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第6話-王って面倒くさい③

 レイアの前まで行くと、レイア達が膝を折って頭を垂れた。しかも色んな人が見ている前で、だ。レイアとしては、王が誰かというのを民に示したいんだと思う。私があまりこの国に居ないから、ここぞとばかりに私の権威をアピールさせようとしてくる。

 すると、周りの人々も彼女の動作に追われるように膝を折った。


「レイア、顔を上げて。皆も顔を上げて」


 頭を下げさせたままだと、あまりにも居心地が悪いから、私は周りに聞こえるように声を張った。すると、レイア達が顔を上げて周りも顔を上げた。


「各自、仕事に戻りなさい。王はそう仰せです」


 そんなこと言ってないけど、まあ大体合ってるし文句はない。周りの人々は私の存在に後ろ髪を引かれながら、途中振り返ったりしながら、自らの生活に戻っていった。


「おかえりなさい、ミレイさん」

「ただいま、レイア。私が居ない間で困ったことある?」

「困った事は特に無いですよ。報告したい事は沢山ありますけど」

「ん、じゃあまずは、拾ってきた子供達に住む場所を与えたいんだけど、どこに住んでもらうのが良いかな?」

「どういう子供ですか?」

「孤児か捨て子かな」

「なるほど。サクラさん、第一区画の男と女一人ずつ適当に呼んできてください。その二人に案内と生活の説明をさせます。場所がわかるなら、そのまま新規で訪れた子供達の所に行ってください」


 第一区画ってなんだろ? 私が前に居た時は無かった言葉だ。


「わかりました。上に飛んでる人達が降りてる場所で間違いないですか?」

「うん、あの場所で合ってるよ」

「わかりました。その子供達は第二区画に案内……で、大丈夫ですか?」

「いえ、第一区画の人が住んでいない建物に案内してください」

「わかりました。では失礼します」


 咲良はレイアの小間使いが板についてきたみたい。前に見た時よりも仕事のテキパキさが上がってる。

 咲良が何処かに消えて、私の目の前には銀髪のレイアと金髪のリリアーナが立っていた。髪色が対極だし、どちらも美少女だからとても絵になる。


「第一区画って?」


 さっきの疑問を口に出す。可愛い美少女が前に居るからって忘れてないからね。


「第一区画には、ミレイさんが風の精霊王(シルフィーネ)様のご依頼で拾った子供達が住んでいます」

「あれ、大人たちは?」

「本当に少数なので、その方々はまた別の区画に居ますよ」


 大人の奴隷の大半は私が追い出しちゃったからね。だって働かないんだもん。子供が一生懸命に生きてる中で、何もせずに働かない大人なんて要らないよ。


「人によって区画分けしてるの?」

「んー、と。自活力の無いと判断される子供のみ、街に生活地域を作って支援してる感じになります」

「なるほどね。やっぱり、私は王様じゃなくても良い気がするんだよね」

「絶対やりませんよ」


 レイアの方が統治とか人を動かすのとか、私より100パーセント上手いから、さっさとレイアに全部丸投げして隠居したい。

 大して国にすらいない癖に何を言ってるんだってなるかもしれないけど、王様とか本当に私らしくなくて困る。偉そうにするの本当に向いてない。さっき膝を折られたのだって、ぎょえーって感じだもん。


「冒険者とかって、何処に案内すれば良いかな?」


 現実はぎょえーなんて言ってる暇なくて、さっさとやらなきゃいけない事の話を進める。

 冒険者達を、流石に子供と同じ扱いにするわけにはいかない。


「冒険者は基本的に好きにさせてますね。聞ける要望をなるべく聞きながら、って感じです。詳しく話はギルドマスターを通してからにしてます」

「なるほどね」


 冒険者ギルドの人達は、私達からは基本ノータッチなんだね。この国の人では無いし、その方が良さそうだ。こっちがやろうとすると、更に国の仕事が増えて面倒くさそう。


 指輪、陵に、冒険者には冒険者ギルドに行くように伝えてって言ってくれる?


