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第7話-資源開発(計画段階)②

 最果ての地とやらに足を踏み入れた。その場所には常にピリ付いた空気が漂っていた。不思議と持っている刀に力が入る。


「雰囲気が怖くない?」


 美玲がそんなことを言って自らの腕を抱える。その気持ちが理解できるくらいには“最果ての地”と呼ばれるこの場所は異常に感じられた。

 美玲曰く前人未踏の地らしいし、踏み入れただけで納得すらしてしまった。


 少し森の中に足を進めた。


 緑色の鼻や耳が尖っている人型が俺達の前に姿を現した。数も結構いる。


「ぎゃっぎゃっ」


 言語能力は無さそうだ。


「なんかちょっと気持ち悪いかも」


 緑色の人型は嘗め回すような視線を彼女に向けた。


「知ってる?」

「ゴブリンって言うらしいよ。ただ、ゴブリンって雑魚生物の一つだって言われてるから、この地になんて居ないはず。つまり、こいつらは普通じゃない」


 美玲の解説を聞いて予想も妥当だと思った。さて、人の女にそんな視線を向けたんだ。死ぬ覚悟くらい出来てるよな?


「まずは一人」


 ゴブリンを斬り捨てた。


 どうやら彼らは武器を扱うことは出来ても、武器の扱いに特化しているわけでは無さそうだ。また一人、また一人と刃を滑らせていく。


 もう一本武器が欲しいな。というか、長物が良いな。


『薙刀をご用意します』


 漆黒の刀が手元から消えて、漆黒の持ち手に刃を身に付けた三メートルはありそうな薙刀が姿を現した。

 真っ黒って事は不死者をも殺せる武器なんだろうな。


 薙刀の刃は約一メートルくらいあって、それで纏めてゴブリン共を斬り飛ばす。一振りにつき五体ずつ胴と腰を泣き別れにしていく。


 薙刀を大振りすると、それなりに大きな隙が出来て残ったゴブリンに襲われる。そのゴブリンが持っていた棍棒を薙刀の持ち手で受けて、弾いて、更に返す刀で刃を振るった。ゴブリンとその後ろに居るゴブリンも纏めて刈り取る。


 ちらっと美玲の方を見ると、嫌そうな顔をして近寄ってきたゴブリンの眉間にだけ銃弾を撃ち込んでいた。


 やがて、敵を全て刈り取り終えた。


「ふぅ……」

「どうだった?」

「強いのか弱いのかわからない。俺は困らないけど」


 刀もそうだし薙刀もだけど、上手く使えるなら防御姿勢に使われた武器ごと斬り裂けてしまう。ゴブリンが持つ粗雑な棍棒程度では脅威にすら成り得ない。


「「!?」」


 大地が揺れる程の咆哮が聞こえた。俺達は息を潜めながら咆哮がした方向に向かって足を進めた。


 森を潜り抜け、やがて瞳に映ったのは高さ約十メートルはありそうなトカゲだった。刀や薙刀で戦うのは難しい気がするな。


 指輪、何か良い装備はないか?


『ビーム兵器は如何でしょうか?』


 あー、あの大分前に使ったやつ?


『いえ、改良された物です』


 良いよ。任せる。


『承知しました。ビーム薙刀を右手にロードします』


 そうして現れたのは持ち手しかない薙刀だった。軽く振り回してみると重量が感じられないのもあってちょっと戸惑った。武器ってもっとずっしりしてるもんだからさ。

 ビーム薙刀に付属しているボタンを押すと、先程まで使っていた黒い薙刀と同様の形のビーム状の刃が出現する。近間にあった木に叩き付けるとビームの熱で溶けて折れていった。これならあのトカゲの脚くらいは簡単に斬り飛ばせそうだ。


「ちょっと行ってくる」


 美玲を置いてデカトカゲの前に俺は姿を表す。挑発の意味も込めてちょこまかと前を動き回った。すると、デカトカゲはちょこまか動く俺に視線を合わせて、口をがぱっと開いて頭を突っ込んできた。

