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32 試練迷宮清掃10 迷宮ゴミ捨て場の回収作業

 ―― で、できたぁぁぁぁぁ!!


 内心の叫びをなんとか押し込め、僕は平然を装う。

 だけど達成感が大きく、心の中は喜びで溢れていた。

 拳を握り振り上げ、大声を上げたい。しかし人前だから自重し、小さく強く、拳を握った。


「……よし!」

「セイ! 出来たじゃないか!」


 アレンが駆け寄って肩をばしばしと無遠慮に叩く。


「ちょ、痛いよ」

「さっき出来ないって言ってたろ? できるようになったのか!?」


 彼は心からの笑顔をみせた。


「うん、試したら使えるようになったんだ」

「おおっ! この場で成長したか!?」

「ずっと前から考えてて、コツに気づいたんだよ」

「そうか! お前はやる奴だ!」


 まっすぐな称賛はこそばゆい。反応に困っている僕の後ろから、魔女子さんが目を輝かせて言う。


「あの手、死神の手ね! やっぱセイはわかってるわ!」


 彼女にも笑顔が咲いた。魔女子さんすぐ見抜いたね。


「うん、挿絵を参考にしたんだ」

「そか! でも羽が小さかったなぁ……」

「あの手飛べないからね」

「えー、飛ばないの?」

「回収は僕が手に乗せないとできないし、んー……」


 回収の手が飛びまわり、自動で回収してくれれば楽だとは思う。だけど消耗も大きくなりそうだし、魔導的に厳しい感覚があった。


「ちょっと出来ないかな」

「そか、残念」


 あまり気にしてない様子の魔女子さん。彼女は質問を重ねる。


「でさ、手が出る前に使った魔導はなに? 結構なマナを使ってたけど、中位魔導よね?」


 中位魔導? 魔導にはいくつかの分類があるのは知っている。だけどその内容は魔導学院独自のもので、僕は理解していない。使うマナや複雑さで分けているらしいが……。


「中位とか、その辺りよくわかんない。けど僕は、えっと、遺体の安置領域を作ったんだ。無いと回収できないんだよ」

「ほう、領域? どれくらい入るんですか?」


 近くで聞いていたイニスが興味深げに聞いてくる。


「僕の力だと、人はあと11体だと思う」


 頭の中で感覚を計算して答えた。少ないかもしれないが、広げることはできると思う。その辺りは今できるようになったばかりだし、何度も使って確かめなきゃわからない。

 ……ってことは多くの遺体と出会う必要があるのか。心情としては複雑だな。


「なるほど、それは重宝しそうですね」

「セイ、俺たちと冒険者しないか? よその国じゃ死体回収は割が良いぞ」

「僕は王都に家族と仕事があるからムリだよ」

「ちぇー」


 そこまで残念そうじゃないから冗談だろう。軽く流して雑談を打ち切る。


「じゃ僕、仕事に移るよ」

「あ、それじゃあたしも調査ね」

「では私たちは辺りを警戒しておきましょう」

「レアは……」

「眠そう。休ませてやれ」


 聖祈で疲れたのか、レアは少し離れた場所で奇麗な石に座り、うつらうつらしている。ニナが近くで守るように見ていた。


「そか、じゃあ起こすのも悪いね」


 そして僕たちは各々の仕事に就く。


「さて……」


 僕はざっとゴミ種を確認した。なぜか木箱が多い。こんな所に持ち込んで捨てるって、どんな人だ?


「ん?」


 ふと、眉をしかめる。

 壁際の方、ゴミが沢山積まれた辺り。背筋に走る嫌な感覚。

 先ほど変なマナを感じた場所だろうか? ゴミの忌避感ではない。

 マナが絡んでいる?

 もしかして、マナ廃棄物か!?


「あー、今なら対応できるな」


 呟き、ミュリ姉さんを見る。


「ごめんミュリ姉さん、もうちょっとだけ待って」

「どしたん?」

「マナ廃棄物がありそうだからさ、対策しようと思うんだ」

「ほえ? 良いよー」


 一言断り、新たに王樹の葉を取り出した。魔力にはまだ余裕がある。

 今からマナ廃棄物用の領域を作ろう。以前ラドックに相談したとき、『遺体の回収法』は『マナ廃棄物回収法』の応用で出来ると教えてくれた。ならば逆もできる。確信があった。


 僕は悪いマナを含んだゴミの格納場所について考える。

 マナは世界に漂い、現象を起こす源。神様と王樹が世界に撒いた、不思議な力だ。しかし、悪くなったそれは人に障ってしまう……。


 そんな悪いマナを集める場所は?

