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第5話-武闘大会最終日

 あのクソ野郎が死んでから二日が経った。最初のバトルロイヤルで選出された六人とシード枠の計八人から始まった試合は、今日で決勝戦を迎えた。


 陵は当然ながら、危なげなく決勝進出を決めていた。


「どうなの調子は?」


 宿から試合会場に向かう直前で、陵のコンディションを聞いてみる。幾ら彼が強いとは言え、一応は気にしてるし、やっぱり気になるよね。


「いつも通りかな」


 ぼろぼろな宿は、今まで陵が秒殺した選手達で盛り上がっていた。


「決勝決めて来いよー」

「負けんなあっ!」


 一部は陵の応援団みたいになってるけど、彼はそういうの本当に興味ないんだよね。


「行こうか。キラ」


 陵が唯一弟子として取った男の子を呼び寄せる。


「ガリアスとエリスも」

「御意」

「わかった」


 私も秘書とボディーガードとして彼らを呼び寄せた。


 大男と小さな男の子、赤髪の美人さんを連れて、私達は試合会場に向かった。



 試合会場周辺を歩いていると、流石に決勝前だけあって、陵の顔を見て驚く人たちが出て来た。


 話し掛けようとしてる人も居たけど、囲まれるのを嫌った彼が思いっ切り機嫌の悪そうな顔をしたから、そのまま何処かに遠ざかっていった。


「師匠、機嫌悪い」

「めんどくさかっただけだ」


 キラって子は、今は凄い素直そうに見えるのに、陵曰く出会った時は物分かりの悪い聞かん坊だったらしい。今の様子じゃ想像できないね。強いて言えば、ズバズバと物申せる所がその名残なのかもしれないね。

 キラの言葉に詰まらなさそうに陵はそっぽを向いた。キラは言わなくて良いことをズバズバ言うタイプで、陵はそれに振り回されてるって印象がある。

 いつも仏頂面だから、私以外にも振り回してくれる相手が居るくらいがちょうど良いと私は思ってるんだけどね。


 やがて試合会場に到着して、陵は控え室に向かった。


 私達は観戦席に移動した。



 **


 時間になった。俺は控え室から闘技場に足を踏み入れた。


 漆黒の刀を手に持って、鎧は身に付けない。全力を出すなら鎧は要らないからな。


 目の前に立つのは、確かに決勝に相応しい相手だと思えた。少なくともそれくらいには強い。


 名前をルビアと言うらしい。体格は俺と大して変わらないし、年も大して変わらなさそうだが、雰囲気が俺と同じかそれ以上に尖っている。


 彼は剣しか持っていなかった。鎧も装備してないから、戦闘スタイルは俺と似たような感じなのかもしれないな。

 ……だとしたら、純粋な技量勝負になる。美玲曰く、俺と同じで決勝までの全ての試合を瞬殺で進んできたらしい。


 口を利いてくれるタイプでは無さそうだ。試合前はこれくらいのピリピリ感があった方が俺は好きなんだよな。


 実況がとても盛り上がってるけど、それに耳を一切傾けない感じも嫌いじゃない。ずっとつまらなさそうな顔をしているところも、俺と気が合いそうだな。


 彼の服装は全て真っ黒で装飾がガチャガチャしていた。俺の半袖長ズボンの軍曹軽装スタイルとはまるで正反対だけど、動きやすそうだなとは思う。



 審判が開始の合図を落とした。



 刀とは違い、叩き切る剣だからこそ出来る動きで、目にも止まらぬ速度で縦に一閃してきた。鞘に収まったままの刀でそれを受けて、相手の腕力を測ろうとして……躱した。

 けたたましい音と共に、大地が叩き割られた。と、その次の瞬間に凄まじい剣速で横一閃に振るわれる。振られた剣身に合わせて身体をバク宙させ、後ろに下がらないように着地する。


 抑えてたら、間違いなく腕が持ってかれてたな。どう考えても人間の斥力じゃない。


 着地した瞬間に一歩を踏み出して刀を振り抜く。横一閃と見せかけて、振っている間に斜め斬りに変化させ、相手の胸元を斬り裂いた。ヒットはしたけど傷は浅い。これは……久しぶりに楽しいな。


