第7話-資源開発(計画段階)
「ふぅん、そうやってやると出来るんだ」
朝、目を覚ましてから送ったメールがアラティナさんから返ってきた。
魔力溜まりが出来て時が経つとダンジョンコアが生まれるらしい。ここまでは既存の情報と相違が無い。
ここからが新情報だ。魔力溜まりの発生メカニズムって奴だね。
一言で言ってしまえば、魔力が溜まれば勝手に生み出されるモノらしい。じゃあ、勝手に生み出されるとはどういう状態か。
一つ目は強大な魔物が力尽き、誰にも処理されなかった状態。
二つ目は多くの小さな魔物が一気に力尽き、誰にも処理されなかった状態。
三つ目は人々の巨大な戦争の後に、大量の戦死者が出て処理されなかった状態。
つまり、ちゃんと死者を供養しなかった場合に起こるケースが多いらしい。
死者は腐敗すると自らに抱えた魔力を自然界に垂れ流してしまう。多少の量であれば大地や木々が吸ってしまうから問題がないんだけど、吸いきれなくなると魔力溜まりになって、やがてダンジョンコアが生み出されるんだって。
つまり、魔力溜まりを作るには魔物の死骸を集めれば良いってことだ。ただ、ここにも書いてある通りで地べたにそのまま魔物の死骸を置いても、あんまり魔力溜まりは出来ないってことだ。大地が魔力を吸っちゃうからね。
魔力を吸わない物質を集めるのが先かな。魔物を狩っても魔力が大地に吸われたら勿体無いよね。
「ってことで、魔力を吸わない素材に心当たりある?」
「何が“てこと”なんですかね??」
リビングで書類整理をしていたレイアに聞いてみた。
「魔力溜まりを自分達で作れたら良いなって思ってさ」
「魔力溜まり、ですか。私は物造りに詳しいわけではないので、その手の素材の話はよくわからないですね。少なくとも有名な物ではないと思います」
「そうなんだ。誰か知ってそうな人いるかな?」
「ドワーフ族なら知ってるかもしれません。その手のプロですし」
「あー、物作りが得意とか言ってたもんね」
レイアの提案から、私はドワーフ族の住居に訪れた。
「王様っ!?」
「やあ、ごめんね。ちょっと相談があって」
私の姿を見るなり速攻で彼らは膝を折った。私は近所の家に遊びに行くくらいの感覚だったけど、家に急に王様が来たら驚くよね。
彼らは引っ越したばかりには無かったはずのテーブルに私を案内してくれた。この短期間でこんな立派なテーブルを作ったんだ。凄いね。
椅子に座って彼らの長を待った。
「今回はどういったご用件でしょうか?」
ここに住まうドワーフ族の長であるグー・スミスが私の向かいに座った。
「聞きたいことがあってね」
「ほう」
「魔力を吸わない素材を探してるんだけど、その素材がわからないんだ。教えてくれたりしないかな?」
「素材がわからない。えっと、ミスリルとかオリハルコンとかそこらの物質を知らないという事でしょうか?」
「そういうことになるね」
「承知しました。おい、断魔材に使われる鉱石を全部持ってこい」
グーは周りに歩いていた一人のドワーフに指示を出す。指示を出された彼女は三つほど鉱石をテーブルの上に置いて何処かに行ってしまった。
「これらは全て魔力を通さない、吸わない素材になります」
「へえ。でも、三つもあるんだね?」
「はい。どのような用途に使うかによって使い分けます。
魔道具によく使われるのはこちらのアンチ・マギアと呼ばれている金属で、こちらは硬度が高くないので細かいパーツを作るのに向いています。
次に紹介するのはアンチ・マジックと呼ばれている金属です。こちらは硬度が高く対魔用の鎧に使われることが多いです。
そして最後に、こちらは魔力が溜まり過ぎただけの鉄です。どんな素材でも一定数の魔力を吸収します。こちらは吸収できる許容量を超えた状態になりますね」
「なるほどね。この金属の中で一番手に入れやすいのはどれ?」
「魔力が溜まり過ぎただけの鉄が一番手に入りやすいです。ですが、魔力が溜まるということは勝手に放出もするので、あまり道具に使っている方は居ないですね」
「うーん。じゃあ、聞き方変えるね。アンチ・マギアとアンチ・マジックって手に入れるのは難しいの?」
「そう……ですね。あまり市場に出回る事は少ないかと」
「何処に行ったら取れるとかわかる?」
「確実に取れるであろう場所はありますが……」
「あるんだ。どこ?」
「最果ての地、と呼ばれている大地で何人たりとも足を踏み入れる事は許されません」
「どういう理由で?」
「人が住める環境じゃないんです」
「それは気温とか湿度とか、環境的な話?」
「いえ、そこに住まう生命体が我々が住まう大地に比べて強すぎるのです」
「ふうん。シルフィーネ」
グーの話を聞いて“最果ての地”がどんな場所かをシルフィーネに訊ねる。シルフィーネ曰く精霊の力すら及ばない場所らしい。
最果ての地の周辺に私達を運ぶことは出来るらしいから、ちょっと陵を誘って行ってみようかな。
「最寄りの国の名前は?」
「竜王国バーンドラーン。竜人族の国です」
「竜人?」
「はい」
「へえ、面白いね」
竜人族と国交を結べたりしたら面白いかも?
