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第4話-新生グラティーナ王国?④

「レイア様、おはようございます」


 私が瞼を持ち上げた時には、リリアーナは既に目覚めていて姿勢を正していた。

 流石元王族というべきか、彼女は私の手元に来てからも規則正しい生活をしていた。

 朝に一人目を覚まして、特に何かをするでもなくボーッと私の起床を待つのが日常だった。


「リリアーナ、おはようございます。……本の一つでも置いておけば良かったですね」


 家だったら知識になりそうな本を適当に見繕って彼女のベッドに置くのが基本(いつも)だった。

 いつもとは違う場所だったから、私も慣れてなかったのか、そこまで気が回らなかった。


 こういう所はまだまだ子供だと思う。可愛くない所ばかりが子供のままだ。


「いえ、大丈夫ですよ」


 ニコリと笑い特に気にしていないと失態を流す所作は、王族の女性に求められるスキルだ。誰かに嫁ぐ前提のスキルだけど。


「エリスさんは……」

「まだぐっすりです」


 優秀な冒険者は危険が差し迫ったら、どんなに深い眠りの時であっても飛び起きるという逸話がある。

 それくらいには冒険者は眠ってる時も警戒している、そんな比喩だ。

 危険が迫ったら即座に起きるなんて、私にはどんな仕組みなのか皆目検討もつかない。


「起こしますか」


 時間を確認する。既に朝の9時を回っている。部屋に零れる光もまた朝を迎えた事を主張していた。


「では、私が」


 リリアーナはベッドから降りて、スタスタとエリスさんが座っているソファの後ろに立った。


「……むっ?」

「本当に起きるんですね……!」


 リリアーナは冒険者の逸話を知っているのか、優秀な冒険者で試してみたかったのだろう。

 エリスさんの冒険者ランクはオリハルコン、つまり、冒険者の最高峰のランクを所持している。

 試す相手に不足なし、と言った所だろうか。彼女が目を覚ましたのを見て、リリアーナは楽しそうだった。


「敵意とか殺意とかを向けられれば、もう少し遠くからでも目覚められる」

「具体的にはどれくらい……」

「この部屋の外くらい」

「……流石です」


 リリアーナは目をキラキラさせて、彼女の周りをぴょんぴょんと回った。


「レイア殿、そろそろ時間か?」


 エリスさんはそんなリリアーナから私に視線を移動させる。


「はい。リリアーナ、着替えましょう」

「……はい」


 少ししゅんとして彼女は頷いた。

 外行き用の格好を空間魔法で取りだして彼女に渡す。


「あ、ありがとうございます」


 彼女はそそくさと着替えた。いつもの彼女とは違って落ち着きがなかった。

 今日からリリアーナは王になる。きっとそれが不安なのだろう。それは別に何ら変なことではない。


「不安はありますよね」

「そう……ですね。こんな私が上手くやれるのか疑問です」

「リリアーナの素質とか能力的な面は大丈夫だと思いますよ」


 短い間ではあったけど、彼女はとても聡明な人だと思ってる。知識とか経営手腕とかはそんなに高くはない。でも、人に聞いて何が正しいのかを精査する事が出来る。

 神王国ヤマトでどうしても手が空かない時に、部下への指示を彼女に任せるケースがあったけど、なんなら私がやるよりも上手くやっていた印象がある。

 私はあくまで商人で、彼女は生粋の王族なのだと痛感させられた。


 これから私一人でそれをやらないといけないのかな。肩の荷が重い……


「レイア様がそう仰られるなら、とても自信になりますね」

「はは、安い自信ですね」


 私も外行きの格好に着替えた。


「エリスさん、お願いします」


 リリアーナの準備が終わっているのを確認してエリスさんに護衛をお願いする。これから向かうのはミレイさんが待っている謁見部屋だ。


「あいわかった。では、行こうか」


 エリスさんは扉を開け放した。


 **


「おはよう。レイア、リリアーナ」


 これからの主役がやっと顔を出した。ちゃんと眠れてたら良いけど、流石にぐっすりは難しいかな?


「おはようございます。ミレイさん」

「おはようございます。ミレイ様」


 レイアも可愛いけどリリアーナもやっぱり可愛い子だ。自分で決めたことだけど、本当に私達の国から手放さないといけないのかななんて思っちゃう。

 リリアーナは結構優秀っぽいからレイアにとって本当に痛手だと思う。レイアには今度どこかで埋め合わせをしないとなーなんて思うんだけど、どっかの王族の子女が捨てられてるなんて普通は無いからね。


「リグル様、どうしてこちらに……?」


 リリアーナは白髪の吸血鬼に困惑していた。有名な人っぽいし、彼女もこの国の王族だし、そりゃ会ったことがあっても可笑しくないよね。


「これからは俺がお前が一人前になるまで面倒を見てやる」

「らしいよ」


 乗り気なのは良い事だけど、私には肩を竦めるしか出来ない。


「あ、リグルにされて嫌な事があったら呼んでね。ぶっ殺しにくるから」

「おいおいおい!? その台詞、普通は俺が言うことだろうっ!?」

「え、知らなーい」


 陵やルビアはけらけらと笑った。レイアもクスリと笑っていて、リリアーナはやはり困惑していた。

 リリアーナは確かにこの国の王かもしれないけど、でも、私達の国の住民だったことに変わりはない。


「……仲が宜しいのですね?」

「んー、どうだろうね」


 見た目は私達より多少歳食ってるなって程度なのに、彼は何百年と生きた吸血鬼なのだ。何を考えてるのか全く読めないし、気を許したのかと聞かれたら全く許してないって答えるかな。


「まあいいや。リリアーナ、おいで」


 私は玉座から立ち上がって、代わりにリリアーナを座らせた。


「神王国ヤマトの王、美玲が告げる。汝をグラティーナ王国の王として認める」

「同じく鮮血の王が汝をグラティーナ王国の王として認めよう」


 玉座に座ったリリアーナに宣言する。ってか、鮮血の王って初耳ワード過ぎて何それ感凄いよ?