 相手は俺の刀の軌道を嫌がって、後ろに下がった……と見せかけて、左から回し蹴りを叩き付けてきた。


 フェイントに引っ掛かりかけたくらいだから、上手く蹴りには反応できたけど、取った防御姿勢のまま5ⅿくらい強引に下がらされた。受けた腕がびりびりする。


 力を上手く流したはずなんだけどな……


 上手く相手の力を流そうとしても、蹴りや剣の技術が高くて合気で流しきれない。合気術もそれなりに上手いはずなんだけどな、技巧系の怪力持ちは思ったより厄介だな。


 下がった次の瞬間に、剣身が目前に迫っていた。


 頭を軽く下にして、躱すと同時に身体に叩き付けるように刀を滑らした。


 鮮血が舞う。


 攻め切れはしないけど、躱しながら相手にしっかりとダメージを与えていく。

 無闇矢鱈に攻め続けることは、相手の技量が高過ぎて出来ない。

 微妙なフェイントを仕掛けると、掛かるには掛かるけど、寸前で躱されたり、先に攻撃されたりと動きを潰されてしまう。


 何より、一つでも読み違えると俺があっさり死ねる。それくらいに相手の身体能力が馬鹿げてる。


 その上で相手もフェイントを掛けてくるんだから、厄介この上ない。


 だけど、その厄介さが楽しい。

 こうやって、全力でぶつかれる相手がいるってことを知れたことが、本当に嬉しい。


 ギリギリの技術戦の応酬の中で、刀を振り、剣を躱し、肌を斬り、大地が割られる。


 じわじわとこっちの刀はヒットはさせているから、相手の服の至る所から赤い雫が溢れている。だけど、致命傷には届かない。


 逆に相手からすれば、一発当たれば逆転出来るのに、一発もヒットしないって所だな。


 俺の刀が先に致命傷を与えるか、相手の剣が俺を叩き潰すか。


 ……どっちが先かな。


 **


 あんなに陵と戦える人、彼の成長期が終わってから初めて見たよ。

 そりゃあ子供の時は陵のお父さんとか、お爺ちゃんとかが、彼の相手を頑張ってたからね。


 環境に違いはあれど、私はめちゃくちゃ驚いてる。


 相手の方が力が強いらしくて、それでいて技術もあるらしく、陵がイマイチ攻めあぐねているのは、遠目から見てもわかった。


 相手の人、仲間に欲しいね。あれは絶対にスカウトしたい。


 そりゃ強いから……ってのもあるけど、それ以上に、陵が楽しそうだから。


 乙女心としては、やっぱり陵がいる高みを理解出来る人が一人もいないって事実は、好きな人が永遠に一人って事実は辛いんだよね。


 この大会でも、陵の高みを理解出来る人なんて現れないと思ってたから、今日の決勝はどっちに転んでも嬉しい誤算だ。


 しっかし、相手が剣を振るう度に地面が抉れるね。


 深く踏み込むと逆にやられるから、陵は攻め込み過ぎずに、浅い一撃一撃で確実にダメージを与えてる。


 地面を抉る程の一撃が顔のすぐ隣を通っても、彼は常に涼しい顔をして次の行動に移る。

 力が強いからとビビって、怯んで、彼の取れる行動が狭まることはない。


 逆に相手も、それほどまでに異常な怪力を振るっておきながら、顔色一つ変えずに次の攻撃に移る。


 どんっ、という音ともに、陵の身体が宙に浮いた。


 相手の拳が腹に突き刺さった。彼は手を間に入れて、力を逃がしはしたものの、その力を抑え切れずに後方に飛んだ。


 宙に浮かされた、隙だらけになった身体を、相手が追撃しないはずはなくて、剛腕に秘められた剣が容赦無く振るわれた。


 これまでの試合で初めて、陵は刀で剣を受けた。正確には受けたんじゃなくて、刃に沿って受け流した。


 横振りの一閃が、その力が強過ぎて陵の体はあっという間に横一回転する。彼は力の流れに逆らわずに、回転後に地面に着地する。


 と同時に、刀を一閃し返す。相手が冷静に後ろに引いた。


 試合は激しい削り合いだけど、けれども確かに、進展は無かった。


 **


 それは確かに、一撃マトモに喰らえばあっさりと死ねるデスゲームだった。


 俺も相手も、お互いに決定打がない。


 ……けど、このまま行けば、俺が勝てる。


 相手は出血多量の中、全力で剣を振り続けてる。俺は無傷のまま攻撃を凌いでは、一太刀を丁寧に浴びせている。


 相手は後ろに引いて、そしてそのまま、俺の様子見を始めた。


 なんでも良いから、突破口を作らないと負けるって意識はあるみたいだな。けど、そんな様子見をする時間を、俺が与えるわけないだろ。


 一気に距離を詰めて一閃する。


 また乱戦に持ち直しだ。


 だけど、今度は今までとは違くて、隙があっても彼は切り返して来なかった。


 ……何を企んでる?


「大地の改変」


 彼の口からボソリと呟かれた。その直後に闘技場の地面が割れて、複数の棘が生やされた。


 魔法かっ。


 踏み出した場所が歪んで、俺は思わず少しだけ体勢を崩す。


 それを見た彼は当然ながら、容赦無く剣を振ってきた。


 それを正面から刀で受け止めて、地面に力を流すと同時に返してやった。

 鎧通しを、相手の力を利用して、刀身から彼の剣身に使ったんだ。普段は全力でやると人が死ぬから、多くても五割強で打ってたけど今回は全力だ。その全力に彼の怪力が乗った。


 これは波返しと呼ばれる技でもある。受けた力を身体と大地を使って相手に返してやる技だ。イメージ的にはテコの原理みたいなもので、かなりの上級者テクニックになる。


 相手が素直な一撃を打ってこなかったら、この技は使っても成功しなかった。相手が唯一の隙に全力の一撃を叩き込んできたからこそ、俺は合気術を簡単に使う事が出来た。直線的な一撃だからこそ、力を返せたんだ。


 それに、この刀じゃなかったら、今の一瞬で折れてるだろうし。


「がハッ」


 剣身に流された波は、どうやら彼の内蔵に届いたらしい。


 お前がどんな手を隠してるか知らないが、俺だってここぞって手は隠してるさ。


 苦しそうな顔をした彼に、全力の一閃をすると見せかけて、腹に掌底(鎧通し)を叩き付ける。内蔵を抉るように、彼の内部に荒波を浸透させた。


 彼の口が苦しみに歪み、怯んだ。俺は刀を心の臓に滑り込ませる。


 ざしゅっ


 苦し紛れの剣が俺の肩口を切り裂いた。鮮血が舞って、鎖骨辺りがひしゃげた気がする。


 でも、俺のトドメの一撃の方が速かった。


 相手の意識は途切れ、試合終了の声が聞こえた。

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