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第3話-戦争/グラティーナ王国③

「なるほど。確かにらしい建物だな」


 走っている俺達の前に現れたのは、先程襲撃した王城と似た雰囲気と豪華さを持つ建物だった。


 王宮とやらの建物の周りには柵があったが、それはあっさりと跳び超えて敷地内に侵入する。


「シルフィーネ、どっち?」

「こっちよ」


 精霊王が指差す方角に足を進めた。そこには何人かの騎士に守られている男がいた。あれが王サマか?


「ルビア、お願い」

「わかった」


 美玲の声を聞いた漆黒の剣士は、あっという間に騎士達を制圧した。


「ふ、不敬であるぞっ!」

「君は誰? 私は神王国ヤマトの王である美玲って言うんだけど、心当たりあるかな?」


 その男は王族らしい台詞を叫んだが、美玲はそれを気に留めた様子もなく会話を続ける。


「ど、どうやってここに……」

「そんなの正面突破に決まってんじゃん」

「だ、誰か居ないかっ!?」

「答えてくれないから、腕に刺しちゃうね」


 彼女はナイフを男の腕に突き立てた。男からは苦痛に耐えかねた悲鳴が漏れる。


「もう一度聞くよ。……君は誰?」


 男の瞳を覗き込んで、もう一度腕にナイフを突き立てた。真っ暗な世界にまた悲鳴が響き渡る。


「王サマで合ってる?」


 彼女の問い掛けに男は首が取れる程に頷いた。目的の人物の確保は上手くいったらしい。


「君に取れる選択肢は二つ。一つは私達に賠償金を渡して、今後は一切私達に干渉しない。もう一つは私達の属国になって、色々と献上し続ける」

「そんなふざけたこと出来るわけ……」


 言い淀んだ瞬間に突き刺したナイフをぐりぐりとやる。痛みに堪えられず蹲って男は悲鳴を嚙み殺す。それは一種のプライドのようにも思えた。仮にも一国の王様だから永遠と悲鳴を響かせることに抵抗があるのは想像に難しくない。


「君が出来るか出来ないかは聞いてないんだよね。あ、因みに何で私達がここに居るかは理解してるよね??」

「……ああ」


 男は忌々しそうに彼女の顔を見て頷いた。美玲はその表情を見て、もう一本のナイフを今度は太ももに突き刺した。暗闇に悲鳴が広がった。


「手紙を書いたのが君ならわかると思うんだけど、ここで君を殺してリリアーナを王様に仕立て上げる事も出来るんだよ?」

「ぐっ……、出来るはずがない……、この国は男の王以外を認めていない」

「それはどうとでもなるよ。……そうしようかな」


 まるで本気でそう思ったかのように、彼女は普段は使うことのない長細い剣を取り出して、その男に振り被った。


「わかった、わかったっ!? ……要求を全て飲もう」

「わかってくれてありがとう。なんて言うと思った?」


 美玲はそのまま身体をバッサリと斬った。俺達に比べたら雑過ぎる斬撃だったけど、男の生命は完全に途絶えてしまった。……え? 王サマは生かさないといけないんじゃなかったのか?


「ど、どういう風の吹き回しだ? その男はこの国の王だったのではないのか?」

「……」


 エリスは目の前の男が息絶えたのを見て本気で焦っているのが伺える。ルビアは美玲の行動を興味深そうに注視していた。


「んー、そうらしいけど、賠償金を払わせてもまたやり返そうとするだろうなあって思ってさ。だったら、殺して王サマを挿げ替えて、挿げ替えられた王に払わせた方が早いかなって思ったんだよね。最初に立てた計画が甘いんだなーって気が付いちゃった」


 リリアーナが王になれば、この国は完全に傀儡に出来る。そりゃ王族以外の反発はあるかもしれないけど、それは俺達が一つずつ潰していけば良い。確かにそっちの方が利益は多そうだ。後腐れも無さそうだしな。


「なるほど」

「今日からこの国は、神王国ヤマトの属国として扱う。今日は帰れなさそうだね。シルフィーネ、リリアーナをここまで連れて来て」

「ほんっと、精霊使いが荒いわねっ!」

「私と契約した事を恨むんだね。じゃあ、今から王城に向かおうか。もちろん、その男の身体は持っていくよ」


 美玲が色々と考えてるのはよくわかったけど、どこまで何を考えてるのかは全くわからなかった。



 彼女は男の死体に紐を括り付け、王城に向かう街道で民衆にアピールする為に引き摺り回した。民衆の反応は三者三様で、思ったよりも王が民衆に好かれていなかったことがわかった。この国の成り立ちすら知らないから、王が国民にどの程度好かれていたのかも俺は知らなかった。

 街中で出会った兵士の中には抜剣して襲い掛かってくる者もいれば、その場で立ち尽くしてしまう者もいた。襲い掛かってきた者はその場でルビアに斬り捨てられるか、もしくは殴り倒されるかで、それを見ていた兵士達の戦意は段々と削られていった。後から俺達を発見した兵士達は、その情報量の多さにパニックになり、武器をその場に取り落とし立ち尽くしてしまうことが殆どだった。




 **


「明日まではここで待機だね」


 煌々と照らされた謁見部屋の玉座に座った私は、陵、ルビア、エリスの三人に告げる。


「ルビアは国土欲しい?」

「要らないな」

「だよね。エリスは?」

「私も必要ない」

「だよねー」


 冒険者と旅人に聞いたって、欲しいなんて言わないことはわかっていた。報酬は頑張って現物で用意するしかないか。この国の通貨が死なないように上手く国を経営しないといけないね。

