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第9話-陵とミリシャ③

 ダイニングテーブルを挟んで、対峙するように座っていたミリシャは全てを自白したように思えた。


「つまり、お前には能力を見る力がある……と」


 彼の自白を聞いて、思わず俺は眉を潜めた。


「そうですね……」

「相手の名前や種族もわかると」

「わかります」

「ふぅん」


 相手の名前と種族と能力がわかる能力か。使いようによっては便利な気はするけど、どうなんだろうな。

 魔王もルビアも“鑑定”をされて気が付いた節があったし、俺もされた時に変な感じがしたから、多分わかる奴にはわかるんだろうな。

 感覚的には人に向けられた視線が、更に粘着質になったみたいな。


「り、リョウ様?」


 どの方向性で彼の能力を使うのが一番問題が起こらないのかを考えていたら、それを見ていた彼が少し強張っているのが見えた。


「ああ、別に取って食おうって訳じゃない」


 まあ確かに、殺しておいた方が楽な能力である事は否定しない。でも、そもそもその能力って何処までが詳細に見えてるんだろう?


「ミリシャ、お前の能力で見える俺の情報をこの紙に書いてくれ」

「え、は、はいっ」


 ペンと紙を彼に渡す。


 名 前:相浦 陵

 種族名:人間?

 称 号:道場主/???

 性 別:♂

 スキル:

 武術 Error

 死眼 Error

 空歩 Lv8

 身体強化 Lv1

 相思狂愛 Error


 彼は大きな手で器用に書いた。


 んー、見方がよくわからないな。ってか、種族名に“?”がついてるのはなんでだ……


「読み方がわからない。えっと、この“Error”って?」

「この“Error”は測定不能を意味します」

「……あんまり詳細な情報までは見えないんだな」

「そうですね。結構不便です」

「この“Lv”ってのは?」


 多分レベルって意味だと思うんだけど、どのレベルが何処までなのかわからないからな。


「あ、えっとですね。

 Lv1~3は初級者、Lv4~6は中級者、Lv7~9は上級者、Lv10はその技術の達人って感じで分けられているみたいです」

「……なるほど。ちょっと待ってもらって良いか?」

「え、あ、はい」


 ミリシャに一言伝えて、俺は自分のスキルの吟味を始めた。何個か知らない技術があるんだよな。


 ってことは、“空歩”と“身体強化”って技術はレベルの上げようがあるのか。


 色々とツッコミどころが多いスキルが沢山並んでるから、これはちょっと整理したいな。


 “武術”はまあ、多分、普段の行いだろ?

 “空歩”と“身体強化”は天照大御神(アマたん)からもらった能力だろ?

 “死眼”と“相思狂愛”は身に覚えがない。どんな技術や能力なんだろう?


『“死眼”は相手を殺せる一撃を未来視させる能力です』


 指輪の言葉を反芻させる。未来視、未来視……うーん、想像が難しいな……


『こちらからスキルの強制的な発動を促しますか?』


 そんなことが出来るのか?


