聖なる夜には灯火を
クリスマスに思いつきました。
聞き慣れた目覚まし時計の音を止める。
いつもよりは少し遅めだが目を開け体を伸ばす。背骨が歪な音を立てたがそれはいつものことだ。
布団を剥いだところで部屋の寒さを感じた。カレンダーを見て今日の日付を確認する。
そう今日は“クリスマスイブ”
去年こそは男達だけで騒いだが、今年は違う。
あの、同じクラスで憧れの二宮咲音さんと一緒に過ごせるんだ。
親友の白峰大城と相談してデートコースも決まってるし、クリスマスプレゼントのことも聞いていい感じのものを買ってきたし、色んな雑誌を読んでオシャレも学んだし。去年とは比べ物にはならないくらい努力をした。
僕の名前が南砂慧斗というのだが、ゲイ斗なんて馬鹿にされなくてもう済む。
そして、今日きちんと想いを伝える。
ふと時計を見ると予定の時間が迫っているのに気づく。
僕は少し急ぎ目に準備を始める。
────
洗面所に行き顔を洗う。
学校に行く時はかなりギリギリに起きるのであまり気を使ってすることではないが、今日に限っては入念にやる。
冬の寒さで水がとても冷たかったがそれでも彼女の為を思ってやったらどうということは無かった。
昼過ぎから二宮さんとのデートだ。
地元の駅で待ち合わせしてそこから神無木遊園地に行くことになっている。
お昼ご飯は各自で食べることになっているので、早めに食べる。
何かやっていないと落ち着かないので母にお昼ご飯の催促をする。
母にお昼ご飯を作ってもらっている間に僕は自分の部屋に戻り着替えと荷物を詰めることにした。
洋服は最近雑誌で読んだ中で一番お気に入りのものを身につける。
お金はデート代から、服までデートに関するものは全て大城と一緒にバイトをして貯めたものだ。
大城には感謝してもしきれないくらいだろう。
部屋にある姿鏡を見て自分の姿を確認する。
少なくとも悪い格好ではないであろう……。
自分の姿を確認していると母の声が扉越しに聞こえてきた。
お昼ご飯が出来たのだろう。
直ぐに向かうとする。
────
リビングのテーブルには僕の好物であるオムライスがあった。
チキンライスをとじた卵には何も書かれていなかったが、横にはケチャップが置いてあった。
僕は根っからのケチャラー、ケチャップが大好きなので、並の人以上にかける。
二宮さんの前ではこんなことは出来ないだろう。
今日は、食事のマナーにも気おつけなくてはいけないと、心から思う。
食べてる間、テレビをつけワイドショーを見る。
いつも何も気にせず見ているワイドショーだが、今日はいつもと違う雰囲気でやっていた。
『あの事件から1年が経ちましたね……』
テレビに映っている女性アナウンサーがそう言った。
『そうですね、なんとも悲惨な事件で犯人も未だ捕まっていませんからね……』
男性タレントが、女性アナウンサーに続いて話す。
彼らが話している事件とは……
去年のクリスマスイブからクリスマスにかけて殺人事件があったというものだった。
場所は、僕の住む市内の綺麗な夜景の見れるところで、被害者は大学生くらいの男性だった。
男性は四肢を刃物で切られそれはもう無残な姿だった言う。彼の所持品はなく、彼自身の特定も難しかったらしい。
犯人は未だ逃亡中で、警察も手を焼いているそうだ。
すぐに捕まってもおかしくはないはずだが、何よりも証拠が足りず目撃者もいなくどうしようもないらしい。
僕がその事件を知ったのは友達たちと泊まりで騒いだ帰りだったので親にはかなり心配された。ケータイの電源が切れていて充電もろくにしなかったので連絡がつかなかったからだ。
だが、そんなことは僕とは無縁だろう今日は僕にとって最高の日になるのだから。
テレビを見ていたら既にご飯は食べ終わっていた。
ごちそうさまと小さく言い、台所に食器を置く。
母に、今年も友達の家に泊まってくると言っているので、どんなに遅くなろうとも今日明日は大丈夫だろう。
時計を見ると、待ち合わせの時間まで45分を切っていた。
僕はかなり急ぎ目に待ち合わせの駅へ向かう。
────
少し息を切らし、待ち合わせの駅に着く。
吐いた息は白くなっていた。
駅の時計を見てみると、待ち合わせの時間まであと、20分もあった。
別に急がなくても良かったかなとも思ったが、10分前集合は当たり前だろうと思い駅の柱に背を預ける。
何も考えずスマホで今日のデートコースを確認する。
遊園地に行って、夜になるまでアトラクションを楽しんで、夜になったらそこはイルミネーションで綺麗に彩られる。
それを観覧車上から眺め、その後イルミネーションのみが飾られてるところに行き、告白。
こういう流れで組んでみたが大丈夫なんだろうか……
少し不安になってきたが、その不安をさらに増やすのと同時に嬉しさの込み上げる声が僕の耳に入る。
「慧斗くん?」
横から女の子の声が聞こえ、僕の心拍数は跳ね上がった。体がビクリとなりそうになったが抑え、聞こえた声の方をむく。
