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第4話

「ミリシャも強くなったよな」


 美玲に連れられて、アストレアの転移魔法を使い、ミリシャが荒らした森の中にやってきた。


 常に俺やルビアばっかりと戦っていたミリシャは、自らの強さを正しく認識出来ていない。

 その段階で実戦に送り出すことは、途方もなく危険な行為であることは理解していた。


 ミリシャが普通の人であれば、だけどな。


「陵、これを見て」


 美玲に呼び寄せられて、彼女が指さした先を覗き込む。そこには幼い少女の焼死体が転がっていた。

 髪も無いし皮膚も爛れているから、骨格からしかわからないが、恐らくそうだろう。


「周りの人たちは……」

『ミリシャとクレアが斬ったみたいです』


 アストレアがミリシャから得た情報を教えてくれる。軽く二十近くはいただろうに、特に困る事もなく倒し切ったらしい。


 彼に色々と教えこんだ身としては鼻が高いな。


「これなら潜入しても戦力において困る事は無さそうだな」


 死臭を尻目に実感を言葉にする。彼の実力は俺が思っていた以上かもしれないな。


「ちょっと楽しい?」

「楽しみ、かもなあ」


 もしかしたら、もしかしたら何かを経験して、俺を困らせる程の強者になるかもしれない。

 そう考えると、ついつい、ミリシャに過分な期待をせざる得ない。


「陵、この世界に来てからの方が楽しそうだよ」


 美玲が急にそんなことを言った。


「そう……かもな」


 美玲も俺も元々居たはずの家族と離れ離れになった。その結果に成り立った現状をすんなり"楽しい"受け入れるのは、俺自身がそれを簡単に受け入れられるからこそ抵抗があった。


「良いじゃん。良い所は良い所だって受け入れようよ」

「……美玲は嫌じゃないのか?