『承知しました』


 冒険者はこれで良いから次の話に移ろう。ルビアとエリスについてだ。


「二つほど空き家あるかな?」

「……特別扱いですか?」


 レイアが少し面白くなさそうな顔をした。そりゃそうだよね。他の冒険者と待遇が違う冒険者が一人でも居たら、管理するのがめんどくさくなるからね。


「しないとヤバそうな人が一人、これからの為にした方が良いのが一人」

「因みにどんな人なんですか?」

「しないとヤバそうな人は冒険者でもなんでもないから、他の人に待遇でケチを付けられることは無いかな」

「なるほど。もう一人は?」

「オリハルコンランクの冒険者」

「また凄い人を連れてきましたね……」


 レイアはもう驚き疲れたと言いたげな顔をした。隣のリリアーナは驚いてたけど。


「因みに、どうしてヤバいんですか?」

「陵が苦戦した。敵に回られたら、間違いなく私達には大打撃かな」

「リョウさんが苦戦するって、そんなにヤバいことですか?」


 あ、そっか、そう言えばレイアは陵がどの段階なのか知らなかったね。


「結構ヤバいかな。もし他国と戦争になった時に彼が現れたら、陵が動けなくなるってことだからね」

「……確かに、そう聞くと厄介ですね」

「だから、極力減らしたいんだよね。そういう危険性をね」

「なるほど、わかりました」


 レイアは一枚の地図を取り出した。それは神王国ヤマトの地図だった。

 私がアマたんの力を借りて無作為に建てられた建物が、そこには書き込まれていた。


「地図に書かれてる〇と×ってなんなの?」

「人が使ってるか使ってないかです。使ってるのが×、使ってないのが〇です」


 地図で見てみると、まだ建物の8割程が〇になってた。この国の人口の少なさが伺える。というか、300人しか居ないのに2割埋まってるのが驚きだよ。

 山頂に建国しただけあって、圧倒的に土地が足りないね。


「リョウさんがとてつもなく強いってことはわかるんですけど、私にはわかり難いんですよね」

「あーまあ、それはそうだよね。私みたいに派手でも無いからね」

「ミレイさんは派手過ぎますよ。あれだけで周りからは恐ろしい国だって思われます」


 光線銃を乱射してるだけで、他国に武力的にヤバそうって思われるのは理解出来る。実際に町の一つ二つなら光線銃だけで吹き飛ばせると思うし。太陽王モードなら、ね。


「今回の大会で優勝したのは、まあ、それは予想通りだし想像し難いよね?」

「優勝とはつまり、世界で一番強いってことですか?」

「それは違うかな。流石に世界一位を決める大会なら、もっと陵の敵は強くあって欲しい」


 ルビア以外は圧勝、瞬殺な状態の大会で世界一位ですとか言われても、陵としても釈然としないだろうし。

 世界一位になれるかと言われれば、陵はなれるだろうけどさ。


「その感覚はよくわからないですけど。んー、冒険者のランクで言えばどのくらいなんですか?」

「オリハルコンランクの冒険者を素手で倒せる?」

「素手って、えっと、相手は?」

「もちろん武器と魔法を使えるよ」

「……一番わかりやすかったです」


 レイアは軽く身震いして、リリアーナは元々白い顔が更に白くなった。もはや青い。


「ランクだとわかりやすいんだ?」

「オリハルコンランクは世間的に英雄と言われます。なので、その英雄の全力を素手で倒せるなら……」

「なるほどね。他国で凄い凄い言われてる人でも相手にならないのかな」

「……まあ、多分、そうなりますね。なるほど、リョウさんってそんなに強かったんだ……」


 レイアは白い紙を取り出して、何かメモをしていた。


「後で近況も含めて、ゆっくりとお話させてください」

「ん」

「ヤバそうな人は、ヤバそうじゃなくて本当にヤバい人だと思うので、本人に要望を聞けたらと思います」

「聞いてマトモな答えが返ってくるかな……」


 ルビアは大会期間中も野宿してたとか言ってたし、家なんてまるで興味が無い気もする。


「そこはミレイさんを頼りに……」

「陵に丸投げするね」


 私より陵の方がルビアと仲良いしね。


「そこはお任せします」

「はーい」


 何とかしないと後で困るのは私達だから全力で取り組むよ。敵に回られたらと思うとゾッとする。


『陵様から伝言です。冒険者と子供は居なくなったけど、残りの人達はどうするのか? とのこと』


 冒険者や子供達以外も居たっけ。

 あそっか。武闘大会ってそもそも冒険者ギルドの大会じゃないから、ルビアみたいな所属無しの腕自慢が出ても可笑しくないよね。


 というか、むしろなんで忘れてたんだろう……


「冒険者と子供達以外はどうしたら良いかな?」

「他にも居るんですね? では、直接その人達に会ってお話をしても良いですか?」

「それはもちろん」


 陵と合流することになった。その道すがらで色んな人に膝を折られてさあ大変。いやマジで王様って面倒くさい。


 **


「なるほど、皆さん腕に覚えがある……と」


 レイアは一人一人の名前を名簿に記入しながら、何か思案げな顔をしていた。


「となると、日常的にその手の練習が出来た方が良いですね?」


 一人の少女の言葉に、屈強な男達は戸惑いながら頷きを返す。大会参加者だけあって、筋肉質で屈強なのが殆どだ。

 悲しきかな、筋肉は強さに比例しないけどな。


「では、道場の周りの家に住んで頂いて、魔物の狩りや子供達の護衛を任せます。道場は好きに使って頂いても大丈夫ですか?」

「俺は良いよ。ただお前ら、……壊すなよ?」


 屈強な男達を睨みつける。

 派手に暴れ過ぎて割った割れたは勘弁だ。道場ってのはそんなもんだけど、俺が帰った時に更地になってましたでは困る。

 いや、そんなに愛着ないし困らないかもな。でもまあ、釘を刺しておかないと絶対に大変なことになる。


「では、案内しますね」


 屈強な男達のシェアハウスという、一種地獄のような光景が始まったのは言わぬが花だろう。

 屈強な男達は何一つとして文句を言わなかった。本当に強くなれる環境以外に興味が無いのだろう。


 技術的にまだまだだったり、技術はあるけど身体がって人も居るから、それは目を掛けてあげられたらと思う。

 キラみたいに連れ回しはしないから、一種のアドバイザーみたいな立ち回りになりそうだけど、意見を述べることくらいなら罰は当たらないだろう。

 純粋に強くなりたいって人に聞かれて、物事を答えるのは嫌いじゃない。まあ、強くなりたいだけじゃ、本当に強くなれはしないんだけどな。


 背負う物が無かったら、本当にしんどい時に逃げ出すのが普通だよ。それはなんだって変わらない。

 武術とか戦闘術は、それら自体の為にやるんじゃなくて、何かを選択する為に身に付けるモノだからな。

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