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第7話

「ぐうっ」


 腕がなくなった。痛いし、身体に力が入らない。体温が下がる……


『美玲様っ!』


 指輪の声が聞こえる。あの敵は何だったの? あれは間違いなく人じゃないよね?


『何も考えずに安静にしてくださいっ!! もう少しで天照大御神様がいらっしゃいますっ!!!』


 そんなに焦らなくて大丈夫だよ。まだ生きてるから。


 それよりも、何もかもが通用しないレベルの敵なんて初めてだよ。光線銃も拳銃もライフルもドローンも“太陽王モード”も全てが役に立たなかった。

 アストレアは意識を失っているだけの状態だから良いとして、それよりも重症なのは間違いなく私だ。わかってるけど、どうしようもない。


 指輪、止血だけしてくれる?


 このまま血を流しているままはマズイ。どんどん意識が遠のくのを感じる。


指輪()をそちらに』


 言われるがままに指輪を傷跡に当てる。


「いっ!?」


 じゅっと音が鳴って、傷跡が焼かれたのがわかった。回復魔法は使えないんだね。


『形の無い物を生み出すのは、もうそれは回復魔法ではありません』


 そういうことか。人の腕は造れないんだね。


「はあ……」


 陵が間に合わなければ、間違いなく私もアストレアも死んでいた。本当に良かった。


 上空を見上げると、その先では陵と敵が激しく身を削り合っている。あのレベルの敵に陵が勝てるのか、正直な所を言えば私も自信は無かったりする。


 あ~、駄目だ。意識が……


 **


 敵の攻撃を先に制する。相手が振るった剣が振り切られる前に圧して後退させる。一度たりともお前にペースを譲る気は無い。


 刀を右手に、剣を左手に、流れるように違う種類の斬撃を重ねる。


 それでも、敵の身体に刃が当たることはない。後何手重ねれば相手は死んでくれるんだ?


 何度も何度も斬り付ける。


「その程度で神に歯向かうか」

「だったらどうした」


 殺せはしないが、お前に俺を殺す手段が無いのも事実だろう?


「これならどうだ?」

「っつ!?」


 急に炎、氷、雷の槍が生み出されて、俺の頬を霞めた。躱すしかなく、少し距離を取らされてしまった。


 "空歩"×"縮地"の組み合わせで、一気に相手に距離を詰める。


 何度切り付けても、相手の首に俺の刀も剣も届くことはない。


「第一使徒が手も足も出なかったと聞いて来てみたが、この程度か」

「……ああ、もういいや。お前」


 一々上から目線なのもムカつくが、神々の力とやらを使って偉そうにしてるのがもっとムカつく。


 "死眼"を発動させて、相手を死に至らしめる道を視界に描く。


 アマたんから受け取った神刀"断絶"を取り出す。アマたんから受け取った武器は何本かあるが、全てを切り伏せて相手を殺すならこいつが良い。


 人のレベルで、武術だけで戦っていた今までとは違って、今度は俺の全てを使ってお前をぶち殺してやる。


 ……第二ラウンドだ。


 **


「みっちゃんっ!?」


 僕が神王国ヤマトに辿り着いた時には、既にみっちゃんは意識を失っていた。


 指輪、みっちゃんは生きてるんだよね?


『はい。疲弊により意識を失っています』


 左手薬指に着いている僕があげた指輪の言葉を聞いて安堵する。それくらいには彼女はボロボロだった。


「りっくんは何処に……」

『上です』


 ハッと上を見上げると、そこには上級神と殺し合うりっくんの姿が見えた。


 あのりっくんの怒りの様を見るに、彼がみっちゃんをこんなにした犯人なんだろうね。


 戦況としては若干りっくんが不利か……


『天照大御神様』

「ん?」


 りっくんが持ってるはずの指輪から、私に言葉が飛んできた。


『援護を』

「……要らないよ」


 りっくんと相見える神は上級神レベル。わかりやすく言い替えるならば、僕や最高神(アラティナ)の様に特別になれなかった神々の最上位に位置する神様だ。

 まあつまり、とんでもない力を兼ね備えているわけだけど、それでもりっくんが勝つよ。


 彼が持つ"相思狂愛"というスキルは、僕の力を持ってしても抑えることが出来ない。

 やがてそのスキルが作用すれば、あの上級神は空すら飛べなくなる。


 ほら、地面に落ちていく。


 彼と敵対していた上級神は、まるで空中を歩けなくなったかのように地面に叩き付けられた。それをりっくんは戸惑いなく追い掛ける。


 "相思狂愛"ってスキルは、あらゆる能力や呪い、制限を無効化する。


 だから、上級神の魔法は全て分解されて消えていく。火の槍も氷の槍も、水の矢も土の矢も関係ない。彼が全力で手段を問わずに"殺す"と決めた以上、それはあっさりと空に消える。