 その為にはリリアーナに全面的に旗印になってもらって、それを私達が後ろから支えて、何とか上手くグラティーナ王国の経済を回す以外に手段はない。


「神王国ヤマトの隣の国が属国になったのは良いことだよね」

「それ以外に良いことは無さそうだけどな」

「それはわかってるよ」


 手間暇がもっと増えてしまった。正直な事を言えば死ぬほど面倒くさいし、国の経営なんて関わりたくもない。でも、神王国ヤマトの名前を世界に知らしめるのと、グラティーナ王国から報復を絶対されないようにするにはこれしかなかった。

 また宣戦布告をされても困るし、軍を向けられても困るし、他国から宣戦布告されることも、グラティーナ王国が神王国ヤマトに戦争で負けて属国になったと噂で流れれば減るだろうし、完全に私達の息のかかった者が王になるから国をあげて反乱されることもない。

 王を挿げ替えるとパッとこれだけの利点が出て来るんだよね。だから、王を殺さない理由がなくて、つい、そのまま殺しちゃった。まだ手には人を斬った感触が残っててちょっと気持ち悪い。


 やっぱり、人を殺すのは慣れないね。


「敵か?」

「さあな」


 陵とルビアが視線を向けた先、謁見部屋の観音扉が開かれた。そこには武器を持った騎士がひしめき合っていた。


 先頭に立ってる人が偉いのはわかった。装備とかちょっと違うしね。

 でも、王が居なくなってもまだ戦う気なのかな。それとも未だに事実を認められていないだけなのか……


 私は玉座から立ち上がって王の死骸を騎士達に見せつける。言葉なんか要らない。ただ事実を見て理解すれば良い。それでも戦うって言うなら、私達に騎士達を止める術はない。


 騎士達はどよめいた。先頭に立っていた男も苦い顔をする。ルビアとエリスが私の一歩前に立ち戦闘態勢になった。


「御身の名をお伺いしても宜しいでしょうか?」


 先頭に立っていた男は膝を折って、頭を垂れた。すぐに戦闘とはならなさそうだね。


「神王国ヤマトの王、美玲。君は何の用でやって来たの?」


 男の質問に大人しく答えて、更に質問を投げる。


 私だって無闇矢鱈に殺したいと思ってるわけじゃない。この男との会話で後ろの騎士を殺さなくても良くなるなら、会話に付き合うだけの価値がある。


 ……まあ、そんな事をしなくても、王城の外に積み上がった死体を見たら戦いたいとは思わないだろうけど。


「そ、それは……」

「王を守る為? ああ、顔は上げて良いよ」


 ボロ雑巾になった王の死骸をもう一度掲げた。先頭の男はわかり易く顔を歪めて、後ろに続く騎士の中には恐怖を感じている者もいた。


 次にボロ雑巾にされるのは自分だと、そう思っているのかもしれない。

 そんな事をする気は無いんだけど、口で言って伝わるとは思わない。


「王は死んだけど、それでも君達は戦う?」

「戦いたくありません。ですが、異国の王よ。一つだけ無礼な質問をお許しください」


 男は決死の覚悟を抱いて、不躾にも取れるような言葉を紡ぐ。私がしっかりとした王様だったら、周りの人達が無礼だなんだと騒ぎ立てるのかもしれない。

 生憎と、今の私の周りはそういうのに縁が無さそうな人ばかりで、誰も気にした様子はない。


「王を殺して、そして、この国をどうされるおつもりですか?」

「何かをするつもりはないよ。君が聞いてるかは知らないけど、私達は売られた喧嘩を買っただけ」


 王を殺した一番の目的は、私達にとって無害な国にする為だ。


「そ……うですか」


 その反応は元々知っていた人がするモノだ。彼も神王国ヤマトとグラティーナ王国の戦争の話は知っていたんだね。

 だからって何かを言うつもりも、するつもりも無いよ。戦争に反対だと言えなかった貴方も同罪だとか思わないよ。


「グラティーナ王国は本日をもって、神王国ヤマトの属国になる。特に国民の生活が変わることはないし、変えろと言うつもりもない。戦争を仕掛けてきたのはそっちなんだから、負けた対価は払ってもらうけどね」


 属国と聞いた途端に騎士の何人かは目の色を変えた。掛かって来るなら来れば良い。今更殺した数が増えた所で何も変わらない。

 属国にするんだったら兵力は減らしたくないけど、どうしても受け入れられないなら仕方がない。


「だから、君達が何もせずに帰るなら私達は君達には何もしない」

「……わかりました」


 男は一つだけ頷いた。その後に後ろの騎士に指示を出す。すると、騎士達は綺麗な隊列を保ったまま謁見部屋から去っていく。

 騎士は何かを守る存在だ。だから、守る対象が無ければ仕事も無い。そんな中で無駄に命を散らすなど誰も望みはしないだろう。

 いや、私は知ったこっちゃないけど、騎士ってそんなもんだよねって話。


「あれ、君は帰らないの?」


 さっきまで話してた男だけがこの場に残った。


「私には国の行先を見届ける義務があります」

「ふぅん?」


 別に君に義務があるかとか聞いてないし興味も無いけど、邪魔をする気が無いなら、敵意や殺意を持っているわけでもないし、頑なに出てけと言う必要もない。


 取り敢えず、リリアーナが来るまでは待ちかな。

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