。


 あれ、全然問題が頭に入ってこない。

 なんで?

 本当にーー。


 2時間の筆記試験。


 私は問題を必死で解いた。

 でも、解答時間が足りずーー、最後は10問ほど残してしまった。


 ・


 よほどのことがないと落ちないと言われている噂されている試験。

 試験を終えた後、私はお昼ご飯をクロエちゃんと食べる約束をしていたが……、全く喉を通らなかった。


 そして、昼休憩を終えて。


 掲示板に張り出された文字を見る。


 例年であれば、全員合格と張り出されている掲示板にーー、なぜか番号が書かれていた。


 そして、合格者のみ13時に校庭へ集まるよう指示が書かれている。


「フィナ! 番号あった?」


 真っ白い紙に、ずらりと並ぶ三桁の番号。


 クロエちゃんの声が聞こえる中、私は必死に番号を探す。


 あれ?


 1から順番に書かれた番号。

 見つけるのは簡単な、はず。

 なのに……。


「……ない」


 私は呟いていた。

 私の番号が書かれているべき場所に、無かった。

 109人の同期。

 掲示板にあるのは108個の番号。


 私の番号以外、全員の番号が書かれているのに、私の番号だけがない。


「ちょっと、フィナ!? 本当!?」


 クロエちゃんの慌てたような声が響く。

 と、そんな中。


「フィナさあ、解答用紙に名前書いてなかったじゃん」


 あまり喋ったことのない女の子の声が聞こえる。

 え、私、名前……。


 あれ?


 たしかに、自分の名前を書いた記憶がなかった。


 いつもは最初に書くのに、今日は先に問題を解き始めてーー、最後まで解けなかったからそのまま提出してーー。


「ちょっと! なんでその時に教えてあげなかったのよ!」


 怒るクロエちゃんの声が聞こえる。


「だって、声を出したらカンニングになるじゃん」


 ーー名前書き忘れたって。

 ーーそんなことある?