 やがて、りっくんの一太刀が上級神を切り裂いた。


 チェックメイト。


 僕はみっちゃんの救護をしておけば良いだろう。


 **


「これほどとは……」

「……」


 さっきから言ってることが二転三転しやがる。


「貴殿ほど強ければ、ぜひ、我の力を」


 そいつの腕を切り飛ばした。


「そんなもん、必要ない」

「ぐう……」

「俺の大切な者に手を出した。それだけを悔いて死ね」


 次は反対の腕を、その次は足を、脚を切り裂いて、ダルマになった男の腹に剣を突き立てる。


「神、らしいな?」

「ああ、そうだとも、だからっ」


 腹を踏み付けた。


「がはっ」

「この世界の神々は俺たちと敵対する事を選んだ。……そういう事なんだろ?」


 この世界の神々と戦争をする必要があるわけだ。


「我らと敵対する? 随分と酔狂なことを」

「なんでお前が勝手に酔狂だって決めてるんだよ。もうお前たちにはウンザリだよ」


 神々の何かに巻き込まれたのはこれで何回目だろうか?


 この世界に来たのもそうだし、依頼をしてきたのもそうだ。それから、俺たちを危険だと排除しようとすらする動きもあった。


 そして今回は、美玲の腕を奪った。


 世界を壊すのには充分だろう。


「さっさと死ね」


 闘いの神だとかほざいていた男の首を切り落とし、肉体を惨殺した。


『陵様』


 指輪の声が頭に響いた。


『"闘神"の魂を吸収しますか?』


 それを吸収するとどうなるんだ?


『陵様の更なるパワーアップが望めます』


 今回は簡単に仕留められなかったしな。指輪の提案に従うとしよう。


『承知致しました。では、"闘神"の魂を回収します。私を前方に向けてください』


 指輪を目の前に差し出すと、その指輪に向けて確かに何かが集まったのがわかった。


 これ結局どうするんだ?


『陵様の魂に統合させます』


 え、何かその響き嫌なんだが。乗っ取られたりしそう。


『それは無いのでご安心を』


 そうなのか。魂が混ざったらヤバいイメージあるけどな……


『正確には“相思狂愛”という能力があるので、陵様の意識が絶対に“闘神”の意識を塗り潰します』


 その能力、意味わからないんだよな。


 ってか家に帰らないと、美玲の怪我は死ぬほどでは無かったけど……


 家に帰るとリビングには応急処置が施された美玲がソファに横たわっていて、ダイニングには天照大御神(アマたん)が座っていた。


「やあ、りっくん」

「来てたのか」

「大変だったね。あいつは」

「殺したよ」

「流石だね」

「……お前は敵か?」

「まさか、僕は今回は関係ない」

「そっか、悪いな。ちょっとピリついてる」


 アマたんを疑ってしまったことに、大人しく頭を下げた。


「神を一括りにしたい気持ちはわかるよ」

「いや、どっちかというと、俺達に手を出したことの意味を解らせたくてだな。誰を殺せばより効率的に恐怖を植え付けられるかなって」

「随分と怖いことを考えてるね」

「そりゃそうだろ。ってか、神を殺すのそんなに難しくなかったんだけど、聖王国の神は殺すのは難しいのか?」


 神王国ヤマトを建国した理由としては、俺たちを地球から攫った神が主である聖王国ブライドリースを潰す為の道具として……が、元の理由だったはずだ。

 けど、こうやって神を殺せるなら困らない気がするんだよな。このまま単身で乗り込んだって倒せると思うんだけど……


「今回、神に勝てたのは君の大切な者が傷つけられたからだ。だから、勝てただけだよ。あのスキルが神の力を封じたんだ」

「へえ、よくわからないな」

「実感は無いだろうけど、君のスキルは君とみっちゃんに関係する事柄に準じて発揮される効力が上がっていくんだ。僕も正確にはわからないけど、そこら辺は君の方が感覚としてわかってるんじゃない?」

「……そうかもな」


 確かに最初は今回の敵の魔法を分解する事は出来なかった。でも、暫くして、勝手に分解されるようになった。先と後の違いは俺がより相手を殺そうと思ったからだ。

 まあでも、その感情の中に美玲への想い的な物があったかと言われると微妙だ。


「それよりさ。りっくんはみっちゃんの腕が無くなった事に何も思わないの? 治してくれとかって言われると思ってたんだけど」

「あんまりそこは興味無いかな。姿形が変わっても美玲は美玲だし。でも、彼女が治して欲しいと言うんだったら叶えて上げて欲しい……かな?」


 片腕が無くなった程度、俺からしたら些細な事だよ。


「なるほどね。まあ良いや、じゃあ、目覚めるまで待機かな?」

「だな。それ以外の外傷は無いのか?」

「特には無さそうだよ。見せしめとして片腕を斬り落とされたみたいだね」

「……なるほどな」


 片腕が無くなったことよりも、大切な相手が痛めつけられたという事実の方が俺にとってはよっぽど大切で、さあ誰に責任を取らせようかと、頭をぐるぐると悩ませることになった。

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学園モノはカクヨムにて→欠落した俺の高校生活は同居人と色付く。

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