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孤児と錬金魔術師  作者: 珠優良
第一章 出会いと再会
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第6話 村人たちの供養そして街へ

 慟哭が止み住民の居なくなった村にアリアのすすり泣く声だけが響いていた。アルベルトは抱きしめていたアリアの肩を掴みそっと胸元から離して、アリアの眼を覗き込むと瞼を赤く腫らしてはいたが、その瞳は元の露草色に戻っていた。そして、まるで体中の水分を出しきったかのように涙も止まっていた。


 アルベルトは繊細なガラス細工に触れるようにアリアの頭を撫でながら、落ち着いたかと優しく声をかけアリアが頷くのを見てから、今からやらなければならないことがあると伝えた。


「アリア、いいかいよく聞いて。村のみんなをこのままにしておくのは可哀想だろ?」


 アリアは村人たちの方へ顔を向けてその遺体を見渡してから、アルベルトの方へ視線を戻してコクリと頷いた。


「みんなを埋葬してあげようと思うんだが、この村にはもうアリアしかいない。だから、みんなの魂をちゃんと送ってあげられるのはアリアだけなんだ。手伝ってくれるかい?」


「うん……」


「よし、えらいぞ。それじゃ、そこのお姉さん達と一緒にお墓に供えるお花をいっぱい集めてきてくれるかな」


「うん……」


 アルベルトはベルとセレスを呼んで、アリアと一緒に墓へ供える花を摘んでくるように頼むと、ディアナに傍へ来るように声をかけた。


「ディアナ、今からみんなの墓を作ろうと思うんだが、全員の名前って分かるか?」


「はい。この村の人たちは、みんな家族のようなものでしたので分かります」


「良かった。さすがに名前も刻まれていない墓標っていうのは、あまりにも忍びないと思っていたからな」


「ありがとうございます。みんなも少しは浮かばれると思います」


「それじゃ、始めようか」


 それから、アルベルトはディアナに遺体の名前を確認しながら、一体ごとに土魔法を使って埋葬して錬金魔法で墓標を作っていった。

 村人の墓が次々と量産されていく様子に、ディアナは遺体の名前を伝えながら「非常識です……」と呟き、ジト目でアルベルトを見ていた。


 リディアとエドを除いた村人たち全員の墓ができあがっても、まだアリアたちが戻って来そうになかったので、アルベルトはディアナと少し話をすることにした。


「アリアたちが帰って来たら、俺はここでの事を冒険者ギルドへ報告する為にブルックの街に戻らないといけないんだが、この村の生き残りとしてアリアも一緒に連れていくつもりだ」


「そういえば、アルベルト様は村長の依頼を受けて、この村へいらっしゃっていたのでしたね」


「ああ。だが問題なのは俺がここへ来るときに連れがいなかったってことなんだ。だから、ディアナは旅の途中で立ち寄ったこの村で、事件に巻き込まれた。ということにしておいてくれないか」


「わかりました」


「冒険者ギルドに報告したあと、俺は騎士団を連れて狂信者たちの身柄を引渡しに、一度ここへ戻ってこなければならないと思う。その間は街で宿を取るからそこでアリアと待っていてくれないか」


「そうですね。アリアを一人になんてしておけませんからね」


 ディアナとこれからの事を話しているとアリアたちが戻ってきた。

 アリアはさっきまでは何もなかった広場の片隅に、村人たちの墓が立ち並んでいるのを見て、可愛らしい瞳をぱちくりとさせていた。


 アルベルトはそんなアリアを促して一緒に墓へ花を供えて回った。

 そして、全ての墓に花を供え終わると、アリアは胸の前で両手を組んで顔を伏せると静かに目を閉じた。


「アリア、君のお父さんとお母さんはここでは埋葬せずに、アリアがこれから住むことになる場所の近くで埋葬しようと思うんだ。傍にお父さんとお母さんがいた方がいいだろ?」


「うん……」


「お父さんとお母さんを見ておくかい?」


 コクリと頷くアリアと一緒に柩の傍まで行き、二人の柩の蓋を開けてやるとアリアが小さな手で父親と母親の頬に順に触れ、二人に「我儘ばかり言ってごめんね。守ってくれてありがとう」と、そう声をかけると、アリアのその瞳からは、出し尽くしたはずの涙が頬を伝って流れていた。


 束の間、両親を眺めながら静かに泣いていたアリアが「ありがとう」と声をかけてきたので、アルベルトは柩の蓋を閉じてマジックボックスの中に収納した。

 それを見ていたアリアは可愛らしい露草色の瞳を大きく見開き、口をあんぐりとさせていた。


「アリア、これは君が持っていなさい」


 そう言ってアルベルトはエドの魔石の付いたペンダントをコートのポケットから取り出すと、アリアの手に握らせた。

 ペンダントを手渡されたアリアはコテっと小首を傾げると、貰ってもいいのかという感じでアルベルトの方を見た。


「それは、アリアの物だよ」


「え?」


「それはね、アリアのお父さんの身体に残っていた魔力を魔石に結晶化して作ったものなんだ。だから、それはアリアの物でお父さんの形見。ということだ」


「お父さんの……。あたたかい」


 アリアはペンダントを小さな両手で持って頬ずりするようにして目を閉じていた。


「アリアは魔力を使えるかい?」


「……少しだけ」


「それじゃ、その魔石に魔力を込めてごらん」


「ん」


 アリアは短く返事をすると慣れない感じで魔石に魔力を込めた。

 すると、ディアナの時と同じ様に魔石の上に白と緑で描かれた魔法陣が展開して、魔法陣の上にアリアの記憶の中にある両親の姿が次々と映し出され始めた。


 アリアは目を見開き暫く映し出される両親の映像を見つめてから、アルベルトに抱きついて何度も「ありがとう」と繰り返していた。


 するべきことを済ませたアルベルトは、ディアナ達に今後の予定とそろそろブルックへ向かわないと今日中に着かないことを伝えて、ベルとセレスには自分が戻って来るまで狂信者たちの見張りを頼み、戻って来るときは街の人間と一緒なることを伝えると、着く頃に合わせて不可視化しておくように頼んだ。