「よし、ちょっと陵を誘って行ってみるよ」
「え、ちょっ」
「まあ、危なくなったらすぐに帰るから。シルフィーネ、お願い出来る?」
「え、ええ、良いけれども」
シルフィーネが戸惑うってことは、本当に危険な場所なのかもしれない。
「グー、ありがとう。あ、もし素材が揃ったらさ。君達に製作依頼を出しても良いかな?」
「そ、それはもちろんです」
「ん、ありがと。じゃあね」
ドワーフ族の家を後にした。レイアに今後の予定を伝えるために自分の家に帰った。
「……アラティナさん、何をしてるの?」
リビングの扉を開けると、そこにはアラティナさんと膝を折ったレイアがいた。いや、マジで何してんの?
「レイアが良いと言ったので、眷属にしようかと」
「おいちょっと待て」
なんか私の知らない所で勝手に話が進んでるんだが?
「……脅してないよね」
太陽王モードを全開放してライフルドローンを展開する。最高神と戦うのに抵抗があるわけないじゃんか。
「ミレイさん、脅されてないですよっ!!」
「ホントに?」
「ホントですっ!! だから、武器を仕舞ってください」
「神様って簡単にたぶらかして来るよ? なんて言われたの?」
「私の魔法はアラティナ様と相性が良いから、眷属になったら色々と便利になるって」
「それもう完全に詐欺の言葉じゃん?」
これはアラティナさん完全にギルティじゃない?
「違いますっ!! 空間魔法は私の創造と相性が本当に良いのです。というか、空間魔法が無いと私の眷属になることは不可能なのです」
「……へえ?」
「空間魔法は空間を創造することが出来る魔法なのです。そしてそれは、物質を創造するよりも遥かに重要度の高い魔法なのです。良いですか? 物質は空間が無ければ存在できません。なので、物質を創造するという事は空間を創造できないと話にならないのです。
ですので、もし良かったらと……」
「眷属になったら、色々と制約もあるよね?
私はアマたんが友達だから、アマたんのお願いを聞くことに不満はないけど、レイアはそうじゃないよね? そもそも眷属になったらアラティナさんに右を向けって言われたら右を向かなきゃいけないんだけど、そこはレイアは正しく理解してるの?」
私の太陽王モードもそうだ。アマたんが右を向けって言ったら私も右を向かなきゃいけないんだ。それくらいに眷属になるってのはリスクの大きいモノだ。
私は眷属化による拘束をひっくり返す手段を持ってるから、それはリスクに成り得ないけど、レイアにそんな手段があるわけがない。
「で、でも……」
「私とアマたんを見て言ってるなら、そもそも、私はアマたんの拘束から逃れられるからね」
アマたんもその方法には気が付いている。私達にしか出来ない方法だから、誰の参考にもならないんだけどさ。
「アラティナさんが絶対にレイアに強制しないって呪いを背負うなら受け入れても良いけど、じゃないならやめときな」
「うっ……」
「そんなに言わなくても……」
「事実だよね? 異世界召喚もそうだったけど、この世界の神様のことを私が信用してると思うの?」
「それは……」
そもそも大前提として、アラティナさんは只の知り合いでしかない。
「はあ、まあ良いや。レイアがそれでも良いって言うなら私は止めないよ」
「……はい」
「それから、ちょっと最果ての地に行ってくる」
「…………はあっ!?」
それだけを言い残して私は家を出た。そのまま陵が居るであろう道場に向かう。
道場に顔を出すと、陵はちょうどキラとジェネに手取り足取り教えてる最中だった。
正拳突きと剣の素振りのフォームの訂正をしてた。
「美玲、どうした?」
彼は私の姿にすぐに気が付いた。
「ちょっと行きたい所があるから付き合って欲しいんだよね」
「んー、わかった。行こうか」
何も聞かずに彼は頷いてくれた。
「ちょっと、陵借りてくね~」
シルフィーネに指示を出して、最果ての地とやらの寸前まで送って貰った。時速千キロとか出てたんじゃないかな。
『ヤマトから最果ての地まで約三千キロありました。マッピングを終了します』
めっちゃ地面の流れが速かったのに、三時間もかかった事に驚きだよ。
最果ての地は最寄りの竜王国まで海で隔てられていて、その島の植生や生物たちが強引に隔離されているように思えた。
そこに生えている植生は、この世界に来てから始めて見る物しかなくて全てが禍々しく感じられた。地球で言う所のサバンナの木々が全て二十倍くらいになった感じで、スケールの何もかもが違かった。
さて、下見をしようか。




