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第6話-方針転換③

「よっす、みっちゃん」

「アマたん、珍しいね?」


 天照大御神ことアマたんは、食事を終えたタイミングに突然やってきた。


「まあね。珍しく僕を頼ってくれたからさ、折角だから寄ろうと思ってね」

「そっか」


 ルビアの件をアマたんに相談してみたら、メッセージではなく本人がやってきた。


「レイア、咲良を下げて貰って良い?」

「はい。そういうことですので」


 私、陵、レイア以外はリビングから退室してもらった。人に聞かせられない話をポロっとしかねない存在だから、私達も気を遣うんだよね。


「はいおいで」


 アマたんが手招きすると隣に何処からか光が差し込んできた。光の中から現れたのは、この世界の最高神であるアラティナさんだった。


 あれ、もしかして迅速に私のお願いを聞いてくれた感じ?


「ルビアを呼んできても良い?」

「そうですね」


 アラティナさんが頷いたから、分身を一人出してルビアが住んでいる家に走らせた。


「こんなに早く対応してくれるとは思わなかったよ」

「それ以外にも、貴女は私に聞きたいことがあるでしょう?」

「んー、まあ聞きたい事はあるけど、別に聞かなくて良いかなって思う事が大半かな。何でもかんでも聞いたらつまらないじゃん?」


 別に強がってるわけじゃない。ってかむしろ、神様なんて大それた存在に質問してあーだこーだ恩を売ったと思われるのがだるい。天罰とか言われたら笑えないよ。

 アマたんは友達だから……って思うけど、アマたんですら私はそんなに安易に頼らない。これは友達だからこそって感じだけどね。

 神の美容アイテムにはお世話になってるから、今更感はあるけどそれでもやっぱりね。


「ですが、そちらの若いダンジョンマスターは聞きたいことがあるようですよ?」


 アラティナさんが視線を向けた先には、私の後ろに隠れていたレイアに向けられた。


「はあ、まあ良いよ。何が聞きたいの?」


 レイアに聞きたいことがあるって言うなら仕方がない。


「ダンジョンって何が出来るのか、知りたいんです」

「ダンジョン……ですか」

「はい」

「それなら、レイアさんに知り合いのダンジョンマスターを紹介しましょうか?」

「えっ!?」


 私の影に隠れたレイアはビクッとした。

 ダンジョンマスターの知り合いが居るってことは、アラティナさんは頻繁に下界に関わってるのかもね。


 アラティナさんが私に“何か不味い事をしたか?”と視線を送ってきた。首を横に振って返事をする。


「でも、見返りは……?」

「要りませんよ。ここで見返りは、なんて言ったら怒るでしょう?」

「美味しそうな餌を置いて見返りを求められたら、確かにちょっと腹立つかな」


 レイアを誑かしたなって思わなくもない。


「でも、タダで貰うのは違うと思うんだよ」


 神とは言え、タダで物事を傍受すべきではない。例え私達に比べて超常的な存在であったとしても、彼女らにも考える頭があって感情があるのだ。

 私だって、タダでやってとか言われたら嫌だもん。例え簡単に出来ることであってもね。


「わかりました。では、その方に口利きだけしておきます。行けとは言いません」

「その前に疑問なんだけど、この世界の一番上の存在にそれ言われて、行きませんって選択を出来る存在が居るの?」


 最高神に"この人が君に会いたいらしいよ"って言われたら、否が応でも会いに行かないとってならない?


「お恥ずかしながら私はあまり威厳が無くてですね」

「その結果が異世界召喚、でしょ?」

「アマテラスっ!? 勝手に言わないでくださいっ!!」


 アマたんが茶々を入れて、アラティナさんが顔を赤くして叫んだ。

 まあつまり、甘い顔してるから勝手に"異世界召喚"なんてされるんだぞって感じかな?


「うーん……」


 そうやって言われてもなあ……って感じなんだよね。

 アラティナさんが祀られている宗教があるんだけど、その宗教の人達はアラティナさんに言われたことだと死に物狂いでやるらしい。

 そうやって神の言葉は絶対だって人も存在してるから、安易に首は縦に振れない。


「あの、本当に自分で言うのもあれなのですが、私は下々の者にはナメられる事が多くてですね」

「それ、自分で言っちゃう?」

「はい。なので、そこまで気にしなくても大丈夫ですよ」

「……んー、わかった。うん、あくまで伝えるだけってことね」


 そこまで粘られる断るのも難しい。明らかにダメって理由も無いからね。

 アラティナさんの知り合いが来たら、ちゃんと饗すことにしよう。神に言われてタダ働きになりましたは可哀想だからね。


「はい」

「じゃあ、よろしくお願いします」


 レイアと一緒に私も頭を下げた。



 ルビアの家に走らせた私が帰ってきた。後ろにはルビアを連れていた。

 彼はアラティナさんを見ると、すぐに片膝を折った。

 彼がこんな事をするとは思わなかったから、ちょっと驚いてる。


「神龍の力を受け継ぎし者よ。此度は私に何か用があると聞きましたが……」

「十年前の大災害について聞きたいのです」


 十年前の大災害?