 ーーでも、フィナは修行に出ない方が良いって。


 周囲からヒソヒソと話す声が響く。



 なんで、私は……、いっつもこうなんだろう。



 私はーー、とりあえずここにいたくなくて、逃げ出した。


「フィナ!?」


 後ろから、クロエちゃんが叫ぶ声が聞こえる。

 けど、私は足を止めなかった。


 ・


 私はトイレの個室に閉じこもっていた。

 涙も流れない。

 名前の書き忘れ。

 採点対象者が誰かわからないから無効解答扱いになる、当たり前のこと。


 なんで、私はこんなにダメなんだろう。

 落ちこぼれで、何をやっても上手くいかなくてーー。


 ふと、頭によぎるのは、友達たちの姿。


 1番の仲良しはクロエちゃんとラミアちゃん。

 交流戦で他の魔女の弟子の魔法使いたちと戦って、勝ち続けてる二人が、心から羨ましくてーー、憧れる感情を抱くのが苦しい。


 私は同期のみんなにも勝てないのに。


 魔女になりたい。

 そのために魔法使いとして修行に出たい。


 でも、そんな夢もここで終わった。

 こんな、単純な凡ミスでーー。


 自分に呆れて、涙すら出ない。


 完全に、私のせいだ。


 筆記試験が始まってからのイメージトレーニングが、足りていなかった。

 名前を書くなんて当たり前のこと、まさか忘れるなんて。

 それも、こんなに大事な舞台で、失念するはずが、無いって……。


「なんでこんな、落ちこぼれ、なんだろ」


 ポツリと言葉が漏れる。


「フィナ! どこ!?」


 廊下の方からクロエちゃんが叫ぶ声が聞こえる。


「フィナー! 出ておいでー!」


 ラミアちゃんの声も聞こえる。

 だけど、私は今、笑顔で二人の前に出ていく自信がなかった。

 だから、ここにしばらくいることにした。



 どのくらい時間が経ったか分からない。

 そろそろ、出て行かないとーー。


 お腹も、減ったな。


 でも、どうしよう。

 このまま魔法使いになれないなら、私が生きている意味って、何になるんだろう。


 鍵をかけていた扉を開けて、トイレから出る。

 私は手を洗い、自分の顔を見る。


 ぼさぼさの髪、疲れたような目。

 こんな姿、誰にも見せられないな。


 でも、それを綺麗に整える余裕もない。

 私はそのままトボトボと歩いて、学舎の外に向けて歩く。


「フィナ、久しぶり」


 声をかけられる。

 そこに立っていたのは……。


「アンナちゃん……?」


 4年前、中等教育の頃の私の友達。

 昨日、写真を見たからすぐに分かった。


 アンナちゃんは手芸の魔法を使い、一緒に魔女を目指そうと言っていた友達だ。

 手芸魔法は攻撃性がないから、魔法使い候補生になれなかった。


「ねえ、フィナ。魔法使い候補生の試験、落ちたんだって?」


 アンナちゃんは濃いグレー髪の毛を三本の三つ編みにしていた。

 目元は垂れ目で、鼻は低くて、柔らかい表情でーー。


「……うん」


 しかし、すぐに疑問が湧く。

 ここは魔法使い候補生の学舎。魔法使い候補生以外の立ち入りは禁止されている。


「どうしてここにいるの? って思ったでしょ?」


 アンナちゃんは私の思考を読んだように言う。中等教育では一番な成績だったし、頭の回転も早い。

 私なんかより、よっぽど魔法使い候補生に相応しいと、思ってしまうような優秀な彼女。


「なんでーー、ここって候補生以外は立ち入り禁止じゃ……」


 すると、アンナちゃんは私に背を向けてから言う。


「私。やっぱり納得いかないの」


「納得……?」


 アンナちゃんは私の方を振り向きつつ、影のある表情で言った。


「フィナ。一緒にこの試験、めちゃくちゃにしない?」


「え……、アンナちゃん、一体何をーー」


「言葉の通り。私、みんなに馬鹿にされた手芸魔法で油を塗った毛糸を作って、爆弾の導線を作ったんだ」


「爆弾!?」


 私が叫ぶと、アンナちゃんは右手に細かく編まれた細い糸を持っていた。

 その糸は赤と青と白の三本の糸が三つ編み上に編み込まれ、廊下の向こうまで繋がっている。


「そ。私がマッチでこの糸に火を付ければ、この学舎はすぐにドーンと大爆発。もうすぐ三次試験が終わって、魔法使い候補生たちは結果発表を受けるため、この学舎に戻ってくる」


「ま、まさか」


「そう。そこで大爆発。この学舎にいくつか爆弾を仕掛けてある。学舎は木っ端微塵だし、魔法使い候補生たちはーー」


 アンナちゃんは私の方を向き直して、まっすぐ私の目を見て言う。


「ーー全員怪我をしてもらう。運が悪ければ、何人かは死ぬかもね」


 心拍数が上がったと感じる。

 止め、ないと。


「だ、ダメ! そんなこと絶対ーー」


「フィナ。落ち着いて。これは私たちが修行に行くための、最後の希望をかけた作戦なの」


「だからって、誰かを怪我させたり、命を奪うなんて……」


「この作戦が成功すれば、今年度の候補生は全員修行に出られなくなる見込み。魔法使い候補生は有事の際に里を守る戦闘要員でもある。人員計画に不足が生じれば、一度候補生として選ばれなかった卒業生にも再選抜の可能性が生まれる。フィナもそう。あなたも試験に落ちたことも、この事件で全て白紙に帰る」


