第2夜
朝起きると、お母さんがご飯を作ってくれていた。お母さんがまだ家にいるだけで僕は嬉しくなり、先程まで眠たい気持ちだったが、一気に目が覚めた。おはようお母さん、と声をかけるとお母さんは僕を見ずに声だけで返事をした。おはよう、今日は夕飯作ってる暇がなかったから自分で買って食べてね。お金は置いておくから、もう高学年だから一人でできるでしょ。わがままを言いたい気持ちも心のどこか片隅にあったが、それを言ったところでただお母さんを悲しませるだけだ。僕はただ、うん。とだけ返事をした。
学校から帰る途中、朝お母さんから貰った千円札で夕飯を近所のスーパーで買って帰り、一人で食べる。いつものことで流石に慣れてきたかな、と思うときもあるが、ふとした瞬間に寂しさを感じる。彼女は今日もあの場所にいるだろうか。孤独に耐えきれなく僕はまたあの丘に向かった。
今日は星よりも真っ先に彼女を探した。すると彼女は昨日と同じ場所で星を眺めているようだった。今日は何か話してみようと思い丘に来てみたが、いざその時になると緊張してしまい、うまく言葉が出てこない。数秒じっと立ったままだった僕ははっとして昨日と同じ位置に腰をつけた。そして僕も星を眺める。
しばらく綺羅びやかに輝く恒久の光を眺めていると、ふと彼女が、ねえ。と声を発した。
ー ねえ。
ー うん。
ー 昨日も君、ここにいたよね。
ー う、うん。き、君も昨日ここで星を眺めていたよね。
急に話しかけられたことや緊張していたこともあり、うまく言葉が出てこない。
会話が途絶えた。再び沈黙が訪れる。
何か話さないと…。
そう思っていると再び彼女から話しかけてきた。
ー ねえ。
ー うん。
気の利かない返事しか出来ない僕が嫌になる。
ー 君も星が好きなの。
ー いや、特に星が好きという訳じゃないけど…。
でも、と続けて僕は言った。