プロローグ
岸田恒星は、自分に自信を持っていた。
誰よりも上手く
誰よりも優れてる
だが、そんな自信も一瞬で砕けた。
入部試験
体力、技術、メンタルなど様々な項目がある中、
どれもが、平均以下だったのだ。
(なんだこの学校は……)
桁外れに皆上手い
流石は何度も全国制覇を成し遂げている
常勝高
「今年の1年はだらしないな!」
キャプテンでチームの支柱
権田剛はそう叫ぶ
心もプライドもズタズタだ。
しかし、ここで終わる俺では無い。
「先輩、もう一度お願いします!」
睨みながらキャプテンは言う
「止めておけ、お前に俺を倒せない、何度もやっても同じだ」
「やって見なきゃわからねー」
恒星も睨みながら言う
そんな状況を見ながら、皆、冷ややかな視線を送る
先輩に対して、タメ口で話した恒星
権田は、更に険しい目付きになり言った
「良いだろう、1打席勝負だ」
そう言い、バットを手に持ちバッターボックスに入る
真っ直ぐに自信があり、今まで変化球を投げることは無かった
しかし、練習だけはしていた。
持ち球は、カーブ、フォーク、ナックル
正直、この3つの変化球を組み合わせても打たれる気しかしなかった
キャチャーを呼び、サインの確認をする。
「さぁ、少しは楽しませてくれよな」
そう言いながらバットを振り回す。
審判役の先輩がプレイの合図をかけ、真剣勝負が始まった。
初球は、緩いナックルでストライクからボールになる不規則な球を投げるが、
権田は、ピクリともバットは動かない。
1ボールだ
続いてアウトローに真っ直ぐを投げる
バットが少し動いたが、見逃し、ストライク
続いてカーブをインサイドに投げる
それをフルスイング
バットにあたり、大きな打球はポール際にきれて行った。
2ストライク、ワンボール
恒星は、大きく深呼吸し、サインを見る
キャッチャーは、1球外すよう、サインんだしだが
恒星は、勝負に出る
首を振り、フォークを選択する
恒星は、投げる、
権田は、すくい上げ、引っ張る
打球は、深々とセンター方向へ
バックスクリーン直撃のホームラン
肩を落とす、恒星……
「俺の勝ちだな」
そう言い、大事そうにバットをしまう
権田は、嬉しかった
あれほど落ちるフォークを久しぶりに見たのだ、
キャッチャーは、密かにどのコースにフォークが来ることを教えていた
権田は、呟く
(徹底的に鍛える)
キャッチャーも頷くのだった。
勝負に完敗した恒星、呆然とベンチに戻る
タオルを肩にかけられる
お疲れ様
20代前半の女性だった。
「どなたですか?」
そう恒星が聞くと
「監督の権田愛華です」
「監督さんですか?」
「うん、よろしくね」
愛華は満面の笑みで微笑むのだった……