 突っ込んできた口をサイドステップで右前に潜り込むように躱して、トカゲの顎関節にビーム状の刃を叩き付けた。じゅっと肉が焼ける音とちょっとだけ美味しそうな香ばしい匂いがした。

 トカゲは悲鳴を上げてパニック状態になった。まさか反撃をもらって、よもや口が使えなくなるなんて思ってなかったんだろうな。パニック状態になって振り回された頭にぶつかって俺も吹っ飛ばされた。

 ぶつかった衝撃を逃がしながら、上手く大地に着地した。


 敵の頭は俺の遥か上空へ逃げてしまい、武器の届かない場所から尻尾を振り回して叩き付けて来る。それをなんとか躱しながら次の一手を考える。

 刀を敵の身体に突き刺して強引に上ろうにも、登っている最中にトカゲに身体を掻かれたら潰される自信しかない。

 一気に駆け上がろうにも、少しでもその間にトカゲが動いたら振り落とされるだろう。


 あー、こういう敵と戦う時にアマたんはあの能力を俺に与えたのか。


 俺はアマたんから受け取ったスキルを始めて使った。その名も“空歩”だ。名前の通り空中を歩くことの出来るスキルで、こうやって背丈が足らない敵にはとても有効なスキルだ。

 ぐっと、力を入れていつもの鍛錬と同じ要領で足を前に出す。地球で“縮地”と呼ばれている技法を“空歩”と掛け合わせて一気にトカゲの頭を肉薄にする。


 ビーム薙刀をそのまま頭に突き刺した。きっちりと奥まで突き刺さったそれはトカゲを絶命させるには充分過ぎた。特に抵抗らしい抵抗はなく、あっさりと巨体を地面に倒れ伏した。


「これ、全長何メートルあるんだろ」

「さあ?」


 二、三十メートルくらいはありそうだけどな。


「こんな大物を倒したのに、陵は何が不満なの?」

「んえ」


 美玲の指摘に思わず破顔した。


「険しい顔してたよ?」

「んー」


 アマたんから貰ったスキルで敵を倒しちゃったからな。自分で積み重ねた技術ではない物を使った事に酷い違和感があった。

 あと、ビーム兵器を使った事もかな。実体の無い武器って相手を切った感覚がないから違和感が凄いんだよ。ビームの刃は硬度もないから武器で攻撃を受けたりすることも出来ないし、逆に自分で触れたら大火傷だしな。


「なんか良い武器無いかな」

「えー?」

「正確には良い刀が欲しいんだけどさ。どんな敵にも対応出来る最強の武器が欲しい」

「めっちゃ厨二病っぽいこと言い始めるじゃん」

「そんなつもりは無いんだけどなあ」


 その時々に武器を使い分けるってのは武器本来の使い方の一つでもあるから、そんなに可笑しなことでもないんだけどな。実際、今用意されている武器で敵を倒せなかったことはないし。


「取り敢えず、こいつは持って帰るか」

「だねえ。これ魔物なのかな?」

「さあ」


 そもそも魔物の定義ってなんだよって感じなんだよな。人を含めて魔物以外も魔法は使えるから大真面目によくわかってない。


「もっと奥に行ってみるか?」


 指輪に死骸を仕舞って美玲に問い掛ける。


「だね。ついでに拠点に出来そうな場所も探したい」

「おっけー」


 多くの魔物が居る中で、時には倒して時にはスルーしてを繰り返して森の中を彷徨った。


「美玲」

「?」

「さっきから見られてる気がする」

「へえ?」


 その視線は獲物として見ているわけでもなさそうだ。どちらかと言えば“あいつらはなんなんだろう?”という不安と疑問が入り混じった視線だ。

 視線を感じた瞬間に、その方面に向かって視線を投げ返すも誰の姿も見えやしない。


「誰も居ないな~」

「んー、なんだろうね?」


 美玲はピリ付いた大森林の中で可愛くコテンと小首を傾げた。


「視線の方に走ってみても良いかな?」

「良いよ。でも、置いてかないでね?」

「置いてくわけないだろ」


 俺達は向けられた視線を感覚で追いかけた。すると、視線が切れたように感じられた。……逃げた?


