ダンの過去その1
「ぼっちゃん、あれどういうこった?」
俺達は直線に進んだはず。あんな円を描くような進み方はしていない。
「もしかしてエルフの里全体に隠蔽魔法とか結界かなんか掛けられてるんじゃないかな?真っ直ぐ進んでるつもりでも迂回させられてるとしたらあの柱の並び方の説明がつく」
「そんな魔法があるのか?結界魔法って誰か侵入したらわかるって奴じゃなかったか?」
「そうなんだけど、エルフなら知らない魔法使っててもおかしくないよね」
魔法は使えるが学んだ事がないのでどんな魔法があるか知らないが・・・
「取りあえず、下にはオーガが居なくなったみたいだし、降りて柱の中心に進んでみるか」
「そうだね、ここからだとわからないから近くまで行ってから柱伸ばして上から見てみよう」
初めっからそうすりゃ良かったなと思いながら下に降りる。
草木の燃えた臭いにオーガの焼けた臭いが鼻につく。まだ瘴気も流れてくるしさっさとこの場を離れよう。
柱が建っている方向に向かって進みだすとしばらくしてまたオーガが出始めた。気配もあちこちにあるためどこから来るかわからない。数の暴力とはこのことだろう。倒しても減らないならと空気の塊をぶつけて吹き飛ばしていく。土魔法なら結構な質量を飛ばさないとダメだが空気の塊は致命傷を与えない変わりに吹き飛ぶのだ。走り抜けるにはこちらの方が便利だ。
少しオーガが少なくなった所でダンの動きが止まる。
「ダン、どうした?」
ダンは止まったまま先をずっと見つめていた。
ガシャ ガシャ ガシャ
冒険者風の胸当て、肩当て等の防具を身に付け、剣を持った骸骨がこちらに向かって歩いてきた。
防具といってもぼろぼろになってかろうじて判別出来る程度で剣も錆びだらけだ。冒険の途中で死んだ冒険者なのだろう。
「フラン・・・、お前・・・なのか・・・?」
ダンは骸骨に向かって問いかける
返事をすることなくこちらに向かってくる骸骨
「ダン、何してんだよっ!斬るか逃げるかしろっ」
立ち尽くしたままのダンに声をかけるが動こうとしないダン。
俺が攻撃をしようとした
「やめてくれっ ぼっちゃんっ!」
「なんだよ、ダン?」
「あいつはフランだ」
「フラン?」
「俺が守れなかったフランなんだよっ!」
ダンが冒険者を引退する原因になった件か。骸骨は小柄だし、フランというのは女性の名前なんだろう。
ついにダンの目の前に来た骸骨はダンに襲いかかるがダンはその骸骨を抱き締めた。
ガタガタ動く骸骨はそれ以上ダンを襲うことはせずガタガタするだけだった。
「バカ野郎・・・こんな姿になっちまいやがって・・・」
涙を流しながらガタガタする骸骨を抱き締め続けるダン。
・・・ダン、大丈夫、また会えるから・・・
そんな声が聞こえた気がした時に骸骨はバラバラと崩れさり錆びた剣とぼろぼろの防具を残して消えてしまった
「フランっ フランっ 俺は 俺はお前が・・・」
その場に落ちた剣の前でダンは泣き崩れた
フランというのはダンの恋人だったのか・・・
俺は壁を幾重にもぐるりと作り、オーガどもが近寄れないようにしてからダンの元を離れた。しばらくそっとしておいてやろう。
シルフィードと二人で飯の準備をする。壁に阻まれてオーガどもも入ってくる様子は無い。瘴気は流れてくるがすぐに影響が出るものでもなさそうなので風魔法で瘴気を弱めながらの支度だ。
「ゲイル様、フランとは一体・・・」
「俺も詳しくは聞いてないんだけどね、ダンは仲間を守れなかったことで冒険者を止めたんだ。フランって言うのは多分その守れなかった冒険者だと思う。」
「そうだったんですか・・・」
「フランって人もスケルトンになってもダンの事がちゃんとわかったんだね。攻撃してきたのかと思ったけど違ったみたいだし」
「そうですね。ダンさんも一目で解ってたみたいですし、絆が深かったんでしょうね」
なかなかこっちに来ないダンに俺達は心を痛めながら鹿肉を焼く準備と米を炊いていた。
米が炊き上がった頃にダンが錆びた剣とぼろぼろの防具を持ってこちらに来た。
「すまなかったなぼっちゃん」
「いや、大丈夫だよ。もういいの?」
「あぁ、二度目の別れだ。今度はちゃんと見送ってやれたような気がするぜ」
「ご飯食べる?鹿の焼き肉とご飯だよ」
「タレは残ってるのか?」
「まだあるよ」
「それはありがてぇ。ぼっちゃんのタレは絶品だからな」
「お酒飲む?」
「いいのか?」
「少しだけね。壁を相当厚くしてあるからオーガも入って来れないみたいだし、今日はここでこのまま泊まろう」
「なら、こいつにも飲ましてやるか。こんなキツイ酒飲んだことねぇからビックリしやがるぜ。それにぼっちゃんの作った焼き肉のタレと米だ。先に死んじまったことを後悔するといいぜ」
涙を浮かべながらカッカッカッカと笑ったダンは錆びた剣の前に焼き肉丼と蒸留酒を供えた。
「ダン」
「なんだぼっちゃん?」
「フランって人は恋人だったの?」
「恋人って訳でもねぇが守るべき人ってやつだ」
「気のせいかもしんないけど、消えるときにフランさんの声が聞こえた気がするんだよね」
「声が?」
「うん、大丈夫また会えるからって」
「どういうこった?」
「よくわかんないけど、そう言ってた声が聞こえた気がするんだ。」
「そうか、また会えるか・・・」
「うん、きっとまた会えるよ」
「そうだな、骸骨になってまで会いに来やがったんだ。そのうちまたなんかになって会いに来るかもな」
そう言ったダンは焼き肉丼をかきこみ蒸留酒で一気に流し込んだ。
「かぁーっ!やっぱり旨ぇわ、ぼっちゃんの飯はよ」
「タレ残ってて良かったよ。フランさんも美味しいって言ってるかな?」
「そんなの決まってやがる。アイツは良く食ったからな。早くおかわりくれって言ってんじゃねーか」
「それなら、もういっぱい作るからお供えの分はダンが食べて。新しいの供えてあげて」
ダンはお供えの焼き肉丼を食べて、俺は新しい丼を供えた。
「ぼっちゃん」
「なに?」
「昔話をしていいか?」
「いいよ。」
ダンはチビチビと蒸留酒を飲みながら自分の過去を少しずつ話し出した。
こんな時に俺も酒が飲めたらいいなと思ってる横でシルフィードは自分のコップに蒸留酒を注いでいた。