 アンナちゃんは私をまっすぐ見て言う。


「フィナ、どんな辛いことや苦しいことをしたって、魔女になって見せるって言ってたよね」


「で、でも……」


「その程度の覚悟なの?」


 アンナちゃんは、眉間に皺を寄せて言う。


「私たち約束したよね。どんなに辛くても、苦しくても絶対魔女になろうって」


「約束は、したけど……」


「その程度の覚悟だから、試験に落ちたんじゃないの」


 アンナちゃんは口を尖らせて言う。

 昔から、正直でストレートなところは変わらない。

 しかし、今の言葉は私にとって、聞き捨てならなかった。


「私はフィナの友達。フィナも一緒に修行へ出るためにもーー」


 私はアンナちゃんに対し言う。


「私は確かに落ちこぼれだけど。だけど! 覚悟だけは! 絶対! 誰にも負けてない!」


 アンナちゃんは一瞬驚いたような表情に変わり、笑顔見せる。


「やっぱりフィナは変わらないね。良かった。じゃあ一緒にこの計画をーー」


「それは嫌!」


 私は即答する。

 と、アンナちゃんは可笑しそうに首を傾げる。


「なんで……? 私たち、目的は一緒でしょ?」


「アンナちゃんはーー、何のために魔女になりたいの」


 知っていることだけど、改めてアンナちゃんに問いかける。


「全ての魔法使いに平等に機会が与えられる世界を作るため」


「その世界を目指すために、人を殺すの?」


「運が悪ければ、ね。だって仕方ないじゃない。そうでもしないと、私の正義は実現できない」


 ケロッとした顔で、なんてことを……。

 私は頭に血が昇っていくのを感じる。


「私もアンナちゃんの目指す世界はきっと、素晴らしい世界だと思う」


「じゃあ一緒にーー」


「でも! それを実現するために誰かを殺すのは絶対ダメ!」


 私がそう言うと、アンナちゃんはため息をつく。


「だから、そう言うところの覚悟が甘いんだって……」


「違う。私は魔女になることが最終目標じゃない。アンナちゃん、私は、誰も傷つかない世界を作るために、魔女になりたいの。誰かが死ぬ可能性のある手段を取ったら、いつか絶対後悔する」


 アンナちゃんはイラッとした表情になる。


「フィナ。修行に出たら決闘をしないといけないの。少なからず、誰かを傷つけ、蹴落としながら進んでいく必要はある」


「分かってる。私は理想のために誰かを傷つけるかもしれない。けど、だけど! 傷つけることはあるかもしれないけどーー! 私は絶対、誰かを殺してまで魔女になりたいだなんて言わない!」


 私はただ、思ったことを口にしていた。

 しかし、アンナちゃんは不服そうに言う。


「そう。じゃ、私は私の計画を遂行する」


 え……?


「アンナちゃん! 本当にいいの!? アンナちゃんが思い描く世界は確かに素晴らしい世界だけどーー、同じ里の誰かの命を奪ったらきっとーー」


「後に引けないのよ!」


 アンナちゃんは怒鳴るように言う。


「四年前、私たちのグループからフィナだけが魔法使い候補生として選ばれた。私たちのグループ以外のみんなはフィナのことを馬鹿にしてたけど、私は嬉しかった。けどーー、同時に分からなかった」


 彼女は俯いて言う。


「成績だって体術だって、そのクラスでは私が全て1番だった。手芸魔法は攻撃に使えるって、指南役の魔法使いに何回も言った! それなのに、魔法使い候補生として選ばれなかった」


「アンナちゃん……」


「フィナが悪いわけじゃ無い。だから、フィナを責めるつもりもさらさら無い。けど……、フィナ、あなた三年間何をやってたの」


 アンナちゃんは深いグレーの瞳を私に突き刺すよう見つめて言う。


「え……」


 思わず、私は腰を引いてしまう。


「私は、里の工芸品を作りながら、隠れて修行を続けて手芸魔法の種類が5種類になった。結界術の研究も続けて、使えるようになった。私は働きながらでも強くなった!」


 候補生の訓練を受けていないアンナちゃんよりも、私は……。


「それなのにフィナ! あなたの噂はいつも変わらない。まともな魔法は、水のボールを出すあの魔法だけ。テストも赤点続きで補修の常連! 素手の体術はいつまで経っても全然ダメ」


 私は、三年間まともな訓練を受けていないアンナちゃんよりも、弱い、なんて。


「私はフィナにも怒ってる。私たちの代表として魔法使い候補生として選ばれたのにその体たらく」


 なりたくても、なれない人がいる。

 土俵に立ちたくても、立たない人がいる。


 私は運良く、土俵に立つことができた。


 それなのに、私は……。


 私は……。


「この試験はこれまで不合格者がゼロ。だから、フィナが始めての不合格者。そんなあなたに、理想を語る資格なんてない! 黙って私についてーー」


 アンナちゃんは私を見限るように振り返って、廊下の向こうへ歩き出そうとする。


 と、その時。

 私の心から、勝手に言葉が溢れ出る。


「初めての不合格が、なによ……」

 

