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進化したゴブリン、異国に潜入す。第3話

「総額で銀貨五十枚になります」


 麻袋を受け取って受付を後にした。


 銀貨五十枚って多いのか少ないのかわかんね〜


「かなり良い稼ぎになったな。泊まるのには困らない」

「そうなのか? ってか、泊まるのに幾ら掛かるんだ?」

「銅貨十枚とか、だな。そもそも銀貨では無い」


 クレアが相場を説明してくれる。まあ、それでもよくわからないんだけどな。


 取り敢えずは、指輪に銀貨の入った袋を仕舞う。


「良い宿知ってる?」

「それなら、冒険者ギルド直営の宿で良いと思うが」

「そんなのあるのか」


 元々住んでた国にはそんなモノは無かった。


「ミリシャの国は出来たばかりだから、知らないのも無理はないな」

「へー」


 知らない事が多いな。


「ま、良いや。取り敢えず案内してくれ」

「わかった」


 クレアに連れられて、俺は冒険者ギルドの建物を後にした。


 街道は石でしっかりと舗装されていて、履いている靴が硬い音を鳴らす。

 辺りの建物も基本的に石造りで、石に対する拘りに少しばかり恐怖を感じる。


「建物がしっかりしてるよな。どこを見ても」


 俺が住んでいた神王国ヤマトは土道で舗装されている程度で、建物も木造が殆どだ。


「表はしっかりしているな」

「その言い方だと、裏は酷いのか?」

「……ああ」


 所謂スラム街と呼ばれる場所でもあるのだろうか?


「今度、そっちにも案内してくれ」


 この国の現状を見極めるのは、俺の仕事の一つでもあるからな。


「興味があるとは思わなかった」

「仕事だよ」

「ああ、そうか」


 好き好んでスラム街に行きたいとは思わない。というよりも、そもそも興味が無い。

 面白そうな物があればスラム街に行きたいとはなるんだろうけど、生憎と、人の貧困を見て楽しむ趣味はない。


 ってか、ゴブリンにそんな趣味を求められても困る。


「ここだな」


 目の前にはこじんまりとした宿が建っていた。


「冒険者ギルドの建物って、木造がほとんどだよな」


 さっきまで居た冒険者ギルドの支部も、辺りが石造りなのにも関わらず木造の建物だった。


「冒険者ギルドの建物は、どんな場所であっても木造だ。理由は知らない」

「そうなのか」


 クレアが知らないんじゃ、俺にわかる訳がない。


「部屋をとってしまおう」

「そうだな」


 取り敢えずは七日分を宿の受付の女性に払う。合計して銀貨二枚を手渡した。


「良かったのか?」

「同室だし、俺が払うよ」


 クレアが同室で良いと言ったから、二人で一部屋を借りた。

 流石にその代金を彼女に持たせる訳にもいかない。別に懐に余裕が無い訳でもないしな。


「さて、どうすっかな」


 受付から与えられた鍵を扉に突き刺して、グルリと回転させる。

 閉じていた鍵が回ったことを確認して、扉の取っ手を下に引き下げた。


「……狭いな」


 今まで暮らしてきた部屋に比べて極端に狭くて、思わず感想が零れてしまった。


「それは仕方ない。冒険者は本来そういう物だ」

「そうなのか。ま、それなら仕方ないな」


 部屋も狭いし、小汚いけど、受け入れるしかない。


「もう少し葛藤とか無いのか?」

「何が?」

「いや、無いなら良い」


 よくわからない問い掛けをされて、首を傾げる事しか出来なかった。


「この後はどうする?」

「今日は外で食事をしたいんだけど、オススメってあるか?」


 食事は他国の事を知る上で良い機会だ。ミレイ王に他国の食文化を見て来てって頼まれたってのもあるけど。


「オススメ、か……」


 クレアはとても困った顔をしていた。その表情を見る限り、あまりその手の物は知らなさそうだな。


「わからないなら、ちょっと散歩でもするか」

「そう……だな。その方が良いと思う」


 特にそういう行動をすることに対して問題は無さそうだ。

 そう思って宿を後にすると、何も無くてびっくりした。屋台とか料理店とか本当になんにもない。


「ここって、そういう国なのか?」

「まあ、そういう国だ」


 確かにさっきまで歩いてて、石造りの道に建物しかなくて料理店とか無かったけどさ、それにしたって何もないってなんだよ。


 街を歩き回っても、マジで一つもねえ。


 建国されたばかりの俺の国ですら、最近は料理店とかも出来てきたのに、歴史のありそうなこの国は屋台すら無いのか。


 いや、マジで驚きだわ。


「今日一の驚き」

「それは意外だな」

「いや、俺たちの国もミレイ王が人を呼ぶ為に色々やってたからさ。だから、屋台とかレストランとかって、人を呼ぶのには無きゃいけない存在……って言うと言い過ぎかもしれないけどさ」

「言いたいことはわかる。だが、この国は外からの客を歓迎してないんだ。常に鎖国の雰囲気があってな」

「……それって、他種族を受け入れないのと関係あるのか?」

「そこはどうだろう?