 ……心当たりがある。

 昔読んだ歴史を基にした童話の、表紙に描かれた魔純銀(ミスリル)の塔。

 お話冒頭にこうある。


 ―― この塔は魔の災いを封じ続けた結果、『災魔の塔』と呼ばれている


 その塔に住む、不思議な姫の物語。

 彼女は月の光で100年磨いた銀鏡を持ち、災魔の塔を管理していた。

 ……そんな彼女の恋のお話。

 あの物語の象徴ともいえる塔は、とても印象に残っている。


 そう、マナ廃棄物の格納場所は、災魔の塔が相応しい。


「よし……」


 僕は、挿絵にあった薄紫色の塔を脳裏に描き、マナを動かし魔導を編む。

 遺体回収の魔導に似ているマナ運行。

 そして、魔導を発現した。


「『廃域魔創』」


 マナをうまく動かせたのか、マナの消耗は先ほどよりも抑えられた。僕の中へ作り出される感覚。

 王樹の葉の使い古した方が消え、もう一枚も色が薄くなった。たぶん、回収の手を表すときも必要だろう。これ、結構お金かかるな……。けど、仕事が増えるから良いか。


「ふう……」

「セイ、いま何をした?」


 後ろからアレンが聞いた。


「ああ、マナ廃棄物を回収する領域を作ったんだ。以前、君の前で辛くなったでしょ?」

「んー? ああ、そうだったな」

「あれを防ぐ方法を思いついたんだ」

「今必要なのか?」


 彼の表情は責める感じではなく、疑問をそのまま言葉にしたようにみえる。僕はゴミをちらっと見て言った。


「嫌な感じがあったんだ。それに迷宮へわざわざ捨てに来るんだよ? 危ないモノを捨ててるんじゃない?」


 ただの予想だが、ここのゴミは訳ありだ。それは処分代が桁違いのマナ廃棄物だと考えられる。それらを丸ごと持って帰り、捨てた人の家に返してやりたいとは思う。だけど、結局は僕らが処分しなきゃならない。なら備えるべきだろう。


「量が多いと辛くなるから、予防したんだ」

「なるほどな! しかし、そんなもんをわざわざ迷宮に捨てに来るかね?」


 アレンの呟きに、イニスが答えた。


「真っ当に冒険者を志す者なら、しないでしょうね」

「なんでだよ?」

「ゴミを捨てるために冒険者証なくしたいですか? 見つかれば厳しい処分を受けますよ」

「そんなもんか?」


 イニスの言う通り、迷宮は冒険者ギルドが管理している。変な真似をした場合、普通より厳しい罪となり、冒険者証も失くしてしまう。普通の冒険者なら損しかない。

 しかし……真っ当でない人間は、欺き奪うなど、抜け道を心得ているんじゃないか?

 そういう冒険者はどの程度いるんだろ?

 王都ぐらいの人口なら、少なくないと思ってしまう……。

 そもそも遺体の彼は、そんな人間たちの被害者じゃないのか?


「……」


 思い付きは、言葉にできない。躊躇ためらってしまう。

 性格の悪い発想。彼らは僕の立場から言われたくないんじゃないかな?