 アンナちゃんは振り返る。


「頭が悪いからなに? 落ちこぼれだからなに?」


 悔しくて悔しくて、それを誤魔化すようにニヤリと笑う。


「お師匠様のお気に入りだから、誰よりも努力してるのに弱いから、修行に出ても誰にも勝てないから、凡夫よりも弱いからーー、それがなに?」


 私は言われた言葉の数々を呟く。


「フィナ……、なんであなた笑いながらーー」


 そんな、アンナちゃんの言葉を遮るように言う。


「たかがもう1回、努力するだけでしょ」


 私は袖で目元を拭いながら、吐き捨てるように言う。


「いや、魔法使い候補生は、15歳の試験でダメなら2度とーー」


「そんな噂、私には関係ない」


「なっ……」


 私は戸惑うアンナちゃんを強く見て言う。


「前例がないなら作ってみせる。私はこの里で一番の落ちこぼれだけど……、諦めの悪さはこの里で一番!」


 アンナちゃんへ向けて指を指して言う。


「アンナちゃん。私はあなたを止める。誰かを殺してでも魔女になるなんて、私は絶対に許さない」


 と、そう言った直後。

 アンナちゃんは私に突っ込んでくる。

 左フック……!

 私はそう読んで身体を横に揺らしてかわそうとするが、それはフェイント。

 彼女の右拳が、私の右の横腹に突き刺さる。


「がっ……」


 思わず、そんな声が出る。


「やっぱ弱いねー。手芸魔法、チェーンニット」


 アンナちゃんは右手の指先を立てて、空気中に結界を描く。

 すると、瞬きをした直後、彼女の左手から毛糸が伸びて、それが私の全身に絡まって、私の身体を拘束した。

 魔法使い候補生でなければ、宣言詠唱も、結界描画も、理論から習うことがないはず……。

 学外で、努力をしていたとすぐに分かった。


「私を止めるっていうならーー。計画を知られちゃったし……、フィナも一緒に爆死してもらう。ごめんね、フィナ」


 アンナちゃんはどこか寂しげな雰囲気で、迷うような表情でマッチ棒を取り出し、右手に持っていた三つ編み状の毛糸に火をつけようとする。


 その毛糸だから、火は結構な勢いで燃え進むはず。

 っていうか、この学舎は木造だ。爆発もだけど、火もすぐに燃え広がってしまうに違いない。


 下の階から、みんなの声が聞こえる。

 もう、みんな戻ってきてる。


「予定通り。10秒後。この学舎は爆発する」


 マッチの先に着いた火が、アンナちゃんが持つ導火線に近づく。


 どうしよう。

 このままじゃ、みんながーー。


 アンナちゃんの魔法で身体は動かない……、いや、指先は動かすことができる。

 魔法を使えばーー。


「フィナ……。私、あなたの分も頑張って魔法使いになるからね」


 アンナちゃんは覚悟を持った目でそう言い、毛糸にに火をつけ、私の横を通過して走り去る。


 やるしかない。

 誰も死なない結末のためには、私が止めないと……。


「水魔法ーー」


 宣言をする。

 けど、怖い。


 火は油を食って一気に進む。


 私の魔法であの日を止められるの?

 あんなに弱くて、なにもできない魔法でーー。


 いや、やるしかない。

 やるしかないじゃん!


 諦めの悪さだけは、誰にも負けちゃいけない!


 私は毎日欠かさず続けていた、焚火の炎を消す修行を思い出す。

 あの炎のサイズは……、このくらいのサイズ、スピード!


「ーー、水流衝撃波!」


 私は迷わず宣言する。

 と、私の後方に走り去ったアンナちゃんが言う。


「ふんフィナの魔法じゃ遅すぎてーー、え」


 私が作った、拳の大きさより少し大きいくらいの水の塊は、いつもと同じ速度で飛んでいきーー、想定通り完璧に、その生まれたての炎へ命中した。


 それを唖然としてみるアンナちゃん。


「フィナの魔法が、あんなに、速いわけーー」


 そっか。

 私の魔法は、アンナちゃんと一緒にいた頃に比べてーー。


「何!?」


 師範代の魔法使いがやって来た。


「この学舎に爆弾が仕掛けられているんです! これはその、導火線でーー」


 慌てて私が叫ぶと、状況を察知した師範代の魔法使いはアンナちゃんはすぐに取り押さえた。

 同時に、学舎内で警報が響き渡る。


「はは……、フィナの魔法、100倍くらい速くなってるじゃん」


 アンナちゃんは取り押さえられながら、どこかすっきりとした様子でにっこりと笑う。


 何でこの子は笑っているの。


 手芸魔法から解放された私は、アンナちゃんに近づいて頬を叩く。


 パチン!