 今の現状を心から楽しむのって、いや、楽しいことは楽しいけど、隣の人がそうだったら嫌に感じないか?」


 俺は元々無神経な奴だ。人が死のうが気になりやしない。でも、美玲が俺の考え方や現状の捉え方でストレスを感じたりしないか、は、気になるんだよ。


 俺自身の楽しさよりも、美玲の方がよっぽど大切だからさ。


「私は気にならないかな。むしろ、私にめっちゃ楽しいんだぞってアピールして欲しい、とか思っちゃうけどね」

「いや、それは流石にしないけど」

「まあ、陵はやらないよね」

「キャラじゃないしな」


 そうやって彼女が考えてる事を聞けただけ良かった。


「てか、楽しいことを作っていかないと、本当にこの世界に投げ込まれて、一生不幸でしたってなっちゃうから、楽しいことはどんどんやった方が良いと思う」

「なるほどなぁ。これからそうしようかな」


 人と戦うのは楽しい。殺し合いすらも、人を殺すという逃避感より、純粋な戦いとしての楽しさが勝つ。

 だったら、それらを純粋に楽しんだ方が、この世界に来て悔いを残さない……のかもしれない。


「あでも、無闇矢鱈に殺さないでね」

「殺しは好きじゃない」


 殺す程の理由が無い限りは、人を殺そうとか、野獣ですら手に掛けようと思わない。


「まあ、その話は置いておいて。ここに転がってる死体、どうしよっか」

「回収した方が良いとは思う。でも、今後のどのタイミングで使うかまではわからないしな」


 森の中だし、捨て置いても何とかなる気はする。


「日本風に言うなら、人の肉を食べて味をしめた野獣を少しでも減らすべき?」


 日本であったのは、人肉の味をしめた野獣、例えば熊だったりは、人を襲いやすくなるというものだ。


「あー、確かにそれはあるかも。神王国ヤマトに来る途中の野獣が人肉大好きですは、普通に考えてヤバいよね」

「字面がそもそもかなりヤバい」

「それ」


 人肉大好きな獣が跋扈している森の奥にある国、神王国ヤマト。


 うん、ヤバい。


「……で、美玲、気が付いてるか?」

「んー?」

「囲まれてる」


 大分前から気配が揺れていた事には気が付いていた。だけど、明確な敵意が無かったから捨て置いていた。


「気が付いてないよ」

「まあ、そりゃそうか」

「獣?」

「人」


 こんな森の奥にも人が居るらしい。誰だか知らないが俺たちを囲んだ。


「敵?」

「さあ」


 囲まれただけで、手を出そうって感じでもない。様子を見ている、が正しい状態だと思う。


「かかって来たければかかって来い」


 挑発の言葉を辺り一帯に響かせる。刀は抜かずに、けれども、いつでも殺せることを辺りに示す。


 すると、一人が俺たちの目の前に姿を現した。


 その姿は真っ黒で、忍者や暗殺者のようにすら見える。と言うことは、姿を現した時点で敵意は無いと思っても良いかもしれない。


 刀を抜いて、目の前の真っ黒くろすけに刃を向ける。


 だからと言って、油断する理由にはならない。


「どうした? 何も喋らないのか?」


 その者の目に、突然に刀を抜いた俺に対する驚きはなかった。

 そういう教育を受けてきたのか、もしくは本当に驚いていないのか。


 ……何にせよ、一筋縄ではいかないな。


「我は日森の民、クルガ。貴殿らはいったい何者だ?」


 溜めに溜めておきながら、表情を一つ変えることなく言葉を発した。全く情報が読み取れないな。


「神王国ヤマトの王、美玲。こっちは王配の陵。君たちはいったい何をしているの?」


 まあ、名乗るんだったら俺からじゃない方が良いからな。

 最近の美玲は王の立場が板について来た気がする。


「……王、だと?」

「だけど、何か問題でも?」

「……」


 その者は初めて驚愕の色を見せたが、美玲の問い掛けに答えることは無かった。

 しっかりと教育がなされているのだろう。迂闊に喋ると情報だけ取られて終わりそうだな。


「この者たちを倒したのは私の部下でね。その処理をしに来たんだけど、君たちは敵? それとも、味方?」


 今まで普通の姿をしていた彼女は、太陽王モードを起動させて神々しい姿へと変貌する。


「……敵ではない」

「味方でもない、と」


 その者の苦し紛れな言葉に、美玲は被せるように事実を追認する。


「美玲、それ以上に何かをやってもコイツらは喋らないよ」


 美玲はこういう類の、所謂純粋な工作員や暗殺者との接点はない。

 俺たちの国にもそう言った類の職業は通常は存在しない。

 だから、脅せば他の人間と同様にポロッと吐くかもしれない、そう思ってしまうのも無理はない。


 日本に居た時、俺の道場にもそういった類の人が居たけど、アイツらはそんなに生易しい類の存在じゃない。

 敵に回ったら最後。迷う暇があれば先にやられている。だから、殺すしかない。


「ふーん。教科書やフィクションでしか見た事ないけど、そういう人たちが本当に居るんだね」


 美玲は面白そうな視線をその人に向けて、少し楽しそうに言った。


「うちでも作る?」

「そういう部隊を?」

「そそ」

「う〜ん」


 必要ではあるけど、安易に作れるもんじゃない。中途半端に作っても寝返り三昧だろうし、全力でやったら実質的な廃人が何人も量産される。


 首を縦に振るのはちょっと難しいかな。


 それ以外であれば、神王国ヤマトに対して熱烈な郷土愛を持っている人が挙げられるけど、出来たばっかのヒヨっ子の国にそれを求めるのは無理だ。


「難しいのかな?」

「難しい。不可能ではないけど」


 代案としてあるのは、誰かの圧倒的なカリスマ性で暗殺者集団を率いるということ。

 ま、難しいよな。洗脳しなきゃいけないし。


「そっか。じゃあ、ここら辺の死骸を回収したら、計画を立てようか」

「え、まじか……」


 美玲は乗り気っぽいけど、そんなに簡単じゃないと思うんだよなぁ。


「待たれよ。ここの死骸、我らに譲って頂けないか?」

「それは無理」


 美玲はバッサリと切った。


「……どうしてもか?」

「色々と調べなきゃだしね」

「そうか……」


 そいつの顔を隠していた布を、刀で切り裂いた。


「……敵対するのはやめておけ。お前らじゃ俺には勝てないよ」


 敵意が見え隠れした。だから、先に脅しをかけた。


「そういう訳だから、邪魔しないでね」


 俺たちは死骸を回収して国に帰った。

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学園モノはカクヨムにて→欠落した俺の高校生活は同居人と色付く。

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