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1.第一話「全ての武器を使う者!? リボーン・イン・アナザー・ワールド」(1)


 我々の居るこの世界とは、別の世界。

 その世界のとある場所では「竜退治」が行われていた。


 大勢の戦士や国の兵士が協力して一体の巨大な竜を前に立ち向かっていた。

 ある者は剣を、ある者は銃を、ある者は魔法を使っている。

 各々が自分の信念と覚悟を胸に抱いて、目の前の怪物に立ち向かっていた。


 竜は背中に生えた翼を羽ばたかせ、地上にいる勇者(ゆうじゃ)たちを見下ろす。

 次の瞬間、口から赤く燃える高熱の火炎を勢いよく吐き出した。

 勇者たちは燃え盛る火炎から必死で逃げ、物陰に隠れる。

 そして空高く飛ぶ竜を見上げた。


 銃を使う戦士や兵士の部隊が竜を撃ち落とそうと撃ちまくる。

 最初のうちは竜に銃弾が当たっていたが、当然そんな状態で動かない竜ではなかった。

 銃弾を避けるように飛び、隙を見て再び火炎を吐き出そうとする。

 そんな竜の姿を見た戦士や兵士たちは銃撃をやめて火炎から逃れるために行動する。

 竜が火炎を吐き、石でできた地面を燃やす。



 以上のように戦士と兵士たちは竜に苦戦していた。

 戦士や兵士たちも実力派ではあるが、相手が悪い。

 特に空を飛んでいることが最大の難題である。

 地上に落ちてきたりしなければ、近接武器を使う戦士たちの出番がない。

 そんな状況である。


 撃ち落としたりなど、竜が地上に落ちてくるチャンスがなにより必要だった。

 しかし銃弾で竜を落とすには威力が足りない。

 魔法を放っても竜が避けてしまう。


 もはや、打つ手なしという状況だった。



 この状況を一変させる奇跡を願いながら武器を構える戦士たち。

 その時だった。


 凄い音と共に上空へ飛んで行く影が見えた。

 そしてその影は太陽の光を背にしながら竜の頭上目掛けて勢いよく落下してきた。

 影は竜の頭に激突する。

 それによって竜は悲鳴を上げながら地面に落下してきた。



 竜の頭上にいたのは「人」だった。

 鉄の兜を被り、口を布で隠し、黒いレンズの眼鏡をかけている若年の男性。

 その人物が竜の額に茶色い槍を突き刺していた。

 竜は痛みを感じているためか、叫び声を上げながら小刻みに暴れている。


 だが、これをチャンスだと思った戦士と兵士たちは一斉に竜に接近し、持っている武器で攻撃を開始した。

 剣や斧や棍棒を竜に叩き込み、銃と魔法も放たれる。


 竜はなんとか逃れようと暴れ回る。

 すると竜の頭上にいた「人」は衝撃で飛ばされてしまった。

 「人」は竜の額に突き刺さった槍を強く掴みながら揺れに耐えていたが、想像以上に竜が激しい動きをしたため飛ばされてしまったのだ。


 「人」は岩壁に叩きつけられ、そのまま地面に落ちる。

 痛みに苦しんでいる様子を見せたが、瞬時に竜の方を見る。

 すると次の瞬間、なにも持っていなかった右手に銃が現れた。

 そしてその銃を握ると、竜を狙って引き金を引いた。

 銃弾が竜に飛んでいき命中する。

 しかしそれは微力だった。


 だが「人」は何度も何度も銃を撃つ。

 そしてそんな彼を見て戦士や兵士たちも竜に立ち向かう。

 近接武器が竜を斬ったり叩いたりし、銃が竜の皮膚に穴を開け、魔法が竜の体を駆け巡る。

 「人」が竜を地上に落としたことで、先程の状況から一変したのだった。


 竜も負けじと火炎を吐こうとするが、戦士や兵士たちの猛攻によるダメージで攻撃をする気力がなかった。


 もはや勝負は着いたも同然だった。




 やがて竜は動かなくなった。

 それを確認した戦士や兵士たちは武器を天に向かって(かか)げながら勝利の雄叫びを上げた。


 「竜退治」が完了したのだ。



 兵士たちは動かなくなった竜を解体している。

 勝利の証として龍の首を持って帰るつもりである。


 その一方でこの戦いの功労者(こうろうしゃ)である「人」のところへ向かう兵士もいた。

 しかしその「人」に近づいた兵士が顔色を変えた。

 なぜなら彼は出血をしながら気絶をしていたからだ。

 勢いよく岩壁にぶつかったのだから、当然のことであろう。


 幸い戦士の中に少しだけだが医療に詳しい人がいたため応急処置を(ほどこ)せた。

 しかし当然ながら医者に見せるべきであるため、一部の兵士たちは「人」を運んで近場の村か街を目指して歩き出した。

 出発する前に兵士の一人が伝書鳩を飛ばした。

 その内容は救護班を呼ぶための手紙であった。






 無事に街の病院に運ばれた「人」。

 その近くには数人の兵士が立っていた。


「この度は誠に感謝致します、『全武器使い(ウェポンマスター)』殿!」


 兵士たちは「人」に向かって一斉に敬礼をした。

 「全武器使い(ウェポンマスター)」と呼ばれた「人」は体や頭に包帯を巻いており、まさに怪我人という格好をしていた。


「"コーダ"でいいよ。」


 自らを"コーダ"と名乗った「全武器使い(ウェポンマスター)」は病室の天井を眺めながら話す。

 怪我の痛みであまり動けないようだ。


 コーダは鼻頭を右手の人差し指でかく。

 するとなにかしらの違和感を感じたのか、鼻頭周辺を少々触る。


「俺の眼鏡って、その辺にある?」


 先程の戦いまで着けていた眼鏡を、今のコーダはかけていなかった。


 頭を動かせないのか、天井を眺めながら左腕を動かす。

 寝ているベッドの隣には机があるので、その上に乗っていると予想していた。

 首を動かせられないので手探り状態である。


「眼鏡でしたら、ここに。」


 兵士の一人がコーダの左手に眼鏡を乗せた。

 それを感じ取った後、コーダは眼鏡をかける。

 しかし片側だけ視界が普通だった。


「あの竜との戦いで片方のレンズは割れておりました。」


 コーダの眼鏡は片方だけレンズが抜かれていた。

 破片などで怪我をさせないために兵士たちが抜き取ったのだ。


「また修理しねえといけねえな〜・・・。」


 レンズのない眼鏡を触りながらコーダは苦笑いをする。




 兵士たちが去った後、数十分後に別の来客が現れた。


「いたいた、まーた無茶して・・・。」


 赤いベレー帽を被り、赤いマントを羽織った若い女性が病室に入ってきた。

 口ぶりからしてコーダの知り合いのようだ。


「ネル、そっちはどうだったか?」

「『竜退治』に比べれば、楽な仕事よ。」


 ネルと呼ばれた女性はコーダの寝ているベッドに座りながら言う。

 話の内容からして、コーダとは別に他の仕事をしていたようだ。


「まあ、とりあえずアンタが動けるようなるまでの間、アタシもこの街に居るからゆっくりしてなさいよ。」


 ネルはそう言うと立ち上がって病室を出て行く。

 出て行く直前、ネルはコーダに手を振っていた。



 その後、コーダは目をつぶってゆっくりと眠り始めたのだった。






 実は、このコーダという人物は元々この世界の住人ではなかった。

 彼は我々のよく知る世界から、この異世界へ転生してきた人物なのである。

 しかも、便利な能力を身につけて。



 この物語は、この青年"コーダ"の激しい戦いの物語なのである・・・。




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