 乾いた音が響く。

 そして、叫ぶ。


「アンナちゃん! こんなことをして、自分がこれからどうなるか分かってるの!?」


「うん。全て、覚悟のうえだから」


 覚悟って……、全然納得いかない。


「ほら、行くぞ」


 師範代役の魔法使いはアンナちゃんの首根っこを掴んで無理やり連れて行く。

 と、アンナちゃんは最後に私に言う。


「フィナは、私みたいに諦めないで、ね」


 その言葉を聞いた私は、なぜかハッとした。

 

 おそらく、アンナちゃんはーー。


 ・


「お手柄だったな。フィナ」


 その日の夜。

 私の直属のお師匠様であり、この里の長であり、かつ、この世界に5人しかいない魔女、未来の魔女の執務室前に私は呼び出されていた。


「本当にすみません。名前を書き忘れるなんて凡ミスで、お師匠さまの名前をまた、汚してしまいました」


 私が頭を下げながらそう言うと、お師匠さまは執務室の扉越しに、優しげな口調で言う。


「良いんだ。それよりも、学舎に仕掛けられた爆弾の数は5個。ハッタリではなく本当に仕掛けてあった。犯行動機は今の学舎制度への不満。気持ちはわからないでもないがーー、あれが爆発していれば、第六世代の魔法使いはみんな死んでいた」


 執務室の中から、お師匠様のお淑やかな声が響く。

 

「それに、私はフィナがこうして生きて前に立ってくれているだけで嬉しい。本当に良かった」


 片付けはできないし、家事も一切できないけど……、やっぱり私はお師匠さまが大好きだ。


「さて、要件だが。108名の門下生を救ったことへの褒美として、フィナが試験を通過したことにしようと思うが、どうだろうか」


 思ってもいない言葉。と言うわけでもなかった。

 アンナちゃんを助け、ここに呼び出された時から、私はこうなることが予測できる。

 何故なら、お師匠さまは私を露骨に贔屓しているからだ。


「いえ、それよりも、聞いて欲しいお願いがあるんです」


「ん?」


 私は、執務室の扉の外で、再び頭を下げる。


「失礼を承知で、お願いがあります。今回の件、里のみんなには口外せず、アンナちゃんを不問にして欲しいんです」


「何故だ。その女はフィナの友達が危うく死ぬところだった。それに、見逃せば再犯をする可能性だってある。今回の件、私はかなり重く受け止めているつもりだ」


「はい。私もそれは分かっています。でも……、アンナちゃんも、私の友達で」


「友達だから見逃すと言う判断は、友達ではないから罰するという判断の裏返しだ。その願いは聞けないな」


 その通り。

 お師匠様が正しい。

 それは分かっているのに、私は言葉を続けた。


「アンナちゃんはきっと、不満があって今回の行動に及んだわけじゃないんです」


「ん? 本人が言っている動機と異なるが」


「はい。その動機は嘘です。何故なら、アンナちゃんは……、ずっと努力をしていたんです」


 私は頭を下げたまま続ける。


「きっと、私みたいに心が折れかけても夢に向かって歩き続けていたんです。何があっても魔女になるんだと誓って、努力を続けていたんです。彼女は魔法使い候補生でもないのに、魔法の詠唱も結界の描き方も完璧だったから」


「それは、学舎制度に不満があったから、復讐を果たすために努力をしたものではないのか」


「いえ、きっと違います。アンナちゃんと出会った時、魔女を目指すビジョンばかりを語って、復讐のことなんて一切言っていなかったんです」


 私は丁寧に言葉を紡ぐよう言う。


「魔女になりたいって夢があって、でも、努力をし続けても、ずっと叶う見込みが無くて、これからも歩き続けられるか不安でーー」


 自分の胸が痛くなる。

 話すだけで、しんどい気持ちになる。


「ーー、不安で、不安に押しつぶされそうになって。今回の行動に出たのかな、って」


「ふむ」


 お師匠様はそう言うと、黙った。


「きっと、アンナちゃんは自分の夢に対して決着をつけたくて、今回の騒動を起こしたと思うんです。だから、私がお師匠様の立場ならーー」


「不問にし、もう一度夢を追わせるという罰を与えるのか」


「はい。アンナちゃんには、夢を追わせます」


 私はお師匠様の言葉に即答する。

 すると、お師匠様は愉快そうに笑った。


「ふふっ、フィナって、本当に面白い」


 え、何で笑われてるの?


