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第4話-新生グラティーナ王国?②

「リリアーナ、来てください」


 冒険者ギルドから帰ってきたリリアーナを呼び寄せる。謁見部屋にはミレイさんが居てくれるらしいから、(レイア)は彼女のサポートに回る事になった。

 ミレイさんにリリアーナを休ませて欲しいって言われた。


「はい。レイア様、どうされましたか?」

「何処かに空き部屋があると思うので、そちらでゆっくりしましょう。では、エリスさん、よろしくお願いします」

「ああ、護衛は任せてくれ」


 エリスさんは炎帝と呼ばれるオリハルコンランクの冒険者だ。炎帝の噂は私も少し聞いたことがある。なんでも、国を滅ぼす程の魔物を一人で焼き尽くしたとか。


「え、あの、ミレイ様は?」

「ミレイさんからの指示ですよ。なので、リリアーナが心配することはありません」


 リリアーナも私と同じで周囲を気にし過ぎる。頭が無駄に回るから、余計に気になってしまうのは痛いほどわかる。


「エリスさん、何処が良いですかね?」

「そうだな。……あんまり血は見たくないだろう?」

「私は良いですが、リリアーナは慣れてないと思います」


 私は血みどろな空間に逃避感はない。元々スラム街に住んでいたこともあるし、そんな世界だと死と隣り合わせだったから。

 けれど、流石に元王族となると、そんな世界を見た事など無いだろうと予想するのは難しいことではない。


「あの、その、来る時にもう色々と見てしまったので……」


 ああそう言えば、私と一緒にシルフィーネ様に運ばれた時にリリアーナも見てしまった。漠然とした驚いた表情をしてたのを思い出した。


「リリアーナ嬢はそう言うが、一応念の為だ。なるべく酷くない道を通ろう」


 エリスさんに先導されて私とリリアーナは歩く。時折物音がして、彼女がおっかなびっくりになっているのがわかる。

 リリアーナを見ていると私は可愛げのない子供だと思う。物音程度で怖がる事は出来ない。


「この部屋とかどうだろう?」


 エリスさんは無造作に無作為に扉に手を掛けた。


「ここならゆっくり出来そうですね」


 扉の先は運良く客室だったようで、ここで寝泊まりする分にはゆったり休めると思う。その部屋には大きなベッドと一つのソファがあった。


「そうですね。リリアーナは大丈夫ですか?」

「あ、はいっ! 大丈夫ですっ!」


 急に呼び出されて“明日から王様です”って言われたら誰だっていったい何事だってなる。少なくとも私だったら間違いなくなる。

 なんなら私もミレイさんに“明日から王様です”って言われそうな気がする。断固拒否の姿勢を変える気はないけど、ちょくちょく“王様やってみない?”って言われるのは、実はちょっと内心ヒヤヒヤしてたりする。

 ミレイさんも流石にそれはわかってるからか、今回の件でリリアーナの事を物凄く気にしていた。


「私はそこの椅子で眠るから、君達でベッドを使うと良い」

「では、お言葉に甘えてそうしますね」


 エリスさんの言葉に甘えて私達はベッドの上で眠ることになった。私はリリアーナのサポートをする為に来たから眠るわけにはいかない。


「リリアーナはその格好で眠れますか?」

「大丈夫です」

「大丈夫じゃないですよね?」

「ぐっすりではありませんが、眠ることは出来ます」


 私でもそうするからリリアーナであれば立場的に特に顕著だと思う。万全でなくても我慢できるからと劣悪な環境を放置してしまうのだ。

 今のリリアーナの格好は王族らしい格好とは言わないまでも、私と同じ余所行きの格好で、少なくとも私はこのままの格好で横になりたくない。


「着替えてください」


 いつも通りに私は彼女の着替えを取り出した。普段から空間魔法には私の奴隷の様々な小物が空間ごとに分けて仕舞われている。だから、取り出すのに苦労はない。

 でも、今は特別な状況だから、サクラは今日は一人だから彼女が必要な物は家に置いてきてあるし、他の奴隷の小物や衣服も彼女に預けてある。普段から奴隷の世話はサクラに一任してるから特に困ることは無い。


 男性が居るわけでもないから私はさっさと着替えてしまった。寝巻に相応しい柔い布で出来た服だ。

 透けるほどではないけど、この格好で外に出たらはしたないと思われても仕方がない。そんな感じの服だ。

 流石に人に見られないとは言え、私は透けるほど攻めて物を身に着ける気にはなれない。まだ私は見栄を張れるほど体をしてないから余計に下着が透けるのは着たくない。いつか私も出るとこが出るようになるのだろうか。


 あんまり想像がつかない……


 と、そんな私のことはどうでも良い。今はリリアーナのことが大事だ。


「大丈夫ですか?」

「はい。いつもの恰好なので、落ち着いて眠れそうです」


 リリアーナの寝巻は私と同じで、背格好が同じだから余っていた服を使ってもらってる。


「では、今日は色々とあって疲れたと思うので、もう横になって良いですよ」


 リリアーナに許可をして私もベッドに寝転ぶ。

 客室のベッドは私が家で使っているベッドより硬かった。王城に置いてあるようなベッドで硬いなって感じると思わなかった。

 神王国ヤマトには色んな商人や冒険者が来るようになったから、私にはベッドを何回か買い換えてる機会があって、その機会がある度に良い物に買い替え続けているのが大きな原因かな?

