シルフィードの杖
俺は慌てて契約印から手を離した。が、ここで照れたり恥ずかしがったり謝ったりしてはいけない。医者の診察と同じだ。
「シルフィード、もう服下ろして大丈夫だよ。やはりエルフの契約印だったね。推測通りだ。」
「はい・・・」
ぐすっと、鼻をすするシルフィード。
「父さん、母さん。この契約印はどうすれば解除出来るの?」
「ゲイル、契約印は契約を結んだ者しか解除出来ないと言われている」
「じゃあ、シルフィードのお父さんを探し出さないとダメなんだね?」
コクっと頷くアーノルド
「シルフィード、魔力500というのは俺の魔力が自然増加だけだったとしたら20歳くらいで到達する魔力量なんだよ。だから人族の平均値くらいなんだと思う。お父さんを探し出すのは時間が掛かるだろうから、魔法最適化に重点を置いて練習しよう。植木鉢一つの苗を作るのに今は80の魔力を使ってる。これを最大効率化して、5くらいまで減らしていけば魔力量が今より増えたのと同じになるから問題ないよ」
そう、500しか使えないとか嘆くのではなく、効率を上げればいいのだ。
「そんなに最適化出来るものですか?」
「出来るか出来ないかじゃなくやるんだよ。シルフィードは村の役に立つのが目標なんだろ?俺も手伝うから。それに道具を使えば案外簡単に出来るかもよ」
「道具?」
「ミスリル銃みたいなヤツだよ。攻撃魔法じゃないから形を変えないとね。」
その日の話はそこで終わりにした。
明日、ドワンと相談してみよう
試してみたいこともあるからそれも上手くいくといいな。
翌日商会
「やっぱりグリムナの娘じゃったか」
シルフィードとも話し、昨日の内容をドワンにも話した。
「確定じゃないけど父さんは間違いないだろうって言ってた。やっぱりっておやっさんもそう思ってたの?」
「どこか面影を感じたからの。これで他人じゃったら驚くわい」
へぇ、グリムナってエルフはやっぱり美形だったんだろうな。母親も美形なはずだ。ボロン村の女性は美形ばかりだったからな。
「で、魔法最適化の促進ってミスリル銃でも作るのか?」
「あれ攻撃魔法のイメージを強くするものだがらね。違う形のにしたいんだ。植物魔法と治癒魔法とかに合うやつ」
「じゃあ、杖じゃな。魔法を使う奴は杖を持ってるヤツが多い。」
ルーンスタッフとか言うヤツか?
「魔法使いの杖って大げさだよね。美少女で魔法使いの杖を持ってたら冒険者に勧誘されまくったりしない?」
「ぼっちゃん、その可能性はめちゃくちゃ高い。この辺歩くの難しくなるぞ」
「やっぱりそうだよねぇ。そもそもあの杖はどういう意味があるの?」
「ほとんど意味がないものから魔道具まで様々じゃ」
「魔道具?」
「使う魔法の威力を増大させる機能がある。遺跡とかから出てくるやつじゃな」
威力が上がるということは最適化されるというのと同じだな
「おやっさん、その魔道具を作れないの?」
「バラしてみりゃ仕組みがわかるかもしれんが遺跡から出る魔道具をバラさせてくる奴なんぞおらん。二度と元に戻らんかもしれんからな」
そっか、残念
「魔法使いの杖はあんなに大きさがいるの?」
「遺跡から出てくるのがみんなあんな感じなんじゃ。そうじゃない杖はそういったものを真似てデザインされてるだけじゃと思うぞ」
「シルフィードに作ってもらう杖は小さいほうがいいな。ポケットとかに入れて隠せるくらいのやつ」
「そりゃ構わんがそれだとただのミスリルの棒とかわらんぞ」
「それにね、これをはめて見て欲しいんだ。」
俺は昨晩実験で作った緑の魔石をドワンに渡した。
「これは植物魔法の魔石か?」
「当たり!使えるかどうか解らないから小さいけど、使えるなら大きいのを作り直すよ」
「なるほど、試してみる価値はありそうじゃの。明日までに作っておく。森で試すから味噌豚丼の用意をしておけ」
俺はヘイヘイと返事をした