 そこへリュシエルが会話に混ざる。


「冒険者証盗むとか、新入り雇って眠らせるとか、手はあるわよ。見合うだけのモノになればね」

「ふむ、そうだな」

「でもさ、そこまでして捨てたいかな? ねえセイ、危ないゴミの処理代って高いの?」

「マナ廃棄部は、んー、量と質によるなぁ。ゴミ缶一つで大銀貨50枚くらい?」


 僕の一月分の給金が大銀貨30枚ほどでこの金額。高額だとは思う。けど……。


「大きいですが……」

「手間に見合わんな」

「ギルド敵に回す旨味はなさそうねぇ」


 皆黙ってしまう。そこで話題を変えようと僕は言う。


「でもね、予測が外れてもこの技能は役立つんだよ」


 そう。ラドックに報告すれば、魔導関連の回収が任されるかもしれない。


「役にたつのか?」

「うん。僕の仕事が増えるのさ」

「仕事増えるのに嬉しそうだな」

「儲かるからね!」


 ふと、魔女子さんが心配そうに聞いた。


「けどさ、結構マナ使ってたわよ? 大丈夫なの?」

「うん、問題ないよ」

「ほんとに?」

「中位魔導を連発してます。本当に、大丈夫なんですか?」


 イニスも僕を心配してくれている……。僕は手を振って答える。


「大丈夫だって。てか、中位魔導って大変なの?」

「中位魔導は魔導師を志す者が魔力を充溢させ、ようやく習得できるものですよ」

「あー……慣れてない子が発動するとさ、マナ不足で倒れちゃうこともあるかなー?」


 それよりも凄い魔導を使う魔女子さん、実感なさげに言う。


「平気なヒトもいますが、一握りですね」

「でも、セイは平気そうねぇ」

「本当に大丈夫ですか?」


 問われて答えに困る。実際、そこまで問題はない。

 確かにマナは結構使った。だけど僕の魔力はまだ余裕がある。

 今作った魔廃域は、一度創造すればずっと使えるものだ。そしてできるという実感がある時にやらないと、あとで後悔するといった経験から試みた。心配されるほどの消耗じゃ無いのだが……どう伝えるか?


 「自慢している」と詰められた経験があり、大っぴらに言うつもりはないが、僕は魔力に自信がある。エリナの呪詛を抑えるため、多くの回収をこなすため、さらには師匠の稽古がマナを多く使うため、日ごろからマナを消耗させて鍛えてきた。

 そしてもう一つ。僕は特殊な鍛え方を知っている。それは夢で得た鍛錬方法。説明するのは(はば)かられる外法だ。

 その辺りは言えない。だから僕は平気である根拠を選んで言葉にする。


「大丈夫だよ。僕は日に300件くらい回収の魔道使うし、慣れたもんさ」

「……え、あの手出す魔導をか?」

「うん、こき使われてるんだ。だから大丈夫だよ。これくらいのゴミ量なら……あと20件分あっても回収できる。休めばもっと行けるよ」


 そして、使った王樹の葉に目を向ける。


「でも王樹の葉の消耗は痛いかな……」

「それ、仕事に関わるでしょ。経費で請求できるんじゃない?」


 耳ざとく、会話を聞いてたリュシエルが口を挟む。


「シュー、良いの?」

「え? そうじゃな、良いぞ! その代わり掃除、頑張るのじゃ」

「ありがとう」


 ちょっとシューに悪い気もするが、気にするだけ損というのが冒険者流らしい。僕はあまり考えないようにした。


「じゃあ、仕事しなきゃだ。ミュリ姉さんだいぶ待たせたね」

「大丈夫よぉ」


 ミュリ姉さんに声をかけ、僕達はゴミの前に立つ。迷宮を綺麗にするのが僕たちの仕事である。遺体と対面し、青ざめていたミュリ姉さんだが、彼女は仕事になれば大丈夫だ。


「セイちゃんホントに大丈夫?」

「大丈夫。それじゃ軽く片しちゃおうか」

「うち、めっちゃ頑張るね!」



―――――――――――――――――――――――――――――― 

 さあ回収作業を始めよう。


 ここは迷宮の広場だろう。ほとんどがゴミで占められていた。ゴミ種は箱物が多く山積み。高さはアレンの身長と同じくらい。天井まで届いてない。これを捨てた人たちも、そこまで積まなかったんだろう。なんとなく不自然に見える配置は、粘体生物(スライム)が食べたからか?