「見失ったの?」

「元々、見つけてはいないけどな」


 立ち止まって辺りを見回してみるも、何も見当たらない。


「この大地に住んでる人なら、案内役としてうってつけなんだけどね」

「だよなあ……」


 人でなくても、意思疎通さえ出来れば文句はない。


「見つからないか」

「いや、待って、あれ」


 美玲が指差した先には森が少しばかり開かれた場所があって、そこには大量の魔物が飛来しているのが見えた。

 さっきまであんなに飛んでなかったのにな、何で急に集まってきたんだ……?


「まさか、追いかけてた奴が関係してるのか?」

「取り敢えず行ってみようか」


 開かれた場所に躍り出る前に少しだけ顔を出して覗いてみる。こんな大量の飛来した動物に襲われたら敵わないからな。いや、倒せるだろうけど。


「どう?」

「どうって言われてもなあ」


 あっ、さっき見たゴブリンと同じ姿の奴が居るな。多分同種のゴブリンなんだろう。ちょうど宙に浮かぶ動物の餌食にされようとしていた。


「ゴブリンが居る」

「あー、ゴブリンか。あいつらはあんまり頭が良くないらしいからスルーしても良いかも」

「そうなんだ」


 何故かさっき戦ったゴブリン達とは違う気がして、彼女の言葉を聞いても“はいそうですか”と視線を外す気になれなかった。


「お、まじか」


 そのゴブリンはさっき戦ったゴブリン達とは違って、しっかりとした金属製の剣を取り出した。てかそもそも、さっきのゴブリンは服を何も着てなかったのに、今回のゴブリンはちゃんと衣類を身に付けていた。


「どしたの?」

「さっきのゴブリンとは全く違いそうだぞ」

「見せて見せて。お、へえ?」


 美玲はぎゅっと俺に身体を押し付けてきた。


「一人っぽい?」

「かな?」

「助けようか。私の直感が助けた方が良いって言ってる」

「……美玲の直感を信じるよ」


 俺達は多くの動物が飛び交う中心へ、身軽に飛び込んだ。


 **


「よっし」


 太陽王モードになって分身と本体で合計九人になる。


 飛翔している動物が多過ぎるから、一発より数で勝負だ。


 それぞれが二丁の光線銃を持って躊躇いなく宙を舞う獣達を撃ち抜く。敵はドラゴンっぽいのも居たり、他にも色々と居たけどよくわかんないから、全部撃ち落としてからじっくり観察しようかな。


「陵、前衛」

「わかってる」


 撃ち落とした獣の中には、地べたに這いつくばってでも私を食らおうとする奴等が沢山いる。その執念には敬服するよ。……まあ、陵を超えられるわけがないんだけどね。


 陵は光線兵器でザクザクと斬り裂いて行く。


 下は気にせずに、次々に光線を当てて落としていく。


 やば、撃ち漏らし多過ぎて前衛が陵だけじゃ対応しきれなくなってる。


 分身を四人、地上に向けて光線銃を向けさせる。


『サポートします』


 指輪の声と共に、ライフルドローンが二十機ほど空を舞う。


 指輪にドローンの操作を任せて、私の最大火力を宙にぶつけ続ける。


「キリがない」

「……美玲の護衛に回る。遊撃はしない」


 陵は一人で走り回るのが逆に非効率だと考えたのか、私になるだけ集中した動物ばかりを狩り始めた。


 私に近付いた獣を彼は一瞬で捌く。それはほぼほぼ達人技に近い。


「おい、あれ」

「天使……?」


 今まで飛来していたのは獣ばかりだったのに、倒して撃ち落として、段々敵の勢いが弱まってきた所で現れたのは純白の翼を持った天使だった。


「あれ、敵だと思う?」

「……敵だろ」


 陵の判断基準はわからない。けれど、彼は敵だと断定した。空歩と縮地を組み合わせて天使を肉薄にして斬り裂いた。

 斬り裂いた天使一人でこの戦いが終われば良かった。陵は十人の天使に囲まれた。


 分身を一体だけ陵の支援に回す。これはスナイパーとして影に潜ませる。どうせ、乱戦の中だしたった一人同じ顔が居なくなったってバレやしないだろう。


 **


「良いね」


 更にまた一人斬り捨てた。空中だけあって少し身動きがなれないが、それでも残り九人くらい危なげなく処理できる。

 こいつらは人型なだけであって中身に意思を感じない。でなければ、斬られた時に苦悶の表情の一つや二つ浮かべたって良いだろう。それに仲間がやられたってのに表情もピクリとも動かない。


