異世界における圧迫面接会
異世界にやって来たものの、魔王討伐どころか一緒にランチする相手もいない俺は金で仲間を雇うことにした。
宿屋の二階を間借りし面接開始。できれば強くて賢くて甘やかしてくれる巨乳がいいのだが。
最初にやって来たのはあどけない少女だった。赤いドレスに灰色の翼を生やし、藍色の長髪に巻き角、瞳は金色に輝いている。
有翼人だ。見るからに弱そうな雌であり貧乳。適当に終わらせてさっさとお帰り願おう。
「どうかしたか」と、少女は少ない胸を張る。
「どうもしねえよ。ほら、さっさと自己紹介」
「マオウだ」
「ん、魔王?」
「正式にはデルンベルク二世だ」
まさかの本物だ。
見た目は少女だが、巷で噂の二代目だ。これはもう面接どころではない命に関わる問題だ。これにてラストバトル開始である。
「募集要項は見ましたか」
「もちろんだ」
「魔王討伐パーティーの募集なんですけど」
「余を倒すだと」
魔王の金色の瞳が怪しく輝く。
窓ガラスが割れ、壁が不快な悲鳴をあげ、床がウエハースのようにひしゃげる。
「そんな無謀な野望を抱いた阿呆ならお帰り願うところでしたね」
魔王は訝しげに俺を見ていたが、やがて潰れた椅子に胡座をかいた。
「続けろ」
「終わりました」
「まだ何も聞いとらんではないか」
「それでは差し支えなければ志望動機を教えていただけますか」
「金だ」
「でしょうね。自己PRとかは」
「強い」
「でしょうね。はい、本日の面接は終了となります。後日結果を伝えますので」
「いますぐだ」
「でしょうね。それでは大変誠に幸運ながら今回は採用を見送らせていただくという形でいかがでしょう」
「不採用と言いたいのか」
見える。レベル1の俺にも禍々しいオーラが見えるぞ。
「私のようなカスが魔王様の仲間など恐れ多いことでして」
「ならば家来になれ」
「私が、家来」
「不服か」
「むしろ良すぎて困るくらいでどうしよう死にたいって感じなんですけども」
「もういい!」
魔王がふくれっつらで両手をかかげると、宿屋の天井は跡形もなく消し飛んだ。ここが二階で本当によかった。
「おめでとうございます。採用です」
命を燃やすような拍手を送ると、魔王は満面の笑みで頷く。
こうして、いかにして魔王軍を辞めるかという俺の退職活動がはじまったのである。