 量も結構ある。1人で片付ける場合、気合がいるな。だけど、これより大量のゴミを出す店もあった。地道に頑張るしかない。


「じゃあ僕、大物から片してくよ。ミュリ姉さんは細かいの集めてね」

「あいあいー!」


 まずは僕が先行して近くの大きいゴミの回収を始めた。

 デカくて重たいものをなんとか持ち上げ、通常の『回収の手』で回収する。腰が心配なミュリ姉さんには細かいものを頼んだ。一定量集まったら回収しよう。


「セイ、俺も手伝うぞ」


 アレンが手伝いを買って出てくれた。正直ありがたい。この仕事はゴミを一箇所に集めてくれるだけで、早く終わるものだ。

 普通、冒険者は余計なことはしない印象があるんだけど、珍しいな。


「良いのかい?」

「俺は動いてる方が好きなんだよ」

「いざって時に疲れるんじゃない?」

「人によるさ。それに早く終わった方が結果的に安全さ」

「ありがたいから、お願いするよ。って、作業でホコリ吸うからさ、保護布使わない?」


 ミュリ姉さんも僕も口と鼻を庇っている。普通の掃除も、埃が舞う。彼も普段はいらないんだろうが、作業の中心で吸うカビと埃は後で咳病となる。


「確かにな。じゃあ貰うよ」

「どうぞ、使って」


 僕は布を取り出して渡した。


「2人とも、さっさと片すぞ!」

 

 アレンの号令。つい従ってしまいそうになる。

 彼は首領としての資質があるんだろう。だけど、掃除は僕たちの専門である。慣れてない人間の指揮には従えない。


「アレン、悪いけどこっちの仕事は僕たちが仕切るよ」

「お? あー確かにな! じゃあ指示を頼むぜ」

「良いのかい?」

「手伝うってのは邪魔しないってことだよ。戦いの場では俺が指示出すから問題ない」


 ニヤッと笑う彼を見て、僕も笑い返す。


「わかった。それじゃ、コキ使う」

「お手柔らかにな」

「そういや君、マナ感覚は強い方?」

「んー? マナの動きを読むなら、自信があるな」

「悪そうなマナは?」

「どうだろう? イニスに勘は良いって言われるが……」

「そか、だったらさ、何となく気持ち悪いと思ったゴミは避けといてよ」

「わかった」

「あ、待ってー!」


 後ろから魔女子さんの声が掛かる。


「どうしたの?」

「物に含まれたマナって、結構見分けにくいの!」

「……?」

「だからあたし、マナ感知したげる!」

「お、そうか! ありがたいな!」


 魔女子さんはニコッと笑い、王樹の葉を貼り付けたじゃらじゃら杖を、ゴミ山に向けた。マナ運行は一瞬。彼女は素早く魔導を発現する。


「『魔印』!」


 そして、杖から光があたりに散った。しばらくその光が漂い消えた。壁の一部だけ光が灯る。


「ふむ、壁の方が怪しいけど、ゴミの中のマナは少ないみたい」

「ほう? セイの見立て、外れたな」


 おや? 感覚的にも経験的にも悪いマナが結構あると思ったんだけどな……。だけど、本職の魔導が証明している。僕の見立てが間違っていたんだ。


「そ、そうか……余計なことしてごめん」

「いいさ、用心は必要だし、出来そうだったんだろ?」

「うん」

「俺にもそういう事あったからな。仕事で返せばいい」

「ありがとう」

「で、俺はどうすればいい?」

「じゃあゴミを雑に渡して。大きいのは壊しても良いから」

「おう! 壊すならまかせとけ!」


 その言葉で、彼の仲間たちが息を吐く。


「アレン、あんなこと、言ってる」

「……壊すの得意、本当にね」

「むぅ。ニナの小手ぇ……」

「先月は依頼の品、壊したこともありましたね」

「あー、どっちも痛かったわ」


 アレン、君は結構やらかしてるな? そんな、聞こえるような陰口だが、彼の耳には届かず、大声で僕に言った。


「セイ! このおっきい奴から行くぞ!」

「あいよー!」



 しばし回収作業が続き、慣れてきたアレンはゴミを投げ渡すようになっている。


 大きな箱ゴミが飛んでくる! 受け取り、即回収した。

 やはりアレンの動きは凄い。洗練されている。彼が軽々と投げるゴミたちを、時には受け取り、時には避け、時には棒で打ち落として回収する。

 これ、僕が鈍臭いことしてたら投げたゴミに潰されるかも? 結構ヒヤヒヤする。


 ただかなり速く回収できているので、これからの段取りも考える。

 ここの掃除は床、天井、壁などが掃除対象だろうか?