 ……つまり、何者かの人形なんだと直感的に理解した。


 天使は全員が槍を持った。その一方で俺は左手にビームソード、右手に漆黒の刀を手に持つ。天使たちは規則正しいリズムで俺に対して槍を向ける。それなりに綺麗で動きも速かった。


 ……でも、俺にとっては遅い。


 刀で一人、ビームソードで一人、同時に斬り捨てた。斬り捨てた直後に他の天使の槍の刃先が俺に向けられる。


 刀で鍔迫り合いはご法度だが仕方ない。


 突かれた槍の一本を刀で受けて流して他の槍に絡ませる。


 と同時にビームソードを天使に投げ付ける。光輝いた刃は天使の首を焼き切った。


『フル装備します』


 指輪の声と共に、背中にタイプの違う西洋剣が二本背負わされて左腰にレイピアが携えられる。右腰には別の刀が刺さっていた。


 装備が身に纏われる間に、空いた片手で槍を引き寄せて自らの身体を天使の目前まで近づける。天使は誰一人として鎧を装備していない。

 素手を槍状にして心臓を貫いた。通称貫手と呼ばれるそれを足を使って強引に引き抜き、後ろから振るわれる槍を逆上がりの要領でくるりと空中を回転して躱す。

 天使の槍の上に足を乗せて体重を掛けて、槍で防御姿勢を取れないように強制的に剥がす。右手の刀で斬り裂いた。

 と、同時に背中の剣を抜く。斬り裂かれた天使の後ろから迫ってきた槍の穂先に剣を叩き付けた。

 流石に相手の力が強すぎて剣が宙を舞う。……というよりも、手首がやられかねないからさっさと手を離した。

 でも、その一瞬の刃の競り合いで相手の進行方向を僅かにずらした。それだけでその個体を斬り裂くには充分過ぎた。


 残り四人。


 まるで示し合わせたかのように四方向から槍が突かれた。こういう時は一方向の攻撃だけを捌いて前進するのが正解だ。

 二本の刀で槍を十字に抑えて下に向けるのと一緒に、ハンドスプリングの要領で一回転してそのまま斬り付けた。


 あと三人。


 左手に持っていた刀を投げつけて、頭に突き刺す。


 あと二人。


 縮地で相手の顔面に掌底を叩き付ける。そのまま遠心力を使って残りの一人に叩き付けた。


 重なった二人にまとめて刀を突き刺して、そのまま横に強引に斬り裂いた。


 これで天使は全員倒した。その頃には美玲の方も獣の掃討が終わっていた。


 **


「おかえり」

「そっちは?」

「ん、問題無し」

「良かった」


 さて、やっと本題に移れるね。


「君、只のゴブリンじゃないよね」


 そのゴブリンは明確に人間が使うような剣術を使っていた。なんなら、今は両手を挙げて降伏の姿勢を見せている。


「言葉は伝わる?」


 私達の言葉は言葉を知らなくても理解できる。指輪が言霊に変換して相手の精神に干渉しているから。


 そのゴブリンは強く頷いた。


「そう。君は普通のゴブリン? って言っても、多分わかんないか」


 その個体が異常なのと、その個体が自らを異常であると認識できるのとはまた別問題だ。


「ねえ、何でこの場に残ったの? さっき逃げれば良かったじゃん。それとも、逃げられない理由があったの?」


 私の言葉を聞いて、そのゴブリンは正しくたじろいだ。



次から二、三話ほどゴブリン君の話を掘り下げます。


追記、一話で足りそう。

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