「な、何かおかしいことを言いましたか!?」


 私が慌てて言うと、お師匠様は透き通るような声で言う。


「この里のルール上、手芸の魔法が魔法使い候補生になることはない。それを知ってでも、そう言うのだろう?」


「はい。ルールを作っているのはお師匠様ですから変えてください」


 私が即答すると、お師匠様は再び笑う。


「ふふっ。貴重な里の民の意見として聞いておこう」


 そして、確認するような声音で言う。


「本当に良いんだな。フィナ、一生修行に出られないかもしれないぞ」


 私は答える。


「はい。この試験に不合格になった人の前例がないならーー、私は次の試験で合格した前例を作ります」


「一度不合格になった人は二度と試験に受けられな……」


「前例がないなら、そんなルールもないですよね」


 すると、再びお師匠様は笑う。

 まったく。

 人が真剣に話しているのに、失礼な人だ。


「やっぱり、フィナは面白い……。ふーっ、笑った笑った。うむ。フィナに免じて、アンナという者について、望み通り取り計ってやろう」


「あ、ありがとうございます!」


 失礼だけど、優しくて暖かい。

 やっぱり、私はお師匠様が大好きだ。


「それに、フィナの修行開始についても、前例がないなら私がここで修行に出してやると、言ってあげたいところだが……」


 え!?

 まさかの展開に、私はピンと背筋を張った。


「しかし、フィナにはまだ時期尚早だ。少なくとも決闘の勝率が20%程度にはあげてくれないと、私も心配で心配で修行に出せない」


 20%って、今5%くらいってクロエちゃんが言ってたから、あと4倍勝たないといけないのか……。

 でも確かに、今、異世界に行かなくて良かったのかもしれない。

 あんな、水の弾を飛ばす魔法だけで、勝率5%で、他の魔法使いや危険な凡夫がいる世界を生きていけるはずがない。


 うん。プラスに考えよう。


 道のりは険しいけど、頑張るしかない。

 もう、諦めないって決めたんだ。チャンスがあるなら、それにしがみついて離さない。それが私だ。

 

「あ。そういえばフィナ。今日から一年間、自分の名前を書くトレーニングをするように。分かったな」


「はい!」


 そうだ。

 魔女は最終試験で名前を書き忘れるなんて恥晒しなことはしない。

 家に帰ったら、魔女になるためのトレーニング帳に書いておかないと……。


 ・


 それから数日後、私は同期のみんなの修行出発式の見送りに来ていた。

 普段は魔法使い候補生や、小さい子しかいない学舎に、里中のいろんな人がやってきていた。

 そして、校庭での出発式も終わり、みんなが一人ずつ森の中へ入っていく。


 みんな、行っちゃうんだな。


 式典の最後、私の直属のお師匠様、未来の魔女が挨拶をしていた。

 未来の里を守る立派な魔法使いになること。

 そして、この中の誰かが、魔女になって欲しい、と。


 森の中に、異世界へ通じる門があるとのことだが……、私はその場所を教えてもらえない。

 魔法使い候補生から魔法使いとなった者以外が、勝手に現世に出ることはこの世界の掟で禁止されているからだ。


「クロエぢゃーーーん」


「ちょっと、なんでフィナの方が泣いてるのよ」


「だって、だってーーー! ラミアぢゃーん」


「ふふっ、予想通り、フィナが一番泣いてる」


 クロエちゃんはクールに片手を上げた。

 ラミアちゃんも、私に手を振ってくれた。


 そして、みんなの姿が見えなくなった。


 ーーあの子、1人だけ最終試験で落ちたんだって。

 ーーえ、あの最終試験で落ちるとかあるの?

 ーーしかも、魔女様が直属の師匠の子でしょ!?


