謎の男子生徒Aとの邂逅
「足立、ちょっと顔貸せ!」
こんな台詞、現実に言われることがあるんだな。
そんなことを考えながら、謎の男子生徒Aに俺が連れて行かれた先は中庭。
チャラそうではあるが怖そうではなかったので、ついつい現実で謎イベント発生!?と付いて来てしまったが…。
「座れ!」
と言われて指を差されたのは、花壇の石積み。
「…」
まあ、そこはよく生徒が座っているスポットなので、座るのはいいんだが…
訝しく思いつつも、とりあえず座る俺。
謎の男子生徒Aの居丈高な態度に腹が立たないわけじゃないんだが、それよりも意味不明な展開への興味が先に立つ。
俺が座ると、謎の男子生徒Aも俺の横に座る。そして校舎の方を見上げ、「間違いない」と呟いている。
何が間違いないんだ?
俺も校舎を見上げてみるが…、特に変わったものはない。
俺のクラスの窓が見えるが、落書きがあるわけでも窓が割れているわけでもなく、なんというか普通だ。
「ここからは2-Cの教室がよく見える」
腕を組んだ謎の男子生徒Aが、校舎の方を顎で示した。
「うん?」
よく見えるとは…?ここから教室の中までは見えないが、窓付近の天井なら見える。
だから見えるのは教室の窓際が多少という感じだが、それをよく見えるに含めてもいいものだろうか?
「あの窓際の一番後ろがお前の席だ。さっきお前の席から窓の外も確認した。あちらからもここがよく見えた。つまりこれはお前だ!」
謎の男子生徒Aが謎の冊子を俺に突きつけた。
「えーと…」
まったくわからん。
「待て。えーと。まずお前は誰か聞いていいか?」
「2-E森公平」
「モリコウヘイくん。えーと、それで?俺がなんだって?」
「しらばっくれんな!これだよ!」
森くんは冊子を開いた。
「見ろ!」と押し付けられた謎の冊子をとりあえず受け取る。開かれている頁を見てみる。
…これは…小説…かな?
森くんは見ての通りだ!と言わんばかりの顔をしているので、どうやら俺はこれを読むしかないようだ。
ホントに何のイベントだコレ?
準備もなくRPGの不可避イベントに遭遇した気分で頁に目を落とす。
そこには、教室の窓から中庭で弁当を食べている女子を眺める話が綴られていた。
全46話で完結予定です。
最後までお付き合い頂けましたら幸いです。