 だがまあ、他種族はあれみたいに、酷い扱いを受けるのが基本だからな」


 クレアが指さしたあれは、首に金属の輪っかが付けられたエルフの事だ。

 服はオンボロで、だからこそ、透き通るようなエルフの肌がよく目立っていた。


「ああいう事柄があんまり外部に漏れない」

「なるほどな。ひでぇ扱いだな」

「不当に捕まえた他種族を労働力として搾取するのが、この国のやり方だ。そして、国民もそれが正しいと思っている」

「……お前は?」


 そう言えば、クレアもその内の一人だったんだよな?


「私はそうは思わない。……が、それのせいで妹が殺されたと言っても過言ではない」

「どういうことだ?」

「他種族に優しいあの家族は殺しても良い。……そう住民の意識を統制したのだ」


 それは……酷過ぎる。


「なんだよそれ」

「何を見ても驚かなかったのに、こんな事で何を……」

「悪い、顔に出てたか」


 らしくない。ただ、そういう人の在り方に憎しみを抱いたのは事実だ。


 俺にはゴブリンとしての生以外にも、人としての記憶が寸分残っている。

 ただまあ、過去に誰だったのかは忘れてしまっていて、思い出せても……いや、何処からが人の記憶なのかすら、見当も付かない。


「どうせ過ぎたことだ」


 クレアは真顔だった。それは鉄仮面を被っているようで、逆に不気味さすら感じさせる。


「あー、そっか、そっか、そうすれば良いのか」


 思い付いてしまった。


「奴隷を盗んだらどうなる?」

「罪に問われる」

「それって、証拠がなきゃ無理だよな?」

「……そうだな」

「よし、じゃあ手始めに、あのエルフを盗んでみるか」

「はあっ!?」


 クレアが絶叫する。急にこんなこと言われたら、そりゃ叫びたくもなるよな。


 別に綺麗な手つきでやる必要は無い。あのエルフを盗んだ後に俺の手元にエルフが居なければ良いのだ。


 俺にはその手段がある。ミレイ王も人手が欲しいって言ってたじゃないか。


「……奴隷って何処で売られてるんだ?」

「奴隷商で基本的に売られている」

「奴隷商か、夜に案内してくれるか?」

「それは構わないが……」

「よし、じゃあ、宿に帰るか」


 俺がやろうとしている事にはミレイ王の協力が不可欠だ。だから、アストレアに話し掛けてミレイ王に繋いで貰う必要がある。


『アストレア、聞こえるか?』


 彼女を想って、思念を頭に浮かばせる。


『聞こえています』

『良かった。王様に繋いで』


 宿に戻りながら、早速計画を立てよう。


『何か用?』


 ミレイ王の声が頭に響いた。この会話がいったいどのような原理で成立しているかは俺にはわからない。

 理解できるのは、これが出来るのは俺とアストレアだけで、アストレアが仲介をする事によって、俺と他の人が会話を出来るようになる。


『実は奴隷を盗んで其方に送ろうと思いまして』

『なんで?』

『違法奴隷が多いと、クレアから聞いたので』

『確かにその裏は取れてるけど、君が盗もうとしている奴隷が違法かどうかはわからなくない?』

『……確かに』

『だから、奴隷を盗むのは止めな。奴隷制度自体は悪い物じゃないと私は思ってるし……ああ、でも、ちゃんと証拠があるならやっても良いかもね』

『証拠、ですか?』

『不当に奴隷にされたって証拠』

『な、なるほど……』


 奴隷を盗むのは駄目みたいだな。やるなら、証拠集めからしないといけないのか。


『今あるの?』

『ありません……』

『じゃあ、この話は終わり。次同じ話をする時は、きっちりと証拠を抑えてね』

『……はい、わかりました』


 そこで会話は途切れた。ちょっと、考えが浅はかだったかもしれない。

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学園モノはカクヨムにて→欠落した俺の高校生活は同居人と色付く。

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