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孤児と錬金魔術師  作者: 珠優良
第一章 出会いと再会
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第9話 無駄に高性能なホムンクルスの身体

同名のペンネームが割といたので変更しました。

 ブルックの街を出て七日も過ぎると、辺りには人の住んでいる気配もなくなってきていた。


 アルベルトが一人で旅をしていたときは獣や魚を獲って適当に済ますことも多かったので、食料を準備する時にディアナと幼いアリアのことを失念していた。

 そのため目的地のジェーヴァまでは短く見積もっても二十日はかかるのだが、食料の残りが心許無くなってきていた。


 次の町で食料を調達するとしても、そこまでまだ先は長いうえにこの辺りには民家も見当たらない、アルベルトはこのままでは拙いなと思考を巡らせていた。


「ディアナ、食料って、あと何日くらい持ちそうだ?」


「そうですね、五日分くらいでしょうか」


「そうか……。次のシルクの町で調達するつもりなんだが、あと六日くらいは掛かると思うから一日分、余分にみて二日分、七日掛かるつもりで節約してくれるか」


「わかりました」


「どうしても足りなくなったら適当に何か獲って来る。あまり深刻にならなくてもいいぞ」


「はい」


「人間って大変だねー」


「ん? ベル、起きてたのか」


 アリアと遊び疲れて三人で寝ていたと思っていたベルが、御者台にいるディアナとは反対側のアルベルトの横に腰掛けて、そう話しかけてきた。


「ベルさん、精霊は何も食さないのですか?」


「ボクたちは、魔力を貰えれば大丈夫だからねっ」


「魔力を? 何方(どなた)から頂くのです?」


「いつもは森の樹々とか獣とかから、少しずつ分けて貰っているんだよっ」


「そうなのですね」


「でも、い・ま・は、至高の一品。アルの魔力があるからねっ!」


「アルベルトさんの!?」


「そう! アルの魔力を一度でも味わうと、もうやめられない止まらないだよっ!」


 そう言って、ベルは涎を垂らしながら蕩けた顔でアルベルトを見つめた。


「はぁ……。腹が減って起きてきたのか」


「てへっ」


 舌をぺろっと出して片目を瞑り自分の頭をこぶしで叩くフリをしているベルに、アルベルトは右手に魔力を込めて差し出した。

 ベルは嬉しそうにアルベルトの右手に両手を翳して魔力を吸収すると、もう少し寝ると言って荷台に戻ってアリアに抱きついていた。


 そして、その後もディアナと何気ない会話を交わしながら街道に沿って馬車を走らせ、雑木林の中を抜けて見晴らしの良い草原の小高い丘の中腹に差し掛かった頃、ディアナがそわそわと落ち着かない様子でアルベルトにチラチラと視線を送っていた。


「どうした?」


「えっとですね。そのぉ少しお花を摘みに行きたくて……」


 アルベルトは馬車を止めて行って来ると良いと伝えたのだが、ディアナは俯いて肩をわなわなと震わせながら怒気を含んだ声で詰め寄って来た。


「アルベルトさん……。この辺って身を隠せる場所がないのですけれど」


「ああ。それなら俺は馬車の陰に行くから、ディアナは反対側で距離をとってすれば……って、何を怒っているんだ、ディアナ?」


 ディアナは、アルベルトが言葉を言い切る前にその胸ぐらを掴むと眼光鋭く睨みつけた。

 アルベルトは今の最善策を伝えたつもりなのに、その反応に解せぬという感じでたじろいでいた。


「アルベルトさんって、ほんっっっっっとうに、女性に対してなっていませんわねっ!」


「別に覗いたりしないって。俺にそんな趣味はないから」


「そういうことを言っているのではありませんっ!」


 今まで他人と深く関わらないようにしていたアルベルトには、元々、女性に対するというよりも他者に対する配慮などというものとは無縁であった。

 それ故に、アルベルトは心の中で溜息を吐きながら、またディアナの地雷でも踏んだのかな、と明後日な方向に思いを巡らせていた。


「大体ですね! 普通なら気を使って、黙って先程の雑木林の方へ引き返したりするものですよっ! それに何なのですか、この身体っ!」


「身体?」


「そうですっ! どうして人形の身体なのに、こんな無用な機能まで付けているのですか!」


「それはホムンクルスなんか連れて歩いてると面倒くさい奴らが絡んできたりするから、人と見分けが付かないように……」


「だとしても! 能力の無駄使いですっ!」


「はぁ……。それより、行かなくて良いのか?」


「……ッ!? そそそうです! 早くさっきの雑木林まで戻ってください!」


 戻れと言うディアナに対して、アルベルトは少し離れた場所に土魔法で人が隠れることができる程度の土壁を地面を盛り上げて作り「これで隠れることができるだろう」と言うと、ディアナは半眼でそれを見てそのままの目でアルベルトの方へ振り向いた。