『はい』


 任せた。


 その次の瞬間、ミリシャを殺す為に必要な一手を打ち込んだ俺の姿が視えた。ルビアや魔王と戦った時に視えてる奴だな。気配斬りとかする時にも視えてる。


 ああ、これか。確かにいつも使ってるな。ってことは、この“死眼”は普段の行い故の技術だな。


 じゃあ、この“相思狂愛”ってスキルは何なんだろう? 文字の形的に“相思相愛”の誤変換にすら思えるから、もしかしたら美玲も同じスキルを持っているのかもしれない。


「なあ、スキルの情報を掘り下げることって出来ないのか?」

「……やろうと思った事が無いですね」

「ちょっと、やってみて貰って良いか? 俺の“相思狂愛”ってスキルにやってくれ」


 ミリシャの能力、結構便利だな。自分が知らない物を数値化して把握できるのは色々と都合が良い。


「う~ん、あ、出てきました」

「まじか。俺が自分で把握してないからわからないんだよな」

「えっと、ありとあらゆる呪いや制約を解除し破壊する、らしいです。ただし、えっと、ミレイ王との約束事以外に有効だそうです」

「……なるほど」


 聞いた感じ強そうな能力だけど、使った記憶が無いからさっぱりわからないな。


『我々が呪いなどを解除する際は、その能力を引き出しています』


 指輪がいつも言う“呪いが解除できる”って、指輪自身の能力でってわけじゃないのか。


『私達の能力でもある程度は出来ますが、その能力の方が手っ取り早いので』


 ……新事実過ぎてちょっと愕然とした。


「リョウ様……?」

「ああ、いや、悪い」


 目の前のミリシャを放って、また思考の海を泳いでた。


「でもまあ、そのスキル、かなり便利だな」

「そ、そうですか?」

「多分な。後で美玲にも伝えとく」 


 俺がどうこうやるよりも、美玲に話した方が良いのはわかった。


 部屋の扉がバタンと開け放たれた。そこに立っていたのは死人のアストレアだった。


 とても焦ったようなそんな表情をしていた。あと服が乱れてて目のやり場に困る格好をしてた。


「アストレアっ! ふ、服っ!」


 ミリシャが顔を赤くしながら叫んだ。なんだこの甘ったるい空間は、見てるこっちが恥ずかしい。


「?」


 アストレアは彼の慌てように首を傾げた。結構長い期間存在し続けてるみたいだし、彼女にはあんまり羞恥の心が無いように思えた。


「はあ……」


 指輪からブランケットを取り出して、アストレアに投げてやった。


「ミリシャ」

「は、はいっ」


 彼はアストレアに投げ付けられたブランケットを広げて、アストレアをクルクルと包み込んだ。


 ガチャン、と玄関の扉が開けられた。


「ただいまー」


 どうやら、美玲が帰ってきたらしい。


 ……とすると、レイアも居るのか?


「美玲、そこにレイア居る?」

「ん、はい、居ます……け……」


 ひょこっと顔を出したレイアは、アストレアとミリシャを見て固まった。

 アストレアの格好は子供には刺激が強過ぎるし、ミリシャはレイアが大っ嫌いなゴブリンだ。

 そういう反応になるだろうなって思って、距離を取れるように、せめて子供には刺激が強いアストレアに服だけでも着せようと思ったのに、こうやって顔を出されちゃもう手遅れだ。


「きゅう……」

「おっと」


 情報量が多過ぎて、案の定にレイアは気絶した。それを美玲がキャッチする。


「陵、説明」

「へい」


 美玲にビシッと言われて、俺は大人しく頷いた。


「なるほど、タイミングが悪かったんだね」


 一部始終の説明をしたら、あっさりと納得してくれた。


「ミリシャ、アストレアに服を着せてこい。あと、着せ終わったら戻ってきて」

「え、あ、はいっ! 一旦部屋に戻りますっ」


 ミリシャは部屋からアストレアを押し出して、彼らの寝室への逃げるように向かった。


「彼と何を話してたの?」


 気を失ったレイアをソファに寝かせて、美玲は俺の隣の椅子を引いた。


「彼の能力の事かな」

「どんな能力なの?」

「人の技術を可視化する能力、俺はこうなんだってさ」


 美玲にさっきミリシャが書いた紙を見せる。


「なに、人間?って」

「それはわかんないけど」

「でも、それ以外の文字は、あー、なんかよくわからないのもあるね」

「そうそう。まあ、今はわかったんだけどさ。彼に聞いたら教えてくれたから」

「へー。ねね、家事とか炊事とか洗濯とか、そこら辺の名前は無いんだね?」

「確かに言われてみれば、そうかも」


 美玲に言われて気がついたけど、確かに日常で行っている事柄に対しての技術や技能って無いわけじゃないよな。

 なのに、彼の能力ではそれが見ることが出来ない。


 ……確かに、ちょっと変な感じだ。


「便利そうじゃない?」

「んー、まあ、多分」


 俺の認識と彼女の認識は確かなズレがあった。結構便利だと思うんだけどな。


「本当にここに書かれてる能力、技術で全てかと言われると微妙だよね」

「まあ、確かに」

「結局、彼が視えている能力や技術って、何を持って()()だと示しているのかわからない」

「うん」

「参考程度に留めるなら良いけど、でも結局、参考程度に留めるなら、あんまり必要そうには思えないし、例えば拾ってくる住民の数を極小数に規定するなら、選り好みをするために使えそうだけど、でもそもそも絶対的に人が足りてないこの国は質より量だから、そうやって振るいに掛ける余裕はないよね」

「いや、基本はそうで良いと思うけど、最初にその人に与える仕事の種類に対して指向性を持たせることは出来るだろ?」

「確かに得意な物をやらせた方が良いけど、やりたい事とやってきた事ってズレてたりもするよ?」

「それこそ、集団で選り好みが出来ない国の中で個人が職の選り好みを出来るとは思えないんだけど」

「あ~、確かにそういう見方も出来るよね。ん~、使えなくはない……かも?」

「絶対にミリシャを使って、人の能力を管理した方が色々と楽だと思う」

「ん~……」


 ミリシャの能力の利便性は理解できているはずだ。でも、何を気にしているのか彼女はすんなりと首を縦に振ろうとしない。


「ちょっと、それに関してはレイアと話させて。私は彼を頼る事で見えない能力や技術を逃す事の方が怖い」


 レイアが目覚めるまで二時間くらい掛かった。

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学園モノはカクヨムにて→欠落した俺の高校生活は同居人と色付く。

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