 噂は駆け巡り、私は里中の人から冷ややかな目で見られている、ように感じる。

 けど、私は決して諦めない。


「さーって! トレーニングするぞー!」


 私は人目を気にせず意気揚々と屋敷に戻った。


 ・


 と、それから2週間。


「……ずっと屋敷の中とか、聞いてない……」


 学舎に留年制度はないと追い払われ、私は行く宛を失った。

 やっぱり、現実はそんなに甘くない。

 それに、私はお師匠様から外出禁止令を出されている。

 学舎に行くとき以外は、自分が一緒じゃないときに外へ出てはならないと言うルール。

 つまり、私は毎日外へ出られなくなってしまったのだ。


「掃除するかぁ。って、今日はこんなに……。はぁ」


 私はため息をつきながら、屋敷の床に散らばった道具を片付けしていると、その時。


 1本の藁箒を見つけた。


 一見、普通の藁箒に見えるそれはーー。


「え、嘘」


 私はその箒を持って物置に駆け出した。

 そして、物置に隠してある、宝具大図鑑を取り出す。


「や、やっぱり、私がずーっと探していたやつ、これだ……!」


 この道具はお師匠様の宝具の中で最も格式が高い宝具の一つ。彗星の藁箒。

 私は図鑑の内容を読んで、これをずっと探していた。


「どこへでも、行きたい場所に飛んで行ける……」


 私はゴクリと息を呑む。

 ずっと夢見て行きたかった場所、それは、現世と呼ばれる異世界。


 ……、ちょっとだけなら、バレなければいいよね?

 凡夫に見つからないように、注意をしてれば。

 うん。そこだけ注意をすれば大丈夫。


 魔法関係者じゃない異世界の住人、凡夫と呼ばれる存在に不用意に魔法使いだとバレてはならない。

 これは修行に出ることが許された魔法使いの掟だがーー、異世界の住人に迷惑をかけないため、最重要の掟とされている。

 そして、凡夫に見つかった魔法使いは、魔法が使えなくなる呪いをかけられると、噂で聞いたことがある。


 噂だし……、それに、この靴を履いていれば見つかることはないって、クロエちゃんが言ってた。


 えーっと、この箒の使い方は……。


・通常使用 またがって飛べと言うと飛ぶことができる。

・特殊使用 行きたい場所を、方角、と頭につけて宣言する。


 私は手に持って藁箒を見つめ跨ってみる。

 と、その藁箒は本当に浮いた。


「す、すごい……、私が探し求めていた、究極の家出兵器……」


 私はもう一度、ゴクリと息を呑む。

 私が行きたい場所、それはーー、現世と呼ばれる異世界だ。


 私は自室に戻り、お師匠様から預かっていた天体儀の宝玉を引き出しの奥の方から取り出す。

 一度、候補生の時に訓練として現世と呼ばれる異世界に行った時、魔法使い候補生になるにあたって未来の魔女から渡された宝具がないと、異世界で生きていけないと聞いた。

 私がもらっていた宝具は、この宝玉。

 これと、この箒があれば……、多分、現世と呼べる異世界に行けるはず!


 候補生に配られた黒色のワンピースと、黒色の靴を履いて、準備万端。

 特に、この靴は凡夫に見られないようにするための靴。

 万が一のことがあっても、この靴が脱げない限り凡夫に見られることはない。


 私は箒に跨って、恐る恐る呟く。


「方角、えーっと……あ」


 やば。

 宣言する内容を考えずに、方角って言っちゃった。

 ちょ、え、やばくないこれ。

 現世の場所とか、地名とかーー、全く知らないんですけど!?


 あー、何も思い浮かばない。


 って……、どこか言わないと、どこに飛ばされるかわかんなくない!?

 なんか、良いアイデア……。


 あ! そうだ!


 魔法使いとして合格したら、現世に修行に出る。

 その現世では、協力者と呼ばれる人に世話をしてもらいながら修行をするルールになっていたから……。


「ーー、私の協力者に相応しい人のところ!」


 私は閃きを信じ、はっきりとそう言った。


 しかし、何も起こらない。


 って、起こらないなんて……、やっぱり私、魔法使いになれないのかな……。


 なんか、悲しい気持ちになっただけで、損した気分。

 ま、でも。

 魔法使いにもなっていない私が、自分の協力者に相応しい人を探すとか、何様だよねって話だ。


 はぁ、今日も片付け終えたらトレーニングするかぁ。


 私は1人、自室で肩を落としながら、箒から降りようとした、次の瞬間ーー。


 パッと景色が広がる。

 雲一つ無い青空、緑色の山、灰色の地面、様々な色の建築物。

 とても見晴らしの良い景色。

 綺麗……、って、ここ、空じゃ!?


「あーーーーーーーーー!」


 私は箒から降りようとしていたところだったので、跨っておらず、箒は飛んでくれない。


 パーーーン! 


 地面に叩きつけられる瞬間、何故か、私の身体が守られなような、そんな感覚がした。


「痛たたた」


 背中とお尻が少し痛むだけ。

 

 はぁ、死んだかと思った。

 

 早く帰らない……、と……。


 目を開けると、ポカンと私の方を見ている一人の男性。

 私も思わず、ポカンと口を開け、彼のことを見てしまう。


 私よりも少し年上、かな?

