第6.5話-俺達の時間
「電気、電気、電気……」
寝室に戻ってから、美玲は思考の海を泳ぎながらぶつくさと呟き続けていた。長い間付き合ってきたからわかるけど、滅茶苦茶真剣に考えている時の顔だ。
「電気……、あれ、いや、別に電気である必要はなくて……」
「美玲、せめて寝間着に着替えようか」
「あ、うん」
着替えながらも、まだ思考の海に沈んだままで独り言を永遠に呟き続けている。
「美玲、寝るよ?」
「ちょっと引っ掛かってることがあって、あともう少しだと思うから」
「……はあ、はいはい」
彼女の台詞は全くあてにならない。こうやって言ってるくせに、気が付いたら次の日になっている事もある。
「美玲、おいで」
ベッドに座って、彼女に向けて腕を拡げる。
「ん……」
心ここにあらずな雰囲気で、彼女は俺を背もたれにして座った。
「程々にしておけよ?」
「ん……」
返事も全てが何処か空虚で、本当に真剣に考えているのがわかる。そんな彼女も可愛いと思ってしまうのは、俺が彼女の事を好き過ぎるからだろうか。
彼女の邪魔にならないようにそっと抱きしめて、頭をゆっくりと撫でる。
「ん……」
思考の海を泳いでいた筈の彼女が帰ってきた。
「おかえり」
「ただいま」
「何か良い案でも浮かんだ?」
「ダンジョンコアを自分達で作れないかな?」
「いや、わからないけど」
「アラティナさんにダンジョンコアの作り方を聞こうと思う」
「でもあれって、アラティナさんが作ってるわけじゃないだろ?」
「でも、仕組みは知ってそうじゃない?」
「あー、確かに」
でも、なんでダンジョンコアなんだ?
「電気の代わりに魔力で色々出来ないかなって思ってさ。この世界って、大体どんな人でも魔力を持ってて、色んな物質に変換されるじゃん?」
「俺は出来ないけど、火とか水とか見たことはあるな」
「じゃあ、電気に変換も出来るんじゃないかなって」
「でも、それって誰かがずっと魔力を放出してないといけないんじゃないか?」
「それなんだけど、そこがダンジョンコアの話に繋がってくるんだよね」
「ふぅん?」
「ダンジョンコアって魔力溜まりから出来るって言ってたじゃん」
「あー、そんな話あったなあ」
「じゃあ、その魔力溜まりを意図的に引き起こせるなら、私達はエネルギーに困らないんじゃないかって思ってね」
「なるほど。確かにそれはそうかも」
「でしょ?」
確かに言われてみればそれで行ける気がする。本当に行けるのかはわからない。
「アラティナさんに連絡出来るようになったから、明日聞いてみよっかな」
「いつの間に」
「指輪便利だよね」
彼女を抱えたまま、ベッドに倒れこんだ。
「もう寝ない?」
「もうちょっと可愛がってほしいなあ……なんて」
「良いよ」
彼女の額にそっと口づけをする。
「あんまり二人だけの時間が無いからさ、ちょっと寂しいなって」
「俺もそれは思うよ」
彼女の唇が俺の唇に重なった。
「あ、ちょっとジワっと来たかも」
彼女は俺の上に座った。そして、ボタンに手を掛ける。
「疲れてないの?」
「疲れてるけど、それとは別なんだよね」
服をベッドの上に散乱させる。
「はあ……」
彼女の腕を取ってグルンと回った。俺と彼女の位置が逆になる。
「疲れてるんだから、俺に抱かせてくれても良いんじゃない?」
「疲れてるからこそ、滅茶苦茶にされたら死ねるんだけど?」
「俺がそんなこと、出来ると思ってる?」
「……ちょっとだけ滅茶苦茶にされたい願望はあります」
ちょっと顔を赤くして、視線を彷徨わせた彼女の独白に心臓をしっかりと鷲掴みにされた。
ボタンをはずして、服をベッドの端に投げる。
「ちょっと、ヤバいんだけど」
「何が」
「カッコよ過ぎて無理」
「美玲も可愛いよ」
「今言うなよおおお」
あんまり激しくならないように、けれど、しっかりと身体を重ねた。
「愛してる」
「愛してる……よ」
彼女の温もりをゆっくりと喰らった。




