四話
「クリスタ。重くないかい?」
どんな返事が返ってくるかはわかっていつつも、俺はクリスタにそう尋ねた。
「はい。全く重たくはありませんのでお気になさらず。ご主人様」
「そう……」
あれから、休憩を終えクリスタにおぶってもらいながら、移動し始めてから少し経過した。大丈夫だとはわかっていつつも、つい何度かあんなふうに尋ねてしまっていた。
クリスタのことを信じると、そう決意したのにも関わらずこの有様だ。これでは彼女に申し訳が立たない思い、今の質問を最後に、この件に関して口を出すのはやめた。
それと同時に、先程聞こうと思っていたことを尋ねることにした。
「クリスタ。ちょっと聞きたいことがあるんだけど……」
「なんでしょうか?」
「この世界の魔物について教えてくれないか?ついでに、この森にいる魔物についても」
「そういうことでしたら。お任せください」
やはり彼女は、嫌な顔せずそう言い、俺の質問に答えてくれた。
「まず、魔物とはこの世界に生きるもの、すべてのものにとって脅威の対象になりうる生き物です。それは人類であり、普通の動物でもあり、神獣や霊獣、はたまた人外の者たちにとってもそれは例外ではありません。彼らの眼には、この世界に生を得たときからその生が終わる最後の時まで、この世界のすべてのものを敵として映るように見ているのです。それは同族然り、そこには魔物の総称も含まれます。集団で共闘する魔物も稀にいますが…。その中でも、高い知性を持ち世界の危機を脅かす魔物が存在します。彼らは皆一様に、"魔族"と言う総称で知られています。彼らは人の姿ととても似通った姿形をしており、過去に何度も、主に人類と衝突し、世界の危機を脅かしてきました。そして、数千年に一度の周期で、人類にとって最も恐れられている存在、魔の者たちの王、"魔王"が誕生します。魔王は幾多の魔族と魔物を率いて、なんども人類を滅ぼそうとしてきました。過去には、本当に人類が…いえ、世界が滅ぼされかけました。その度に人類には、神に選ばれ力を与えられた勇者たちがその脅威に立ち向かいました。勇者の力は絶大で、今まで人類が魔王に敗れたことは一度としてありません。そして、魔物には人類が脅威の値として定めたランクがあり、一番上からSSSランクSSランクSランクAAランクAランクそしてBランク〜Fランクになります。ーーー少し長くなりましたがこんなところでどうでしょうか。私の回答はお気に召しましたでしょうか?」
「うん。クリスタの説明はわかりやすくて、聞いてて全然疲れないから大丈夫だよ」
そして俺は最後に「いろいろ教えてくれて、ありがとう」と、そう締めくくった。それに対してクリスタも礼を受け取った。そして彼女は次に、魔の森とそこに棲む魔物について説明を始めた。
「それと魔の森の魔物についてなのですが、この森は中心に行くほど魔素が濃く、強力な魔物多くが棲んでいます。理由としては、魔物の特性として、魔物は魔素を吸収することでより凶暴で強力になりますので、それが一番の原因としてあげられます。ここで言う魔素とは、体外に存在する魔力のことを言います。ちなみに、私たちが現在いるところは中心に近い方です」
「えっ!?まじで!?大丈夫なの俺たち!?」
やはりというか、俺たちは結構やばい森にいるみたいだ。
「はい。奴らは好戦的なきらいはありますが、彼我の実力を測ることくらいはできるようですね……。と、言ってもここの魔物がそこらの魔物よりは多少知能が高いようですからより本能的な部分が理性を溜めているのでしょうが……」
「?えっと、つまり…大丈夫ってこと…?」
「はい。周りの魔物たちには常にそれとなしに、威圧もとい殺気をとばしておきましたので大丈夫です。何も心配はございません。ご安心くださいご主人様」
そう言ってクリスタは俺を安心させてくれた。
どうやら、ここまで来るのに魔物に一度も出くわさなかったのは、クリスタが密かに魔物を追っ払ってくれていたかららしい。本当に彼女には頭があがらない。俺は納得した旨を彼女に伝える。
「えっと、クリスタがそう言うのなら……」
「ありがとうございます。ご主人様。それとその、ご主人様。一つお耳に入れておきたいことが」
「なんだ、クリスタ?」
「現在、私たちが向かっている、森の木々が開けた広場には、人類の定めたランクでいうところのSランクの魔物が居座っているのですが、どういたしましょうか?。ここで、私の実力を披露させていただける機会を賜われるのであれば、ご主人様にこれからもご安心していただけると思うのですが……」
「!?そんな危険な魔物が…!」
「報告が遅れて申し訳ございません」
俺は、申し訳なさそうに耳をへにょりと倒して謝罪するクリスタに対して気にするなと伝えた。なぜなら、俺がこの万能メイドであるクリスタの実力に興味を持っていたのは事実だからだ。
本当に、テルンが言っていたような強さまで備わっているのか気になったのだ。これは、彼女を疑っていると言うわけではない。この件に関しては、ただ単純に彼女の強さに対する好奇心が上回っていたのだ。
「俺もちょうどクリスタの実力を見てみたかったんだ。こちらこそ頼めるかな?」
「はい!。機会を賜ることができ光栄です!ご主人様!。この貴方様だけのメイドであるクリスタは、必ずやご主人様のご期待に応えてみせます!」
そう意気込むクリスタの足取りは、心なしか先ほどよりも軽やかになった気がした。
そうして、俺たちはどんどん森を進んで行った。すると、日が傾きかけてきた頃に俺たちは目的地に到着したのだった。
毎度、改稿が多くて申し訳ありません。
今回も読んでくださりありがとうございます。