婚約者に改めてプロポーズしたら、「生理的に無理です」と泣かれた。俺の方が泣きたい……
「どうか、俺と結婚してください!」
婚約者に自分のデザインした渾身の指輪を渡して、正式にプロポーズをした。
俺と彼女との婚約は政略ではあったが仲は良好で、婚約者も喜んでくれると俺は思っていた。
しかし、彼女は悲しそうな顔をして――――
「とても、素敵な指輪だと思います、が……ごめん、なさい……わたくしは……が……生理的に無理、なんですっ……」
そう絞り出すような泣きそうな声で言った。
「え?」
「わたくし達のこの婚約が、政略だということは十二分に判っております。つきましては、親族の中よりこの婚約に相応しい女性を複数名お選び致しますので、あなた様がお決めになってください。この数年間、とても楽しく過ごさせて頂きました。あなた様のご健勝を、心よりお祈り致しております。それでは」
「は?」
ぽかんとする俺を置いて、
「失礼、致します……」
慇懃に挨拶をして、悲壮な顔で彼女は去って行った。
俺は、真っ白になった。
あぁ・・・泣きたい・・・
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俺と彼女との婚約は政略だった。
我が領の名産は時計やアクセサリー、装飾品などの細工物。そして近年、彼女の実家が治める領内から宝石の鉱脈が発見された。
領主同士である父親達が知り合いで、それなら互いの身内を婚約させようと、とんとん拍子に話が進み、俺と彼女との顔合わせが決まった。
初めて会ったとき、彼女の肌の白さにハッとして、それからアクセサリーが映えそうだと思ったことを覚えている。この子を、着飾らせたい! と、そう思ったことをよく覚えている。
彼女は顔立ち自体は派手とは言えないけれど、色が白くて綺麗な肌をしていた。線が細くて、華奢な首筋や手足。ほっそりとした指先。
ブレスレット、アンクル、指輪、イヤリング、ネックレス……どんな宝石が彼女に似合うのだろうか? そう考えると胸が高鳴った。
彼女に、俺のデザインしたアクセサリーを身に付けてほしい、と思った。
緊張しながら、婚約したら俺のデザインしたアクセサリーを贈ってもいいかと聞くと、彼女は頬を染めて嬉しそうに「はい、楽しみにしていますね!」と答えてくれた。
そうして、俺と彼女は婚約した。
暫くして、約束通りに彼女に俺のデザインをしたアクセサリーを贈った。彼女はとても喜んで、嬉しそうに笑顔を見せてくれた。
可愛かったっ! 悩んだ甲斐があったぜ! と、喜んだのも束の間。
その後、彼女は体調を崩してしまったとのことで、非常に心配した。
お見舞いにも行こうとしたけど、面会はできないから遠慮してほしいという返事が来て、更に彼女が心配になった。
身体にいいという食べ物を送ったり、花やメッセージカードを贈ったりして、やきもきしながら過ごし――――
数週間後に彼女が回復したと連絡があって、とても安堵したことを覚えている。
その後、久々に会った彼女が少し痩せていたことに気付いて、胸が痛んだ。
それから、彼女に無理をさせないよう気を付けながら、ゆったりとしたデートをした。少し痩せてしまってはいたが、思ったよりも元気そうでほっとした。
そんな風にして彼女とは絆を育んで行った。
それからも折に触れ、彼女に幾つかアクセサリーを贈って――――
彼女は喜んで受け取ってくれていた、と思う。
ただ、彼女はあまり俺の贈ったアクセサリーを着けてはくれなかった。
思い切って俺のデザインしたアクセサリーが気に入らないのかと聞いてみると、
「どれも素敵なので、着けるのが勿体なくて」
と、俯いて答えた。そして、
「実は、お恥ずかしいのですがサイズの方がちょっと……」
と続けられて、俺の方が慌てることになった。
彼女のサイズに合わせて作ってもらった筈なのに、サイズの合わない物を贈ってしまい、しかも身に着けてくれない理由を尋ねて彼女に恥を掻かせてしまった。
そのお詫びにと、俺は彼女へ贈ったアクセサリーのサイズを直して、もう一度彼女へ贈ると約束した。
そして、彼女の申告したサイズに直したアクセサリーはというと・・・
女性にこう言ってはいけないのかもしれないが・・・彼女のアクセサリーの着こなしというか、身に着け方が、なんというか独特だった。
なぜそういう着け方をするっ!? と、思わずツッコミたくなってしまうくらいには。
まぁ、彼女へツッコミを入れるのは我慢しているが・・・
ブローチなどの付け方は普通。けど、それ以外は微妙だ。ブレスレットを長袖や手袋の上から付けたり、ネックレスを襟の詰まった服の上から付けたりと、長いネックレスやサイズの大きいブレスレットを好む。もっといい感じの着け方があるのに。
アクセサリーや宝石は肌の上に乗せてこそ映えると思うんだがな・・・?
