表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/145

第4話-お仕事を始めました。

『朝です。起きてください』


 脳内に指輪の声が響く。朝を知らせるその声は、かつての電子音声より遥かに高品質だった。


 耳から拾う音じゃなくても、人って目覚められるんだね。ちょっとした新発見かも。


『あんな機械と比べられるのは……』


 ごめんって、本当に凄いと思ってるから許して……?


『……はい』


 ただの道具が拗ねる訳が無い。本当にこの指輪は面白いよね。


「んーっ」


 伸びをした。隣にはまだ陵が眠ってる。ちょっと可愛いな。

 そんな事を思うと、気が付いたら手が伸びちゃってて、慌てて引き戻した。


 私が寝てる間も陵は寝てなかったもんね。そういう一面を知ってしまうと、彼もそういう事柄を期待してるのかも……とか、勝手に妄想してしまう。


 やめよう。


 私はこの問いに答えを知ってる。だから、今はゆっくりと身体を休めて欲しいと素直思えた。

 性欲は本能だ。そして、本能は理性と相反する事もあるんだから。


 それにしても、何で陵は目を覚まさないのかな。そんなに寝起きは悪くない筈なんだけどな。


『恐らく、目覚ましの指示を忘れたのだと思われます』


 あ、そっか。私は指輪さんにお願いしたけど、陵とはまた別だもんね。


 昨日は雇い主である少女が泊まっている部屋の、隣の部屋に泊まることになった。

 仕事内容が少女の護衛という事で、少女が隣にしてくれと宿主に頼んでいた。

 この雇い主である少女が、普通の子供でない事は流石に気が付いた。だって、少女にしては理知的過ぎたから。

 夜の時間は指輪から取り出したセキリュティグッズに任せていた。

 赤外線センサーや物理的トラップを少女の眠る部屋に沢山仕掛けた。

 だから、何かがあったら直ぐに対応出来る仕掛けになってる。


 少女の正体は何処かの貴族の三女で、お家の継承権は持っていないと言っていた。だから、今から仕事をして何とか軌道に乗せたいのだとか。

 本人が言ってた事だから、それが嘘かもしれないし、傍から見たらそうじゃないかもしれないし、わかんないけどね。


 それは別に良いんだ、興味ないから。それよりも大きな問題が一つだけあるんだよね。それは雇い主が超絶美少女であること。

 透き通る様な肌に透き通る様な銀髪で、瞳は宝石みたいで美しい。

 逆に言えばだけど、貴族だ平民だ関係なく、永遠にストーカーされそうな人物だと思う。

 その為の護衛なのかもしれないし、そうじゃないかもしれないけど、それもまた、私達には関係ない事だね。


 事情とか諸々は本当にどうでも良い。ただ言えるのは美少女がほんっとうに可愛いってだけ。陵がロリコンじゃなくて良かった……なんてしみじみ思うくらいにはヤバい。


『美玲様、そろそろですよ。陵様は起こさなくて宜しいのですか?』


 あっ、忘れてた。


「起きてっ!」


 結構強めに揺すった。こういう時はゆっくり揺すっても、まだ寝る〜とか言われるんだ。


「んー……あれ……朝、か」


 陵の寝起きはとても良い。まだ寝る〜とか言い出すのは実は私なんだよね。彼はそのまま寝かせてしまうから本当にタチが悪いと思う。


 陵が立ち上がると同時に、彼の服装が変わった。軽装鎧って名前がピッタリだった。

 付き合ってから初めての同衾だったのに、何も起こらないし変わらないから悲しいよ。

 森の中で陵が眠れなかったのは、私が身近に居たからってだけじゃなくて、単純にベッドが無かったからじゃないかとか思っちゃう。

 くっついた時に陵の鼓動が速かったから、そんな事は無いって知ってるけど、流石に彼女と初の同衾だよ?


 ……多少は顔色を変えて欲しかった。


 そんな事うじうじ考えても仕方がないから、私もお揃いにして貰って良いかな?


『了解しました』


 私も立ち上がったと同時に、陵と同じ姿になった。


「剣は使えないだろ?」


 腰には陵と同じ剣が下がっていた。それを見て困った様な顔で彼は笑った。


 むう……確かに、私、陵みたいに強くないし……


『武器だけ、光線銃に変更します』


 装備された鞘はホルスターに代わり、その中には銃がきっちりとハマった。妥協案としてはそんな所だよね。


「そんなに気にしなくて良いよ。戦闘になったら、戦う以外にも沢山やる事があるから」


 彼の言葉は本当の事だってわかってる。でも、そうじゃないんだよ。


 ……そうじゃないんだよ。


 その想いを口にする事は出来なかった。



「おはようございます。リョウさん、ミレイさん」


 少女は私達を見て、ぺこりと頭を下げた。


「おはようございます。レイア様」


 彼が丁寧にお辞儀をした。それを真似て私もお辞儀する。


「やーだー、レイアさんで良いですよ。あなた達は対等な方が色々と助かる気がしますから」

「でも、それだと取引先にナメられませんか?」


 陵の疑問は最もだし、私は首をブンブン縦に振った。


「じゃあ、その時だけ丁寧にお願いします」

「……わかりました」


 陵が負けた。まあ、相手が頭の良い超絶美少女じゃ、陵に勝ち目はないか。


「今日は午後から商談があります。護衛にはリョウさん、ミレイさん、それからブライドさんにお願いします」


 ブライドとやらが何処の誰かはわからないけど、取り敢えずわかった感だして頷く。


「えっと、その……ブライドさんはどこに?」


 そのブライドとやらの姿は、どこにも見当たらない。私の目が可笑しくなければ……だけど。


「ああ、彼はまだ寝てますよ」

「えっ!?」

「でも、凄い優秀なんです。だから、それで良いのです」

 護衛が主より眠ってるとは、これ如何に。

「逆に、そこら辺の几帳面な所はあなた達に任せようと思います」


 そう言われちゃあ、仕方がないと割り切るしかないね。


「とは言え、流石に起こさなければなりませんね。顔合わせもありますから」


 レイアはブライドとやらが眠っているであろう扉を開けた。


 私達は扉の外から中を確認する。布団に包まったままの大男が目に入った。……本当に爆睡してるよ。


 少女の小さな手が布団の端を握って、強引に引っ張ると大男はベッドから落ちた。扱い雑だなぁ……


「いっつー……レイア嬢、もっと丁寧に……」

「新人はもう起きてると言うのに、この醜態は……酷くて言葉も出ませんね」


 悪態を吐く男に、少女は底冷えのする視線を向ける。まるでゴミを見ているかのようだ。一定数のキモオタには需要がありそう……なんて、他人事ながらに思う。美少女は好きだけど、ロリに見下される趣味は無いかな。


「終わったら下に降りてきてください」


 レイアは男を置いて外に出てきた。雇い主に起こされる護衛って、護衛って言うのかな?


「では、下で食事にしましょう」

「「あ、はい」」


 私達は雇い主に促されるままに1階に向かった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ブクマ・ポイント評価お願いします!

小説家になろう 勝手にランキング

学園モノはカクヨムにて→欠落した俺の高校生活は同居人と色付く。

― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