 ただ天井の掃除は大変だ。危ないし時間がかかる。掃除する意味もそこまでなく、急ぐと言っていたので、出来れば避けたい。床のゴミを回収してからシューに確認しなきゃなぁ。


「セイ! 次行くぞ! 重いが大丈夫じゃ?」

「大丈夫だよ!」

「っしゃ、おらー!!」

「っと本当に重そう。てかアレン、粘液とか出てきたらちょっと待ってね」

「わかった!」

「姉さんは箒で細かいのをまとめて!」

「あいあい」


 ミュリ姉さんも箒を使い、足場の破片などを集めてくれてる。僕たちは即席にしては息の合ったゴミ回収をして、3分の1くらい片付いた。アレンが手を止めて呟く。


「粘液まみれのやつ……多くなってきたぞ」


 そう、表層は新しいゴミだったのか、粘液は気にならなかった。だが、深層のゴミにはかなり纏わりついている。

 朽ちた装備品などもあるな。鎧かな? あーぼろぼろだ。使えない。

 ゴミの底の方には、粘液に交じって変色した物がいっぱい。薬が変質したのだろうか? 嫌悪感を抱く色だ。


 それから、割れた瓶とすごい色の液体から、むっと来るような臭気が迫ってきた。近づくと気分が悪くなりそうだ。

 これ、箱ゴミが蓋になっていたからだろうな……。こういうのはさっさと取り除く必要がある。ほっとけば通行人の気分を悪くしてしまうな。


 ただこの量の粘液は、僕たちも危ない。

 手袋ダメになっちゃうかも?

 中和剤を使うか? 魔導にするか?


「どうするかなぁ……」


 作業方法を考えていたら、ミュリ姉さんが背嚢からオガクズの入った袋を取り出し、ばら撒き始めた。


「セイちゃん、これでベトベトを吸わせるわ」

「吸わせて大丈夫?」

「大丈夫よぉ。特別に貝殻の粉が混ざった奴、持ってきたもん!」


 ミュリ姉さんはさすがに掃除の本職だ。これに吸わせて無害化するのか……僕の知らないやり方である。


「こんなのがあるんだ……」

「うち、掃除の専門家だよぉ。いろいろ準備してるわぁ」

「そうだね。じゃ僕たちも、これ撒いて回収するよ」

「うん。たのむわー」

「お、なんかおもしろいな!」


 オガクズの袋を受け取ったアレンは派手にばらまきだす。ニッコニコだな。僕も一緒になってばら撒いた。これが結構粘液をみるみる吸ってく。見ているだけでも面白い。


「よーしアレン、奥の重いの片そう」

「任せろ! セイはどこで待つ?」

「え、待つ?」

「いや、セイが回収に専念した方が良いだろ」

「でもかなり汚れてるよ? こういうのは僕が……」

「何言ってんだ。俺をコキ使うって言っただろ? さっさと終わらせようぜ」


 さわやかに笑うアレン。汚れ役もやってくれるとは、ありがたい。いつかお返ししなきゃな。


「ありがとう、じゃあお願いするよ!」

「おう!」

「うちもペース上げて掃いてくね!」


 そして、僕たちは連携して動く。

 ミュリ姉さんは、箒を使い細かいゴミを集めるのを続けた。彼女の掃き方は工夫があるのか、静かなのに素早く集まる。ほんと感心するなぁ。集めたゴミが一定の量になったら、チリトリを使って回収する。


 アレンは粘液が多少あっても平気で奥に入り、決めた位置へぶん投げてくれた。工夫があるのか見切っているのか、彼はそこまで汚れていない。またゴミの投擲が洗練されてきた。戦士としての応用力が高いのだと思う。


 そして僕は2人のおかげで回収に専念できた。集まったゴミを回収しつつ、隙を見つけて近くのゴミも回収する。

 作業はかなり効率良く進んだ。そして、アレンが言う。


「よし、大きいゴミは片付いたな」


 彼の言う通りほとんどのゴミは回収できた。床には汚れと少しのオガクズだけとなっている。

 迷宮清掃は次の段階に移るんだ。


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