そして、ピアスやイヤリングなどの耳飾りは、贈っても一切着けてくれなかった。
なんでも、耳飾りをどこかに引っ掛けて耳たぶが千切れてしまったという人の話を聞いてしまったとかで、それ以来怖くて耳飾りの類は着けられないのだそうだ。
残念だが、そこまで怖がるなら仕方ない。
それから・・・やんわりとだが、アクセサリーの着け方をそれとなくアドバイスをしてみた。しかし彼女は気付いていないのか、微妙なアクセサリーの着け方は一向に直らない。
それ以外には、彼女は普通に可愛いし、感じもいい。俺の両親とも、相性は悪くなさそうだ。
そういう風にして、数年間。俺なりに仲良く過ごして来たつもり・・・だった。
俺は、自分が段々と彼女に惹かれて行っていることに気付いた。
だから、気合を入れて婚約指輪をデザインした。
俺がデザインしたアクセサリーを、彼女に身に付けてもらって、彼女の家と俺の家が提携して作ったアクセサリーなのだと、彼女を広告塔にして自慢するのが今から楽しみで堪らない。
そして、漸く仕上がったという連絡を受けて、指輪が手許に来るのを待って彼女に約束を取り付け、正式にプロポーズをしたというのに・・・
どうしてこうなったっ!?!?!?
✰⋆。:゜・*☽:゜・⋆。✰⋆。:゜・*☽:゜・⋆。✰
なにかの間違いだと思いながら、どうか夢であってくれ! と強く願いながら数日が経った。
そして――――
彼女の家から、正式に婚約者の交代を申し入れられたと両親に告げられた。
「・・・」
彼女の言った、「生理的に無理なんです」という言葉はやっぱり夢ではなかったらしい。
絶望しかない。
「・・・俺は、臭いのだろうか?」
「は?」
「臭いのは口かっ!? それとも腋かっ!? 足なのかっ!? それとも香水のチョイスが悪いのかっ!? 息ができない程キツく香水を匂わせていたりするのかっ!?」
気付けば俺は、近くにいた侍女に詰め寄ってそう訊いていた。
「い、いえ、そんなことはありません」
侍女は驚いた顔で否定する。
「じゃあなんなんだっ!? あれか、俺の話し方が威圧的だったりするのかっ!? それともこの顔が悪いのかっ!? 食べ方が汚いのかっ!?」
「い、いえ、わたしにはわかりかねますっ!」
と、侍女は怯えた顔で逃げて行った。
「・・・俺の、なにがいけなかったんだ・・・」
実はあれか? 今侍女が逃げて行ったように、彼女も俺のことを怖がっていたのだろか? 政略だからと、家の為にと、ずっと俺に我慢していたのか?
でも、とうとう結婚するとなってやっぱり無理だと、断るならあのタイミングだと思って、『生理的に無理』なのだと打ち明けたのだろうか?
俺の、なにが生理的に駄目だったのかはわからないまま、時間だけが過ぎて行き――――
父から、彼女の家から新しい婚約者候補にと釣書が送られて来たとのこと。
俺は、絶対に嫌だと、ごねにごねた。
だって、数年間一緒に過ごして、いい感じだと思っていた相手に、「生理的に無理なんです」と涙目で言われて振られた男だ。
そんな男が、嬉々として新しい婚約者を探せると思うか? そんなの、俺には無理だ。
せめて、俺の一体なにが『生理的に無理』なのかを知りたい。そうじゃないと、涙目だった彼女みたいに、他の女性も傷付けてしまうことになる。そんなのは怖い。
俺は今、ハートブレイク……というか、絶賛ハートクラッシュ中だっ!! 粉々なんだよっ……だから、もう少しそっとしておいてほしい。
それに、あんなことを言われたというのに――――
俺はまだ……彼女のことが好き、なんだ。
結婚するなら、彼女がいい。と、そう思って――――
って、もしかしてこういうところなのかっ!? 俺が彼女に生理的に無理って言われたのはっ!? 俺は気持ち悪い男なのか~~~~っ!!