「鮮血の王、まさか……」


 レイアが何かに気が付いたのか、瞼をぱっちりと開けた。いや、今まで何にもわからずに笑ってたんかい。

 ホントにこの子は肝が太いね。偶に甘えん坊なのがギャップで私は好きです、はい。


「彼女は?」

「うちの国の参謀で、レイアって言うよ」

「紹介頂いたレイアです。かの有名な英雄とお会い出来て光栄です」


 私のフランクな感じとは対極に、とてもきっちりとしたさ挨拶をしていた。


「参謀にしては歳が若いな? 見た目通り……だよな?」

「そうだね。でも、めっちゃ優秀だから気にしないで。基本的に私達の国の窓口はこの子なんだけど……、舐めたマネしたらタダじゃおかないから」

「……肝に銘じておく」


 レイアに関してはぶっ殺すでは済まないからね。私の可愛い可愛い妹分だからね。


「ミレイさん、そこまでです。スローネ達も顔を真っ青にしてますよ」


 可愛い妹分に袖を引っ張られて周りを見回すと、スローネとゲルググは顔面蒼白にしてたし、陵とルビアは苦笑いしてた。エリスはササッと柱の後ろに隠れてた。


 そんなに怖かったかな……


「ミレイさんが怒ると、割と怖いですよ?」


 レイアがそう言って苦笑する。


「ええー……、そんなあ……」


 それは自覚なかったし、結構辛いかも。


「で、この後はどうするんですか? リリアーナを置いてさよならって訳じゃないですよね?」

「ああ、それなんだけどね。リリアーナにはこれを、レイアにはこれを持ってもらおうと思って」


 私が指輪から取り出したのは“対話の水晶玉”と呼ばれるアイテムだ。二つの対になった水晶玉を使って、どんなに離れた場所でも会話が出来るらしい。この王城の倉庫(物置)を漁りに行ったら出てきたんだよね。


「魔力を入れてみて」

「こう……ですか?」

「リリアーナも」

「は、はい」


 彼女達に渡した水晶玉が各々の魔力を吸収して起動する。


「「!?」」

「レイア様の顔が映ってますっ」

「こちらも、リリアーナの顔が見えます」


 どうやらしっかりと機能したみたい。

 この道具は遠方で戦争をした際に王族が使ったりすることもあったのだとか。

 リグル曰くめちゃくちゃレアなアイテムらしくて、超古代文明の遺跡から一対だけ出てきたのだとか。

 彼女達の手元にある一対ですら、二百年前くらいに発掘されたらしい。


 もう何個か“対話の水晶玉”が欲しいなって思っちゃうよね。私もレイアと遠方から連絡が取り合えたら楽なのに。

 今は冒険者ギルド経由で手紙を届けるくらいしか、レイアには私達に現状を知らせる手段がない。

 だから、もし何かがあった時の為に戦闘奴隷を買わせたり、神王国ヤマトとして冒険者を誘致したりしてるんだよね。


 アマたんに我儘言ってみようかな。もしかしたら……あれ、そんなことする必要ないかも。


「レイア、ちょっと水晶玉貸して」

「? はい」


 水晶玉を受け取った。


 指輪、この道具の解析出来る?


『承知しました。解析を始めます』


 指輪が解析してる間に、こっちの話を終わらせちゃおう。


「話を戻すけど、こうやってレイアからリリアーナに指示を出したり、逆に助けを求めたり出来るよ。だから、もう帰っちゃっても大丈夫かなって思うんだけど……」


 今の神王国ヤマトには私もレイアも居ない。国を先導出来る者が一人も居ないんだよね。


「こんな道具があるなんて知りませんでした……」

「私も知りませんでした」


 レイアもリリアーナも二人揃って手を顎にやって何やら思考に耽っていた。きっと、可愛らしい外見からは想像出来ないような事柄を考えてるんだろう。

 確かに、この世界では革命的な道具だよね。量産出来るなら世界観が一気に変わっちゃうだろうし。



 やがて、レイアは顔を上げる。


「ミレイさんの言う通りです。帰りましょう」


 キリっと、そう言った。


「ん、帰ろっか。何かあったらすぐに連絡して。シルフィーネ」

「はぁい」


 私の周りに突風を巻き起こし、風の精霊王は派手に姿を現した。


「風の精霊王……だと」


 リグルはシルフィーネを見てたじろいだ。ある程度物知りだったら、風の精霊王がどんな名前でどんな存在かくらい知ってるか。


「あでも、ここで呼び出しても飛べないか」

「ミレイさーんっ!?」


 天井をぶっ壊して出ていくわけにはいかないよね。なんて事に気が付いたのは風の精霊王(シルフィーネ)を呼び出してからだった。


 強行突破が癖になっちゃってる。自重しないとダメだね。

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