第7話-資源開発(計画段階)④
『はい、私はアンチ・マギアという金属を作っています』
「えっと、鉱石って自分で生み出せる物だっけ?」
『アンチ・マギア、アンチ・マジックの二種類の金属は他の鉱石とは違って、人の手で作成が出来るのです』
「そ、それ自体がそもそも初耳だよ……」
ドワーフ族からそんな事は言われなかった。もしかしたら、ドワーフ族すら知り得ないのかもしれない。
『確かにアンチ・マギアやアンチ・マジックという鉱石は、人の手で生み出せるとは言っても、自然界で生成されないとも言えません。
そもそも、私のように作れる人も少数でしょうから』
「ちょっと、不躾なことを聞くけどさ、作るには何が必要なの?」
『金属と魔力、ですね。私は粗悪な鉄からでも作成出来ますが、魔力伝導性の高いミスリルから作るのが一般的だと思います』
うーん、多分、それはドワーフ族曰く一般的ではないんだよね。そもそも鉱石が作れるって認識が彼らには無かった。
色々と意見が食い違ってて、ちょっと私も混乱してきた。どっちの言うことが正しいのかな……
「一応聞くけど、君は鉄からアンチ・マギアとかを作るのは難しい?」
『アンチ・マギアは簡単に出来ます。ですが、それはアンチ・マギアと呼ばれる鉱石が一般的に硬度が低い物を指すからです』
「つまり、アンチ・マジックの作成は難しい?」
『そう……ですね。安物の金属類、特に強度が低い物だとどうしても難しいと思います』
取り敢えず鉄からアンチ・マギアを作るのは出来るらしい、と。
うーん、新しい事実過ぎて頭がパンクする。専門的な事は専門家に投げっぱなすのが一番良い気がしてきた。
『よろしければ、機械をお見せしましょうか?』
「えっ!? 良いの?」
『はい』
彼女、アストレアは一つの魔法陣が描かれた絨毯を地面にひいた。
すると、その魔法陣から大きくて真っ黒な箱が現れた。
『私が手でやろうとすると、一瞬のミスで作成を失敗してしまうので、こちらの魔導具を使って作成します』
「じ、自動化してる……」
これ、ヤバくない?
『私も手馴れた作業なのですが、機械を使わないとある程度は失敗します』
「えっと、これって自分で作ったの?」
『私が故意にしていたハイドワーフの方に作って頂きました。もう何百年も前の話です』
あ、そっか。彼女は今の時代の人じゃないんだ。そりゃあ、色々とズレてたって可笑しくないよね。
「ねえ、折り入ってお願いがあるんだけど……」
『なんでしょう?』
「その技術を私達に提供、または、アンチ・マギア、アンチ・マジックを作成して卸してくれないかな?」
『条件によります』
「もちろん、飲める条件は全部飲むよ」
『まずは彼の治療を……』
「だね。君達を私達の国に連れて帰って、そこで療養して貰おうかな」
軽い治癒の魔法なら私も使えるけど、結局そこから先は安静にするしか方法はない。
……あれ?
時間魔法って怪我を巻き戻せたりするんじゃなかったっけ?
なんで彼女は自分でやらないんだろう?