 っていうか、里以外で初めて男の人を見たなぁ。

 身体つきも里の男性よりも強そうで、髪型も服装も全然違う。

 その男の人は、とっても短い髪型、白紙襟付きのシャツに紺色のブレザー? らしき服。

 下は紺色のスラックスを履いている。


 それは、明らかに私の世界の男性が来ている服ではなかった。


 どこかで見た記憶……。

 そうだ! たしか、現世の世界の制服はこんなデザインのものがあったっけ?

 昔、師匠が修行していたときに買ったと言う大量のファッション誌を何冊も見せてもらった時があった。

 その時に、こんな感じのデザインを見たような……。


 ってか、スタイルが良いし、髪型も里の男性よりスタイリッシュに見えるし、なんだか頭も良さそうだし、しっかりしてそうだし……。

 

 ーー私の協力者に相応しい人のところ。


 私はさっき、自分が言った言葉を思い出す。

 まさか、この人が私の協力者に相応しいーー。


 いやちょっと待って。

 この状況、なんかおかしくない?


「生きてる?」


 その男の人は、静かに私に問いかけてくる。

 声も大人な感じだし、雰囲気もすごい大人だ。


「へ?」


 なんで、私に声をーー。

 って、いやいやいや!

 明らかに風景も教科書に載ってた異世界の風景画そっくりだしーー、ここ、絶対異世界じゃん!?

 やっぱり、あの箒は本物で、私は異世界に来たってこと!?


 ん?

 ということは、目の前の彼はーー。


「やばっ! 見られてる!? なんで!?」

 

 思考がそのまま声に出る。

 この男の人、絶対魔法が使えない一般人だよね!?

 でも、私の存在が見られるなんてーー、いやでも、あの靴を履いてるからそんなはずはーー。


 私は落ちた時に脱げて転がっている靴を見つけてしまう。


「靴、脱げてるんですけど……」 


 再び、声が漏れてしまった。


「なんで生きてるの?」


 そんな私に容赦なく色々言ってくるこの男。


「あ、え、その」


 やばい、全然頭が追いつかない。

 こう言う時、どうすれば良いんだっけ。

 えーっと、えーっと……。

 そうだ。

 魔法使いは凡夫から見れば普通の人に見えてるって話だった。

 ここは平静を取り繕って……。


「っていうか、生きてて悪い? 死んでるより良くない?」


 パニックになる頭を精一杯回転させて言う。


「え、なんで怒ってんの」


 あれ? この人、なんか私のことを小馬鹿にしたように笑ってない……?

 と、思った瞬間。

 男の人は軽く頭を下げて言う。


「いや、ごめん。悪くはない。むしろ、生きていてよかった。あの速度で落ちたら普通、死ぬから」


 私の目をまっすぐ見て、さらに真摯に謝られているのに、何故な全然謝られている感がない。不思議な人だ。

 って、そんなことを考えている場合じゃなくて!


「な、何で笑いそうになってんの? とりあえず! 普通は死なないから! あの速度で落ちても!」


 なんとかこれで押し通せれば!

 この人だってただの凡夫!

 隙を見つけて逃げ出そう!


 そう思った、その時だった。


「私の可愛い弟子よ。人間に見られたのかい?」


 突如、お師匠様の声が響いた。

 しかも、よそいきの時用に声を作ってる。

 いつもより明らかに厳かな雰囲気のお師匠様の声。


 ……、あれ?

 私、もしかして終わった?


・勝手に現世に脱走する

・凡夫に見られる


 私は2つの掟を同時に破った、のか。


 これは、まずい。


 里から追放か、破門かな……。


 数分後、破門よりももっと、さらに、酷いことになると、このときの私は知らなかった。

 そして、目の前の彼との出会いが、私の運命を変えることも……。


最後まで読んでいただき、ありがとうございました!

フィナのことやこの世界のことを気に入っていただけましたら、評価や感想をいただけると大変励みになります!


この短編は、私の長編作品『やがて君を魔女にする』の前日譚(第0話)にあたる物語です。

本編では、今回登場したフィナがもっと深く、もっと激しく戦いと成長を重ねていきます。

少しでも、フィナや世界観に興味を持っていただけたら、本編も覗いてみてください!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