と、俺は更にへこんだ。
・・・ツラいっ!!!!!!
こんな気持ちのまま、新しい婚約のことなんか考えられない。
送られて来た釣書きは見たくないと言ってうだうだと過ごしていた。
うじうじと、うじうじと過ごして――――
彼女の家の方から、また連絡があった。
俺からの返事が遅いのは、新しく選出した婚約者候補が気に入らないからだろうか? というようなことを遠回しで伺うような、催促の手紙。
それを読んで・・・俺のことを気に入らないのはそっちの方だろっ!! と、思った。
だから、彼女に会わせてほしいと返事を返した。『一体、俺のなにがいけなかったのかを、どうか直接会って教えてほしい。長年不快な思いをさせてしまっていたのなら、謝りたい。もし、顔も見たくない程に俺のことが嫌いなのだとしたら、この手紙は無視して構わない』と。
すると、彼女から俺と会ってもいいという返事が返って来た。
彼女とまた会えることに嬉しく思い、けれど彼女には『生理的に無理なんです』と言われてしまうくらいに嫌われていることを思い出して滅茶苦茶ツラくなる。
毎日身体を清潔にして(使用人達にはやり過ぎだとドン引きされた)、話し方や自分の癖が他人を不快にさせていないか? と、考えて不安な日々を過ごし――――
とうとう、彼女と話す日がやって来た。
当日は、色々と考え過ぎて、不安過ぎて泣きたくなったり、気持ち悪くなって吐きそうになったが、全部我慢した。
そして、彼女が部屋に入って来た。
ほっそりとした身体にシンプルなドレス。薄く化粧はしているみたいだが・・・やっぱり、俺の贈ったアクセサリーの類は一切身に着けていなかった。
寂しさと喪失感に襲われるも、まずは謝ろうと思った。すると、
「申し訳ありませんでしたっ!!」
彼女の方から深々と頭を下げて謝られてしまった。
「へ?」
「あのっ、勘違いをされているように思いますが、わたくしが生理的に無理なのは、あなたではありませんっ!」
「は、い? ・・・え? なに? どういうこと?」
そして彼女は泣きそうな顔で、意を決したように口を開いた。
「実はわたくし、金属アレルギーなのです」
「は?」
意味がわからなくてぽかんとする俺に、更に言い募る彼女。
「ですから、わたくしは金属アレルギーなのです。金属に長時間触れていると、皮膚が爛れてしまうのです。ですからっ・・・あなたから頂いたアクセサリーの数々は身に着けられないのっ!!」
悔しそうに、涙を浮かべて彼女は喚くように言った。
皮膚が爛れるのは、男でもつらい。ましてやそれが、おしゃれを楽しみたい年頃の女性……それも、楽しみたい筈のアクセサリーが原因でそうなってしまうのなら、どれ程苦しんだことだろう。
しかも、俺はそんな彼女の苦しみを全く知らず、原因となる物を、贈り続けていた。
挙げ句、どうにか苦心して身に着けてくれていたアクセサリーの着け方にまで苦言を呈する始末。
こんな俺じゃあ、彼女に嫌われて当然で・・・
「わたくし達の婚約はうちと、あなたの領の産業を盛り立てて行く為の婚約っ! だから、あなたはわたくしに自分でデザインしたアクセサリーを贈ってくれたのでしょう? わたくしを広告塔にする為に。でもっ、わたくしはあなたのくれたアクセサリーをっ、身に着けることができないのっ!? そんなわたくしは、この婚約にっ……あなたの隣には相応しくないのっ!!」
真っ赤な顔で言い切った彼女は、
「・・・わたくしの代わりに選んだ子達は、みんないい子なのでお返事はなるべく早めにお願いします。では、失礼致します」
大きく息を吐いて、深々と頭を下げて出て行ってしまった。
俺が、彼女の涙に呆然としている間に・・・
って、呆然としている場合じゃないだろっ!!
