コラボ企画始動
気持ちが軽くなった週末が過ぎ、月曜日からは文化祭に向けて慌ただしさを増した。
文芸部と美術部のコラボ企画の連絡はLINEで取り合うことになり、まずは美術部展で展示予定の作品のうち、既に完成しているものを文芸部員に見せてもらった。
…といってもクラス展示の準備も忙しくなっていて、部員の予定もばらばら。揃って見学するのはどうしたって無理。そこで、美術部員には昼と放課後に美術部室に誰か居てもらうことにして、予定の空いている文芸部員がそれぞれ見学させてもらうことに。
LINEに写真を上げたり、作品についてメモしたり、立ち会ってくれた美術部員が自分の絵を解説してくれたりもした。
ばらばら見学に行くのはお互いに大変なので、写真をLINEに上げてもらうだけでもよいのではないかと思っていたのだけれど、絵の写真をきれいに撮るのはとても難しかった。きれいに撮れたと思っても、実際の絵と比べるとどうしても印象が違っている。美術部員がせっかくなら見にきて欲しいと言った意味がよく分かった。
本で読んだことにインスピレーションを受けて絵を描いたという美術部員もいて、その絵の関連図書は文芸部員が選ぶこともなく決まった。
まだ完成していない作品や自宅で描いている作品もあって、それらは概要を教えてもらう。
不足していることはないか、それぞれLINEで確認し合う。
幸いにも展示作品の関連図書紹介に反対する美術部員はいなかった。ただ選んだ図書を聞いてから決めたいと言う部員は2人いた。だから実際に当日全部の図書を紹介出来るかはまだ分からない。それに賛成してくれた部員にだって、もしも選んだ図書が嫌だったら無理に押し付けたくはない。
美術部員に喜んでもらえるような図書を選べるように。私は気合を入れ直した。
そんな風に文芸部と美術部との交流は進んだのだけれど、足立くんはクラスの作業に付きっきりだった。
先週までクラス展示の準備に参加していなかったそうだから仕方がない。流石にこれ以上抜けることを許してはもらえなかったみたいだ。
毎日の作業が大量らしいけれど、美月ちゃんからは足立くんの絵がクラスで好評だと聞いている。
私も足立くんの絵を見たいとは思うけれど、お化け屋敷にはあまり行きたくなくて、ちょっと困っている。
そして…。
私は彬良くんと相談して、文芸部の2年生にはあの匿名小説を書いたのが私だと告白することにした。
私だって本当は、彬良くんが気にしなかったように、文芸部の皆んなも気にしたりはしないだろうと分かってはいた。
だけどどうしても後ろめたさを拭うことが出来なくて。
一度匿名で出してしまったから、後からでは言い出しづらい気持ちもあって。
でも足立くんに話して、そして悪いことではないと言ってもらえて、ようやく告白すると決めることが出来た。
美月ちゃんを書いたものだし、公平くんには誤解をさせたし、彰吾くんは…あまり関わってはいないけれど文芸部副部長にだけ言わないというのもちょっと…。皆んなならきっと受け止めてくれる。
それに差し迫った事情として、次の三連休には文芸部と美術部の有志で一緒に作業をすることになっている。
足立くんを未だに警戒しているような公平くんの誤解を、解かないわけにはいかないと思ったのだ。
…と話した時の彬良くんは青褪めて私に謝り倒した。
「ごめん!気軽にコラボしようなんて言って…考えなしだった…。美術部とコラボすれば足立くんと公平くんが顔を合わせることがあると予想出来たはずなのにそこまで考えることが出来なかった。ごめん。もう…本当にごめん。どうしよう。僕どうやって償えば…」
だから私は「橘先輩に告白したら必ず結果を教えてね」と言っておいた。
だって怒るわけにいかないじゃない。足立くんが「おかげで『霞日和』に会えた」と言ってくれたのだから。
そうして彬良くんと二人で、あの小説を書いたのは私だと告白をした。
美月ちゃんは、そもそも読んでもいなければ気にもしていなかったので、「そうなの」と相槌を打つ程度の反応で。公平くんは「なるほど」となんとも言えない顔をしていたけれど、私を責めたりはしなかった。
そしてその後、公平くんは足立くんに謝りに行ったそう。足立くんから教えてもらった。
彰吾くんは、公平くんと足立くんに何かあるのか?と不思議に思っていたようで、「そう言うことか!」と納得して終わりだった。
そんなわけで慌ただしくも順調に準備は進み、そして隠し事がなくなったところで、文化祭前最後の連休がやってきた。