 流石にこの世界の話は私にはわからないなあ……


「十年前。世間一般的に言われている呼称で言うならば、ガイアルライズ大災害のお話ですか?」

「はい。

 ……俺はあの時、最愛の人を失いました。

 それから、それを引き起こした張本人を殺す為に、ひたすら俺は剣の腕を磨き、神龍の力を受け継ぎ、ここまで強くなりました。

 ですが、復讐するべき相手がいつまで経ってもわからないままなのです。どこを旅しても痕跡までは見つかりますが、あともう少しの所で消失してしまう。

 最高神アラティナ様であれば、その犯人を知っているのでは無いですか?」

「待って。大災害って言うくらいだから、それって勝手に起こったモノなんじゃないの?」


 思わず口を突っ込んじゃった。

 大災害って呼ばれてるモノが人によって引き起こされたなんて、いったい何処の陰謀論なの?


「いえ、ルビアの言う通りです。あれは人為的……言い換えれば神為的に起こされたものです」


 けれど、私の疑問を余所にあっさりとアラティナさんは肯定した。そして、この感じだと犯人を知ってそうだ。


「女神クリスタ、それが犯人の名です」


 私達はその犯人を知っていた。


「……またその名前か」


 陵は小さく呟いた。

 異世界召喚を行った聖王国ブライドリースの主神として称えられる女神の名前と、大災害の犯人の名前が同じだったから。


 なんか、その女神って色々とやらかしてるんだね?


「その女神ってなんなの?」

「私にもわかりません」

「いや、わからないって……」


 この国の最高神アラティナが知らないって、どういうことなんだろうか。


「みっちゃん、神が全部を知っているわけじゃないんだよ」

「あれ? そうなの?」


 アマたんが何でも用意してくれるイメージがあるから、神って割と何でも出来るってイメージが強い。


「所詮神も一個体の存在でしかないからね。確かに人より出来ることは多いけど、それでも、なんでも知ってるってわけじゃないんだよ」

「……そうなんだ」

「だから、ミスもするしやらかしもするし、一個人にすら肩入れしてしまう。僕みたいにね」

「……なるほど」


 確かになんでも知ってて、なんでも出来たらアマたんは私達に武器や力を与えないよね。

 聞いたら何でも答えが返ってくると思ってた。だから、アマたんの手すらもあんまり借りないようにしてた。


「ルビア、復讐したいんだっけ?」

「……当たり前だろ」


 強く握りしめた彼の手はギチギチと音を鳴らす。部屋には殺意が充満して息苦しく感じた。


「クリスタって女神、私達が倒そうとしてる敵なんだよ」


 息苦しさを無理矢理振り払って、私はルビアに言葉を投げる。


「だから、私達と手を組もうよ。私達も絶対にクリスタって女神はぶっ潰すって決めてるんだ」


 ルビアが一緒に戦ってくれるなら心強い。


「良い。俺一人で今から殺しに行く」

「一人で勝てるわけないでしょ? 陵に勝てないくせに、イキってんじゃないよ」


 今の陵でも旗色が悪いってのが、アマたんとアラティナさんの評価だ。それなのに、陵に勝てないルビアが勝てるわけない。


 いつどのタイミングで女神クリスタと聖王国ブライドリースを叩き潰すか、それは私だって悩んでるよ。


「聖王国ブライドリースとの戦いは絶対に負けられない。私には負けられない理由があるから。

 だから、今すぐに戦いに行くんじゃなくて、絶対に負けない国を作って戦うしかないんだ。

 私達以外の力を使って、私達が仮に負け掛けてもひっくり返せるような、ね」


 私達だけでも倒せるかもしれない。でも、倒せなかったら諦めるの?って聞かれたらそれは違うって答える。

 倒せなかったらじゃない。絶対に倒すための準備が必要なんだよ。


「力を貸してよ」

「……考えさせてくれ」

「まだ私達は戦わないから、存分に迷ってくれて良いよ」

「……」


 ルビアは黙ったまま外に出て行ってしまった。


「みっちゃん、良かったの??」

「良いも悪いも、こうするしかないよ」


 私達が強制出来るような話じゃないからね。


「さて、これで話すべきことは終わりかな?」

「私は特に無いけど、アラティナさんはあったりする?」

「私は……いえ、()()ありません」


 態々気になる言い方するなぁ、この神様。


「私達は知らなくて良い事なんだね?」

「はい」

「ん、わかった」


 知らなくて良いと言われてしまえば、もうそれ以上に何も言うことは出来ない。


「みっちゃん、りっくん」

「ん?」「?」

「ゲームしない?」

「唐突だね」

「異世界に来てゲームって発想がなかった」

「持ってきたから。この国でも電気はあるから、オフラインゲームだったら出来るでしょ?」


 アマたんはそう言って、テレビと据え置き型ゲーム機を取り出した。

 某天堂のゲームキューブコントローラーを彼女は取り出す。でも、使おうとしているゲーム機本体はゲームキューブではない。


 ……つまり、大乱闘スマッシ〇ブラザーズをやろうとしてる?


「へえ、私に勝てるとでも?」

「新作出たんだよね。やり込んでる僕には流石に勝てないんじゃないかな」


「勝った」

「なんでだよぉぉおおおお!!」


 私、ゲーム強いからね。

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学園モノはカクヨムにて→欠落した俺の高校生活は同居人と色付く。

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