彼女の閉めて行ったドアを開け、すたすたと歩いて行く彼女を走って追い掛ける。
「待ってくれっ!!」
そして、なにも着けられていない手を掴む。
「きゃっ」
いきなり手を掴んだことに驚いたのか、可愛らしい声を上げる彼女。
「いきなりごめん、でも待ってくれ! 俺は、君がいいと思って君と婚約したんだ。君以外との婚約は、考えられない。広告塔とか、そんなことは本当はどうでもいいんだ。俺はっ、君のことが好きだからっ」
「え?」
俺を映し、ぱちぱちと瞬く瞳。その目が大きく見開かれ、そして頬がサッと朱に染まる。
か、可愛いっ・・・
「わ、わたくしの話を聞いてなかったのですか? わたくしは、金属アレルギーで、あなたの作るアクセサリーは身に着けられません。広告塔にはなれないんです。わかっていますか?」
「そんなことはどうでもいい。俺と婚約を解消した後、君はどうするつもりなんだ?」
「それは・・・あなたには関係ありません。わたくし達の婚約はもう、解消されているのですから」
「関係ならあるっ!! さっきから言っているだろ、俺は君のことが好きで、君と結婚するつもりなんだから! まだ、俺は婚約解消を了承していない。だからっ、お願いだから一人で勝手に決めないでくれ!」
「え?」
「俺は、君がいいんだ。俺は、ずっとっ……君のことが好きだった!」
「……家のことは、どうされるおつもりですか? わたくし達の婚約は政略だと」
「俺達がそのまま結婚すればいい。俺は元々、細工物のデザインの方が得意で、社交はそんなに得意じゃない。だから、広告塔には弟とその婚約者になってもらえばいい。俺は領地経営と、君の家との提携に専念する。ああ、もし君が社交を頑張りたいと思っているのなら、社交も頑張るから。だから・・・」
と、彼女の手を取って跪き、
「俺と結婚してください」
真っ赤になった彼女の顔を見上げて懇願する。
本当なら、ここで俺のデザインした婚約指輪を差し出す筈だった。けど・・・
彼女は金属アレルギーで、金属でできた指輪なんて身に着けられる筈はない。
「……ゎ、わたくしはっ、結婚の証の指輪を身に付けられなくて……ふ、不貞をするような女だと思われてしまうんですよっ!?」
結婚指輪は、既婚の貴族女性が身に付けるのが当然の風習。既婚なのに指輪を外しているという意味は、『結婚相手に愛が無い』、もしくは『不貞をします』という風に捉えられてしまうことさえある。
「それでも俺は、君がいい。指輪なんか付けてくれなくてもいい! 風習なんかクソ食らえだ! でも、君が気にするって言うなら、金属じゃない指輪を作る!」
俺がそう言った瞬間、
「ぅうっ……」
彼女の目にみるみるうちに涙が流れて行く。
「なっ、ど、どうしたっ!? や、やっぱり俺のことがそんなに嫌なのかっ!?」
思わず狼狽え、彼女の手を放そうとしたら、
「え?」
ぎゅっと逆に彼女に手を握られた。
「ふふっ……さっきから、違うって言ってるじゃないですか。もう……」
泣き笑いの顔で俺を見下ろした彼女は、
「そこまで仰るなら、喜んで」
赤い顔で微笑んだ。か、可愛いっ・・・
と、こうして俺たちの婚約が正式に決まった。
廊下の真ん中で熱烈なプロポーズをしてしまい、振られ掛けても諦めずに押して彼女に頷かせたことを、使用人と、駆け付けて来ていた母親に見られていて、盛大にからかわれながら祝われて、めちゃくちゃ恥ずかしい思いをしてしまったけど、頬を染めた彼女が可愛かったからよしとしようじゃないか!
死ぬほど恥ずかしかったけどなっ!?
✧˖°⌖꙳✧˖°⌖꙳✧˖°⌖꙳✧˖°⌖꙳✧˖°⌖꙳✧˖°⌖꙳✧
それから、俺と彼女は両家を繋ぐ為に結婚した。
広告塔になるのは弟とその婚約者にまかせて、俺と彼女は裏方として動いている。
金属アレルギーの彼女が身に着けられるアクセサリーは少なくて、時折羨ましそうな顔でアクセサリーを見詰める彼女の為に、金属が肌に当たらないように工夫したり、金属自体を使用しないで木枠に宝石を填めたものや、天然石を切り出して削り、腕輪や指輪に加工したアクセサリー作って彼女に渡したら、感動されてしまった。
「わたくしの為に、一生懸命考えてくださってありがとうございます」
やっぱり、彼女は可愛い!