「絶対に、覗きに来たりしないで下さいよ」


「そんな趣味はないって言っただろ……」


「ディアナさん、おトイレ行きたい」


「……ッ!? アリア、起きていたの? 今のお話し聞いていた?」


「……?」


「まあいいわ。それより、おトイレね。急ぎましょう!」


 可愛らしく頭を傾げるアリアを小脇に抱えると、ディアナは御者台から飛び降りて土壁の方に向かって脱兎の如く走りだした。


 二人が戻って来て目的地に向かって走り出した馬車の荷台では、アリアと精霊二人がきゃっきゃ、うふふと再び遊びだしていた。

 そして、御者台の上ではディアナが、まだ言い足りないといった感じでアルベルトに女性に対してのエチケットをレクチャーしていて、その横で死んだ魚の様な目をしたアルベルトがディアナの話を聞き流しながら手綱を握っていた。


◇◆◇


 丘をくだりきっても辺り一面の草原はまだ続いていて、代わり映えのしない景色の中をアルベルト達はシルクの町に向かって馬車を走らせていた。

 そして、まだ日が沈むにはかなり早い時間に、アルベルトは野営するために街道を外れて馬車を停めた。


「アルベルトさん、どうかしましたか?」


「今日は、ここで野営しようと思ってな」


「まだ日没までには、結構、時間がありますよ?」


「ああ、急ぐ旅でもないしな。それに、ディアナが力を使いこなせるように少しずつでも訓練しておいた方が良いだろ?」


 アルベルトはアリアたちに目の届く範囲で遊んでいるように伝えてから、馬車を降りて荷台の後ろに回り込み積んである荷物の中から訓練用の木剣を手に取ると、御者台から降りて来たディアナに、動きやすい服装に着替えて皮鎧を付けてから来るようにと言って馬車から離れて行った。


「お待たせしました」


(男物の皮鎧の方が良かったか……)


 ディアナが身に着けた皮鎧の一部を見て、アルベルトがディアナの皮鎧を買い替えようかと考えていると、ディアナはアルベルトの視線に気付き足早にアルベルトの正面に近寄って来て、押し付けるように胸を反らせながら、下から見上げるように眉を吊り上げて睨んできた。


「アルベルトさん! な・に・か、問題でもありましたか!」


「サイズを間違えて買ったみたいで、動き難そうだなと……」


「そんなことはありません! 丁度良いですわ!」


「丁度……」


「ええ! ピッタリです! それに、サイズが合わないのだとしたら、アルベルトさんが作った身体なのに意外とアルベルトさんって、間が抜けているのですわね!」


「いや、その身体は魂に合わせて体形が変わるから。俺のせいでは……」


「……ッ!?」


(魂に合わせて? ということは、わたしの意識の持ちようで……)


「何をぼそぼそと呟いているんだ? 問題がないならそれで良い、それよりそろそろ訓練を始めたいんだが」


「……あ、はい!」


 ディアナは心の声が漏れていたことに気が付き、誤魔化すように慌ててアルベルトに返事をした。


「それじゃ最初は、俺の構えた木剣に力を加減しながら打込んでみてくれ」


 アルベルトはディアナに木剣を手渡すと、そう指示して木剣を構えた。

 ディアナはアルベルトが指示する通りに縦や横にして構えられた木剣に、手にした木剣を構えて何度も打込んでいった。


「もう少し力を抜いて」


「はい!」


「今度は、抜きすぎ」


「はい!」


「よし、一つの事だけをしていても仕方ないので、次は受けの練習をしようか」


「ハァハァ……はい。ふぅ、作られた身体なのに疲労するのですね」


「ああ、人と見分けが付かないように細心の注意を払ったからな」


「ホントに能力の無駄使いですね。でも、そのおかげであの子の傍で人として普通に暮らせるのですから、感謝するべきですね。ふふっ」


 少し休憩をとってから、まずはやって見せるからと言ってディアナに好きなように木剣を打込ませて、アルベルトはそれを木剣で受けたり逸らしたりしてみせた。

 そして、ディアナに初めのうちは軽く打込むので全て受け切るようにと言って、アルベルトはディアナに向かって木剣を次々と打込んでいった。


「その受け方じゃ、左の脇腹への攻撃に間に合わなくなるぞ」


「はい!」


「もっと足元にも気を配って」


「はい!」


「右足が隙だらけだ、もっと相手をよく見て」


「痛っ!」


◇◆◇


 空が赤く染まり始めた頃、アルベルトが構えていた木剣を降ろしてディアナに声をかけた。



「よし今日は、これくらいにしておこうか」


「ハァハァ……はい」


「そろそろ、夕飯と野営の準備を始めないと日が暮れる」


「ふぅ……。そうですね」


 訓練を終えた二人が馬車のところまで戻ってくるとディアナは夕飯の準備を始めて、アルベルトは遊んでいる三人に声を掛けてから野営の準備を始めた。


 夕飯を食べ終えて辺りがすっかり夜のとばりに包まれた頃、アリアとディアナはすでに毛布に包まって寝ていた。

 アルベルトも後で交代するからと言って、ベルとセレスに見張りを頼んで腰の愛刀を枕元に置き眠ることにした。


 そして、真夜中に差し掛かった頃――――。


「アルー! 起きてー!」


「アリアちゃん、ディアナちゃん。起きてぇ」


 精霊二人の声が夜闇の中、響いていた。

無駄に高性能なホムンクルスの身体はディアナ(リディア)には不評なようです。


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