 寝るときくらい贅沢したって許されると思う。私の個人的なお金で買ってるから、誰かに責められる謂れもない。


「やっぱり、レイア様に用意されたベッドって特殊な物だったのですね」

「お古でもそう感じますか?」


 リリアーナとサクラのベッドは私のお古だ。リリアーナがベッドの硬さを確かめて顔を顰めていた。


「はい。……王になったら硬いベッドで眠らないといけないのですね」


 リリアーナの呟きは哀愁を漂わせていた。私も硬いベッドで寝ろって言われたら嫌だ。一日くらいだったら良いけど。


「リリアーナが王になったら、お古で良ければプレゼントしますよ?」

「本当ですかっ!?」

「は……はい」


 あまりに彼女の勢いが強過ぎて、ちょっと引いた。


「こほん、そう言えばリリアーナ」

「?」

「今はどんな気持ちですか?」

「どんな気持ち……とは」

「急に王にされたわけですけど、そういうのってやっぱり嬉しいのですか?」


 私は嫌だけど一国の王になるというのは本来であれば凄く素晴らしいことな筈で、じゃあ、彼女の場合はどう感じているのだろうと思った。


「正直な所、戸惑いが大きいです。父が居なくなったから王をやれと言われても、はいそうですとは言い辛いです。

 グラティーナ王国は男尊女卑の国ですから、余計に抵抗があるのかもしれません」

「……父親が居なくなったことについて、どう思いますか?」


 彼女がどのように奴隷になったのか、私はその経過を大まかには知っているから、きっとミレイさんを恨む事は無いだろうと思っていた。けれど、ミレイさんは気にしてるし私も気になったから聞いた。


「それも複雑です。私が父にされた事だけを見たら死んでくれて清々したと言いたいのですが……」

「まあ、そうですよね。素直に喜べるかと言われると」

「はい……」


 私もそうだった。

 私の目の前でリョウさんは刃物を父の首に通した。

 恨みがあるとは言え肉親が死骸に成り果てる様は、やはり、どうしても喜べるモノではなかった。


「でも、レイア様にしては珍しい問いですね?」

「そうですか?」

「はい。レイア様はミレイ様以外とこのような話をするの、避けてますよね?」

「……そうですか?」


 リリアーナに言われて全くの認識外な事だったから驚いた。過去を聞く気にはならないけど、聞かないようにしようとは思ってない。


「レイア様は過去を聞くにしても、実務的に影響があるかないかを気にするじゃないですか」

「それが私の仕事ですから」

「けれど、今の問い掛けはまるで、その、私の内面が傷付いていないかを確かめているみたいな……」


 彼女は言い淀んで、口にするか悩んで、やがて言葉にした。


「今回はそうですよ。ミレイさんに頼まれましたから」


 ミレイさんに頼まれたから私は彼女の内面を探ろうとしてるだけで、それ以上でもそれ以下でもない。


「だとしたら、私に同情する必要は無いのでは?」

「……同情したつもりはないのですが」


 本当にそうだろうか?


 そう自問自答してみて、確かに自身の経験を元に話してしまっている気がした。

 それは実務的かと聞かれたら、どちらかと言えば感傷的だと答えざる得ない。


「確かに、そうかもしれませんね。でも、今回の時間はミレイさんの指示でとったんですよ。リリアーナがどれだけ辛い思いをしているのか、ミレイさんには話せない事でも歳の近い私にだったら話しやすいのではないか……と、そう言ってましたよ」


 認めざる得ないから、反論しても意味が無いから、私は大人しく頷いて話題を変える。


「確かにレイア様の方が話しやすいですね。ミレイ様は天上人ってイメージが強くて……」

「ああ、まあ、確かにそうですね。……馬鹿ですけど」


 持っている力や優しさは人一倍だと思うけどシンプルにあの人は馬鹿だと思う。でなければ、私一人に国を任せてフラフラしたりはしない。


「レイア様って、結構ミレイ様のことをボロクソに言いますよね」

「ええ、まあ。優しい人なのはわかってますけどね」


 その優しさに見合うだけの決断力と選択力を持っていて、だからこそ、カリスマ性がある事もわかっている。

 だからタチが悪い。

 あの人は私が本気で困ったら絶対に助けてくれる。リョウさんが私の敵になりさえしなければ、どんな酷い状況でもひっくり返す為に全力を尽くしてくれる。


 それがわかっているから、あの人の言うことに悪態を吐くしか私は出来ない。


「ツンデレですか?」

「うっ……」


 奴隷がそんな事を口にしたら、普通は不敬だなんだで捨てられたって可笑しくない。

 けれど、私がその程度で捨てたりしないのがわかってて自分の価値がわかってるから、リリアーナは時たまタチの悪い毒を吐く。


「レイア様も可愛い所がありますよね」

「……むう。もう良いです、話したいことが無いなら寝てください」


 子ども二人が同じベッドで寝たって、特に変な事は無い。だから、彼女を抑え込むように布団をかけてやった。


「この辺にしておきます。……会う機会が少なくなっても、よろしくお願いしますね」


 リリアーナのその言葉は、少しだけ重たい何かを抱えていた。

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学園モノはカクヨムにて→欠落した俺の高校生活は同居人と色付く。

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