「もし娘が生まれても・・・わたくしと同じように金属にアレルギーがあっても、わたくしのような悲しい思いをしなくて済みますわ」
と、彼女はそっとお腹を撫でて優しく微笑んだ。
「ありがとうっ!!」
彼女の手を取って、感謝の言葉を告げる。
本当は抱き締めたいけど、それは我慢する。妊娠中の女性はデリケートだから。
――――ああ、あのときに彼女に嫌われたと諦めなくてよかったっ!!
みっともなく足掻いて、カッコ悪いところも情けないところも見られて恥ずかしい思いもしたけど、それでも、彼女と結婚できた俺は最高に幸せだ。
読んでくださり、ありがとうございました。
※アレルギー情報追記あり。
一応読まなくても大丈夫ではありますが、金属アレルギー持ちや、その疑いがある方、身内に金属アレルギー持ちがいる方は、この長いあとがきを読むとちょっと役に立つ? 情報があるかもです。
ということで、『婚約者に改めてプロポーズしたら、「生理的に無理です」と泣かれた。俺の方が泣きたい……』終わりました。
実はこの話、書いてる奴が金属アレルギーなんで思い付いた話です。貴族のお嬢様的にはどうなんだろうなぁ……と。
まぁ、主人公はそのお嬢様の婚約者で、意味不明に「生理的に無理」と言われてへこみ捲り。でも、うだうだしながらも諦めない! というラブコメになりましたが。(笑)
金属アレルギー持ちって、指輪に限らず、アクセサリーや腕時計がなかなか着けられないんですよね。真珠の連なったネックレスや革製品など、金属が肌には触れないアクセサリーなら大丈夫……というワケでもなく、ネックレスやブレスレットなどは留め金部分が金属製になっているので、その部分が当たるところが痒くなりますし。服でも、金属のスタッズや、実用性の無いおしゃれファスナーがたくさん付いているような服、ファスナーが直接肌に触れるような服は着られません。
ちなみに、婚約者令嬢が服の上や手袋の上からという変なアクセサリーの着け方をしていたのは、苦肉の策です。金属が肌に直接触れなければ、多少はマシなので。けれど、服の上からでも、汗を掻くとやっぱり痒くなったり気触れたりするので、短時間で外していました。
金属イオンが汗や水分に溶け出して、それが皮膚に触れると痒くなったり炎症を起こしたりするので、汗や水は敵です。
そして、彼女が数週間療養していたのは、皮膚が爛れていたからです。主人公がくれたアクセサリーで爛れた肌を見せたくなくて、治るまでお見舞いを断っていました。
おしゃれ好きな女の子には、かなりつらいでしょうね。
もしも彼が最初で諦めていたら、彼女は自領に籠るか修道院に入ることを考えていました。
彼が一途なお陰でのハピエンです。(笑)
そして、アレルギーの原因となる素材や含有量によっては、金属アレルギー持ちでも身に着けられるアクセサリーもありはします。
純金製やプラチナ製、チタン製などは比較的アレルギーが出難いそうです。が、値段がお高いんですよね。しかも、純金製のアクセサリーは合金である18金や24金に比べると強度が低くて、歪んだり壊れ易いみたいですし。
樹脂製やプラスチック製のアクセサリーという選択もありますけど、そっちは安っぽく見えるのが難点ですね。それに、プラスチックや樹脂にアレルギーが出る人もいるので、金属が駄目ならこちらがいいとも一概には言えません。
現に、書いてる奴は金属と樹脂が駄目です。(笑)
マグネットピアスやマグネットなんとか系の健康グッズ(例、○ップエレキバンなど)も、磁石は金属なのでアレルギーが出ます。お気を付けください。天然石でも、ヘマタイトなど金属製の天然石もあるのでご注意を。
作中でも彼女が語っているように、金属アレルギー持ちだと、金属が肌に触れているときに汗を掻くとアレルギー反応を起こして、皮膚が痒くなります。
そして、それを放っておくと皮膚が気触れたり、爛れたり、酷いと火傷をしたようなケロイド状になります。更に放置すると色素沈着で皮膚の色が変わったり、酷い痣が残ったり、最悪だと皮膚や粘膜が腐ったりもするそうです。耳たぶが腐って切断した事例などが実際にあるとか……
