八話
「クリスタ!まずいぞ、もう日が暮れる!早く寝床を確保しないと!」
「かしこまりました。ご主人様、全て私にお任せください」
「ああ、頼んだぞ!」
全てクリスタに頼ることになってしまうが仕方がない。俺に野営の知識など皆無なのだから。
それから、まずクリスタはクンラビットの死骸を回収しに行った。その様子を遠くから眺めていると、クンラビットの死骸が一瞬にして消えた。
「……!?」
一体何事!?すると、戻ってきたクリスタになにをしたか聞いてみると、固有スキルの無限収納スキルを使ったらしい。効果は生きている物以外であれば、なんでも無限に収納できるのに加えて、収納しているものの時間を止めることもできるらしい。また、その逆も然り。また何ともテンプレな能力だなぁと思うと同時に、なんと便利な、と思うがクリスタが持っているのなら俺にはいらないなと考えた。そしてーーー
「では、急ごしらえですが、今から魔法で家を建てます」
「ああ、おっけー」
ふー、なんとかなりそうだな。さすが、クリスタだな、頼りになる。……………あれ?今なんかおかしなこと言わなかった?
えっと、たしか魔法で……なにをどうするって?
「あの、クリスタ今言ったこともう一度ーーー」
「では、いきます!」
クリスタがそう言うと、両手をこの広場の中心地へと向けた。すると、その空間に何か大きな力が集まり出したのを感じた。と言うのも、その空間が僅かに青白い靄のようなものに満ちていたからだ。
「なにこれ!?」
えっ!?ちょまっ!どゆこと?なんか変なもん見えんだけど!?
俺が何度も目を瞬きさせて目の前の光景を疑っていた。そんなふうに混乱していると、空間に少しずつ家の輪郭をしたものが浮かび上がってきた。すると、あっという間に煉瓦造りで、二階建ての洋風の一軒家が現れていた。
…………………………………………ハッ!?
やばい、一瞬意識が飛んでた。これにびっくりするなと言う方が無理なのだけど。
ふー、とりあえず一旦落ち着こう。そう、頭をクリアに起きた事実を素直に受け止めねば。………いや、やっぱ無理だわ。これを驚くなとか無理。え?なんなの?魔法がいくら万能だとしても、限度があるでしょうっ!?。相変わらずクリスタは俺を驚かせてくれる。腰を抜かさなかっただけでも褒めて欲しいくらいだ。いつか、本当にショックで死にそうだ。
それよりも、さっきからクリスタに呼ばれている気がする。早く返事を返さないと心配をかけてしまうかもしれない。
「ーーご主人様?大丈夫ですか!?ご主人様!!」
「大丈夫大丈夫、ちょっとびっくりしただけさ」
ほんとはちょっとどころでは無いんだけど。まぁ、そこは少しカッコつけさせて欲しい。それにしても、これはーーーーーー
俺の目の前に建っているのはそこそこ立派な、二階建ての洋風の一軒家だ。入り口の前には、段数の少ない階段があり、そこについている唐草模様の手すりが、またどこかお洒落な雰囲気を醸し出している。煉瓦は全面真っ黒に塗りつぶされており、これも俺の好みに合っていて、とてもポイントが高い。立派な煙突もついており、外観だけ見てもかなり完成度が高いのがわかる。しかも、窓ガラスまでちゃんとついていやがる。中の内装を見るのも楽しみになってきた。
俺がボーッと家を眺めているとーーー
「あの、ご主人様……大丈夫ですか?」
俺がまたずっと黙っていたからか、耳をへにょっとさせて少し不安そうな顔で尋ねてきた。こんなクリスタは本当にとてもかわいくて、いつまでも眺めていたいのだが、さすがに何度も不安にされるわけにはいかないので、俺はすぐに返事を返した。
「あ、ああ!立派なもんだなーと思ってな!中も見せてくれるか?」
「はい!是非ご覧になってください!」
クリスタはそう言って、俺を家の中へ先導した。玄関扉の前の階段を数段上り、俺たちは家の中へ入った。
家に入るともう外が暗いからか辺りが真っ暗で見えなかったため、クリスタが魔法で部屋全体に行き届く灯を作った。まだなにも言っていないのに、気の利くクリスタはやはりとても優秀だ。それから、クリスタは家の中を案内し始めた。
「一階の間取りは玄関を潜ってすぐにリビングがあり、その奥にダイニングキッチンです。そして、右側の扉から廊下に出られます。廊下を出て左奥にトイレ、突き当たり右がバスルームになっております。それから、廊下を出て右側は二階へ上がる階段があります。そして、二階には客室が二つにご主人様のお部屋が一つあります」
クリスタは簡単に間取りを説明してくれた。そして、家の中はと言うと、内装は完璧とは言えないがクリスタのセンスが良いのかあまり不快な感じはしない。魔法でここまでやるとは、クリスタの能力は本当に器用だし万能なものだと思う。それと、クリスタが言うにはまだトイレや灯りは魔道具がないので、まだちゃんと使えないんだそうだ。クリスタが急ごしらえだと言った意味は、どうやらこれのことらしい。ちなみに魔道具とは、その名の通り魔法の道具だそうだ。魔道具の詳しい話は、ここでは割愛する。
「クリスタ二階へ行ってもいいか?」
「はい。では参りましょう」
そうして、俺たちは二階へと上がった。
近いうちに試験期間に入るので、更新が滞るかもしれません。
本当にすみません!。