 そして、ディアナとアリアを連れて村の入口に来ると、繋いでおいた馬にアリアを乗せてブルックの街へ向かって歩き出した。


◇◆◇


 そろそろ夕闇に染まろうかという時間に街の西門の前に辿り着いたアルベルト達は、左の通用門へ向かい門兵に通行証を見せて事情を説明した。三人分の通行料を支払って街の中へ入るとそのまま冒険者ギルドに向かった。


 冒険者ギルドに着くとアルベルトは二人を連れて受付カウンターの前で、依頼のあった村でのことを説明して生き残りがアリア一人であることを伝えると、受付の女性はカウンターから飛び出してきて憐憫(れんびん)の表情を浮かべてアリアに抱きついて肩を震わせていた。


「ごめんね。あたしがもっと早く、村へ冒険者を派遣していればこんなことにならなかったかもしれないのに」


 依頼を受けた時の印象からこの女性(ひと)は明るくて人懐っこい性格をしているのだろう。そんな彼女が遣り切れないと唇を噛んでいた。


「貴女のせいじゃない。アリアだけでも生き残ったんだ、悪い結果だが最悪ではなかったと思うしかない」


「そう、そうね…………。ふぅ……。そっかぁ、あなたアリアちゃんって言うのねっ。あたしはマリアよ、よろしくねっ」


 赤髪でブルームーンの瞳をした、成人女性の平均的な体型だが背丈はそれより少し低い感じの受付嬢は苦いものを飲み込むように、一度、目を伏せたあと息を吐き出してから顔を上げると、努めて明るく振舞いアリアに話しかけた。


「何も心配することはないわよアリアちゃん。この街一番のあたしの知り合いの孤児院を紹介してあげる。そこの子達はみんな良い子なの、すぐに仲良くなれるわ。それまではあたしの家に居ればいいよっ」


「そのことなんだが……。俺が引き取って里に連れていこうと思っているんだ」


 マリアと名乗った受付嬢はぐりんと勢いよくアルベルトの方に振り向いて、値踏みするように見つめたあと、ジトっとした目で聞いてきた。


「あなた……変な趣味とかないでしょうね。アリアちゃんに何をするつもりっ!」


「するかっ!」


「だってあなた独り身でしょ。こんな可愛い子を引き取るなんて言い出して怪しいわよっ! 通報しても良いわよねっ!」


「待て待て待てっ!」


「そんなに焦ってるってことは、図星ねっ。あっ!?」


「焦ってなどない。今度は何だ……」


「そうか分かったわよ。その神父のような風貌もこういう時のための伏線……ぶつぶつぶつ」


「はぁ……。何をぶつぶつ言っているんだ君は。俺はその子の母親の死の間際にアリアの事を託されただけだ」


「へっ!?」


「だから、アリアの母親に頼まれたから引き取って育てると言っているんだ」


「あら、そうでしたの。オホホホッ」


「はぁ……」


 アルベルトはマリアに対して明るくて人懐っこい面倒見の良い人柄だと評価していたが、思い込みが激しいということも追加して、疲れたとばかりに溜息を吐いた。


「それで依頼の件はどうなる」


「そうですねぇ、依頼主が死亡してしまっているので無効になりますね。処理はこちらでしておきます」


「わかった。それで捕らえてある狂信者たちのことだが、どうすればいい」


「そのことでしたら、今から…………は、無理なので明日の朝一で騎士団の方へ連絡しておきます。明日は護送に向かう騎士団の方々と同行してください。それと戻って来られましたら騎士団の詰所にて証明書を受け取ってください。それを持ってこちらに来ていただければ報奨金がでますので」


「報奨金がでるのか?」


「はい。彼らはその行為から犯罪者集団として認定されていますから、団員クラスだとそれほど多くありませんが、一応出ますよ」


「そうか、わかった。それじゃ宿が決まったら伝えにくるから、明日、騎士団が出立する時間が分かったら連絡してくれ」


「はい、分かりました」


 アルベルトはアリアの村でのことを報告し終えると、今夜の宿を取るために二人を連れて冒険者ギルドをあとにした。


 運良く冒険者ギルドの近くに空きがある宿屋があったので、アルベルト達は前金で二部屋借りたあと、昨夜から何も食べていなかったことを思い出して夕食にとることにした。


 夕食を終えると、アルベルトは二人に今夜はもう部屋へ戻ってゆっくり休んで、明日、旅に必要な物を買い揃えておくようにと言って手持ちの半分の金を渡すと、泊まっている宿を伝えるために冒険者ギルドに向かった。

興味が湧いた方、続きが読んでみたと思った方

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