彼女が、耳飾りに恐怖していた本当の理由がこれです。
ピアスを空けて通した後、毎日ちゃんと消毒をしているのに炎症が治まらなかったり、傷口が熱を持ったり、じくじくと膿み続けるような場合はアレルギー症状の可能性があるので、ピアスの素材を変えるか、ピアス自体をスッパリと諦めることをお勧めします。
マニキュアのような医療用のコーティング剤を塗ってピアスを着けるという手段もありますが、コーティング剤が剥げるとアレルギーを起こすので、小まめに塗り直さないといけなくて、それも結構手間だと思います。※マニキュアのようなコーティング剤は、マニキュアではありません。医療用のコーティング剤を安価なマニキュアや接着剤などで代用すると、皮膚の弱い人は炎症を起こす可能性があります。
また、ピアスなどのアクセサリーだけでなく、変わったところでは歯の被せものやインプラント、骨折したときに体内へ入れるボルトなど、手術後に体内へ入れた金属でアレルギーの症状が出る、アレルギー体質に変わることもあるので、自分がどういうアレルギーを持っているのかを知っておくといいかもしれません。
身内に金属アレルギー持ちがいる方も、アクセサリーなどを身に着けているときに皮膚が赤くなったり、虫に刺されたワケでもないのに痒くなったりしたら、症状が酷くなる前にアクセサリーを外して、一度アレルギーを疑ってみた方がいいと思います。
※カラーコンタクトなども、外国製の安価なものには着色料に金属が使用されているものがあるため、重々お気を付けください。コンタクトレンズは直接眼球に装着するため、アレルギー症状が酷いと、最悪失明する可能性があります。
※金属アレルギー持ちでカラーコンタクトを着けたい方は、原材料に金属の含まれていない安全なカラーコンタクトを選びましょう。原材料がしっかり表記されていないものを選ぶと危険です。
以上、既に知ってる情報ばかりだったという方はすみません。
そして、感想で新しい金属アレルギーの情報を頂いたので、追記します。
なんと、金属アレルギーの症状が重い方はケーキやお菓子類でもアレルギー症状が出てしまうことがあるそうです。( ̄~ ̄;)
ケーキを手作りしたことがある方ならわかると思いますが、お菓子作りの器具は金属製な物が多いんですよね。泡立て器とか。しかも、ハンドミキサーでガガガと材料を混ぜると、微量な金属が混ざってしまうのも道理と言いますか……工場の大きな機械で作ると、家庭で作るよりも微量金属の混入が増えるのも当然かと。(´-ω-`)
体調が悪いときや免疫が落ちているときには、普段は平気な食べ物などでもアレルギー症状が出ることがあるのでお気を付けください。
そして、ミネラルが豊富な超硬水なんかも、金属アレルギー持ちは用心した方がいいです。ミネラルというのは、ずはり鉱物のことですからね。超硬水を飲んで喉がイガイガしたり、お腹を壊したり、体調が悪くなったりする人は、それ以上は飲むのをやめた方がいいです。超硬水……値段が高くてもったいなくても、身体を壊す方が大変ですからね。
他にも、海外旅行でやたら肌が荒れるという方も、お風呂の水が硬水で、実はアレルギー反応が出ているという理由だったりするかもしれません。日本の水は軟水が多く、ミネラル含有量が海外の水に比べると少ないので肌に優しいんですよ。
子供の好き嫌いなども、単なる偏食ではなくアレルギーが隠れていることがあります。『美味しくないから食べない』のではなく、『体調が悪くなるから食べたくない』、『これを食べたら気分が悪くなる』というのを言語化できなくて上手く伝えられていないということもあるので。
お子さんがいる家庭は、子供が嫌いだという食べ物を食べさせるときには、それがアレルギーでないかを注視して、アレルギーである可能性があるのなら、無理に食べさせない方がいいと思います。
なんだか愚痴っぽくなりましたが、こんな長いあとがきを最後まで読んでくださり、ありがとうございました♪
感想を頂けるのでしたら、お手柔らかにお願いします。