「ねえ、一つ聞いて良い?」
『なんでしょう?』
「時間魔法ってやつで、怪我を負う前に巻き戻せたりするよね? なんで彼にはやらないの?」
『それは……その』
「治せるの治せないの?」
『……治せます』
私の問いに悲痛な面持ちで彼女は答えた。
「聞かれたくない理由なら、聞かないけど」
『……彼には使いたくないのです』
「そっか。……うん、今は良いや。取り敢えず森から抜けようか」
きっと私が想像も出来ないほどに長く生きている彼女のことだ、今ここで全てを知ろう、理解しようとしても、永遠と平行線を辿ってしまうことは理解できた。
「陵、彼を抱えて走れる?」
「ん? ああ、余裕」
「おっけー。アストレアも行くよ」
冷え切った手を引いて、彼女を洞窟の外に強引に引っ張り出した。
「今帰ったよ」
「おかえりな…さ……い?」
神王国ヤマトの自宅の扉を開けた。
「え、また増えてる??」
「まあ、今回は想定外だったかな。レイアにも手伝ってもらうよ」
「そ、それは良いのですが、その、陵さんが抱えてるのは……」
「ゴブリンだね」
「……」
レイアは顔を青ざめた。女性からしたら天敵みたいなものだし、こういう反応を可笑しいとは思えない。
「まあ、ちょっと特殊なゴブリンなんだよね」
「ですよね。……でも、ちょっと」
彼女は後退りした。
「レイア、私的な感情と公的な事実を一緒にしないでね。陵、ゴブリンは一旦そこに寝かせてあげて」
そうやって言っても、彼女の中にも折り合いが付けられない事もあるのだろうと思って、少し離れたソファにゴブリンを移動させた。
「今から、資源開発の計画書を作成するよ。レイア、アストレアはそのテーブルについてくれる?」
「は、はい……」
『わかりました』
「今からドワーフ族のグーを呼ぶから、彼が来たら本題に入ろうか」
レイアが結構緊張してるみたいだから、私は彼女の隣に座った。向かい側にはアストレアが座った。分身を一人出してドワーフ族の家に走らせた。
「危険は無いから大丈夫だよ」
「それはわかってるんですけど、やっぱりどうしても、その、ゴブリンの被害とかも見た事があるので」
ゴブリンの被害、即ち女性をレイプして強引に孕ませたり、その後に玩具にされたりすることだ。
男性も手足を切って玩具にされたりするらしい。ただ、孕まないから生きたまま食われたりするんだとさ。
笑えない話だよね。
「それはまあ、仕方ないよ」
その目で見たことがあるのなら、私はまだ書物でしか聞いたことがない案件だけれど、容易に受け入れられないことくらいは想像できる。
『こちらの方は?』
「この子はレイアって言って、この国の管理をしてくれてるよ」
「ど、どうしたんですか?」
「あ、この声は聞こえてないのか。良いかな?」
『よろしくお願いします。レイア様?』
「頭に声がっ!?」
「水の精霊王と同じ感じだね」
アストレアを見てると、この土地に来たばかりに水の精霊王に話し掛けられたのを思い出すよね。
「な、なるほど……」
「軽く説明すると、この人はアストレアって名前で遠い昔のお姫様だよ」
「遠い昔とは?」
「まあ、簡単に言うとアンデッドってことだね」
「……も、もう驚きませんよ?」
「それはもう驚いてるよね」
アストレアの事を色々と説明した。本題のほの字はまだ話してない。
「ゴブリンに治癒の魔法を掛けておくよ。気休め程度にしかならないから、後は安静にだね」
私も治癒系の魔法に関しては、何となく怪我が治るくらいの認識しかない。
グーが来るまでの間が暇だったから、席に座った彼女達を尻目に私はゴブリンに魔法をかけて、元の席に戻った。
「ミレイ様、此度はどのようなご要件でお呼びになられたのでしょうか……?」
グーがやってきた。私とレイアの顔を見るなり膝を折る。要件はレイアではなく私に訊ねた。私とレイアの上下関係が理解できてるからこその行動だ。
「以前、というかさっきさ、鉱石の話をしたの覚えてる?」
「は、はい、それがいったい?」
私の問答に答える為に、彼は顔を上げた。
「その鉱石を作れる人を呼んできたから、これから国を大きく耕すための計画に君に加わって貰いたいんだけどダメかな?」
「えっと、はい、その、最果ての地には……」
「行ったよ。そこで例の鉱石を作れる人に出会った」
グーは生やした下髭がまるで地面に付くのではないか、と思えるほどに大きく口を開けた。
「作れる物だったのですか……?」
「らしいよ? このアストレアって人が作れるってさ」
グーは彼女に訝しげな目を向けた。疑っているのがよくわかる。
何となく彼女の正体を知らなければ、それが自身の常識でなければ尚更に疑ってしまうのは仕方がない。
「とりあえず、グーも座ってもらって良い?」
「は、はいっ」
テーブルには私、レイア、グー、アストレアの四人がついた。陵はゴブリンの様子を見てくれている。
「サクラ、書記を」
「承知しました」
レイアの後ろで立っていた咲良に彼女は指示を出す。それを聞いた咲良は何処からか白い紙を取り出して、右手にはペンを持っていた。
「国内にエネルギー作成機関の設計書の作成と、実際の計画を立てるよ。思った事とかあったら意見を出してね」
さて、本格的な計画を立てようか。
計画を練ってる時の話は飛ばします。
理由:本当に早く話を進めたい。