「ふ、二宮さん!」
横にはあの二宮さんが立っていた。声が少し大きくなってしまい、周りが少しこちらを向いている。
僕は慌てて彼女に謝る。
「ご、ごめん。急に大きな声を上げちゃって」
「大丈夫だよ。急に声掛けられたら私もビックリするもん」
彼女は天使のような笑顔で言ってくれた。なんて優しいのだろう。
さすがクラス女子ランキング一位なだけあるなと思う。
「この服どうかな…」
彼女がそう聞いてきた。
いつも見ている制服とは違って華やかな雰囲気であった。
7月末頃にあった林間学校の時は夏服だったので、冬服になると露出度こそはなくなるけれどそれ以上に美しいものがある。
ありのまま彼女に伝えると気まずくなるので、
「すごく似合ってるよ!」
と、だけ言う。
そう言うと彼女は
「ありがとう……慧斗くんも似合ってるよ」
顔を赤くしながからそう言ってくれた。
今日僕が独り占めしていいものかと思うくらいに彼女は可愛かった。
このままのここで話していても良かったが、それよりも遊園地に行くほうがいいかと思い、
「そ、それじゃあ行こうか」
「う、、うん」
ぎこちなくそう言い、自動改札を通り駅のホームへと向かう。
─────
電車の中では会話はあまりなく、直ぐに遊園地前の駅に着いてしまった。遊園地前といっているが、駅から遊園地までは大半はバスに乗って行くのだが、歩いても行けなくもない距離だった。
彼女にバスに乗っていくかどうか聞くと、彼女は
「歩いてでもいいよ」
そう言ってくれた。
お金的には嬉しいのだが、なんせ少し遠い。
僕がもう一度聞き直すと彼女は、やはり
「け、慧斗くんと話したいから……歩きでもいい?」
歩きの方を選択してきた。
僕と話したいそう言ってくれるのはすごく嬉しかったが、歩くのは……とは思ったが彼女たっての希望だ。
「わかった。じゃあ、歩いていこうか」
歩いていくことにした。
歩いている間彼女とは学校の友達の話や普段何をしてるのかとか好きなテレビの話など、たわいのない話をすることが出来た。
手を繋ぐことこそは出来なかったけど、また帰りにもチャンスはあるだろうと思い、その願いは閉まっておくことにする。
何とか遊園地につくことが出来た。
僕は思わず安堵の息を漏らしたがそれは彼女も同じだったようだ。
チケット売り場まで行き、チケットを買う。
彼女の分まで払おうとすると、
「大丈夫、私自分で出すよ」
と言ってくれたが、女の人にお金を出してもらうなんて……ましてや二宮さんだ。
ここは僕1人で持つことにする。
「大丈夫だよ二宮さん。ここは払わせてよ」
そう言うと彼女は、
「ありがとう……でも大丈夫?」
そう心配をしてくれた。
金銭的にはそこも見積もっていたのでなんの問題もないので、彼女を安心させるように
「ああ、全然大丈夫だよ」
と言った。
2つチケットを貰い、1つを彼女に渡す。
その時、誤って手が触れてしまい……
「わっ!ご、ごめん」
「だ、大丈夫だよ……」
思わず謝ってしまったが、これから手を繋ごうと考えているのに大丈夫かと思う。
ただ、彼女も相当驚いただろう。顔が赤くなっていた。
多分、僕も相当赤くなっているだろう。
「……は、入ろうか」
「うん……」
────
遊園地の中は、家族連れや去年の僕と同じで男だけで居る人達、逆に女の人だけのグールプ、大学生だろうか男女何人かのグールプもいた。
そんな中でも、やはりカップルが多かった。
僕達もその中に入るのだろう。他の人から見られていると思うとかなり不安になってしまう。
でも、二宮さんを不安な気持ちにさせることなんて出来ない。
僕は勇気をふりしぼり、彼女をエスコートする。
「ま、まず何に乗ろうか」
「うーん……ジェットコースターとかは?」
彼女がジェットコースターを提案してきた。あいにく僕は絶叫系が大の苦手だ。
否定したくもなったがここはひとつ無理をしてでも彼女にいい所を見せるべきだろう、そう思い彼女に
「じゃあジェットコースターに、乗ろうか」
「あ、ごめんなさい。怖いのとかって大丈夫慧斗くん」
「大丈夫大丈夫」
思わず見栄を張ってしまった。
だが、こう言いきってしまった以上彼女に格好の悪い所は見せられない。
そう決意し、ジェットコースターに向かう。
こんな時でも相手のことを考えてくれる二宮さんは可愛いなと思う。
ここの遊園地は、チケット制で乗り物一つ一つにチケットを買わないといけないことになっている。
ここも僕が持とうとしたが彼女が、
「アトラクションだけでも払わせてよ。なんか悪いことしてる気分になっちゃうからさ」
そう言ってくれた。なんて優しいのだろう、とまたそう思う。
僕は、それでも
「大丈夫だよ」
と言ったが、彼女は
「でも、本当に悪いからさ」
そう言ってきた。
僕は少し迷ったが、ここは申し訳ないが、彼女にも、払ってもらうことにした。
僕は少し気まずかったが、彼女は、
「お金を使わずに帰ったらお母さんに、怒られちゃうからさ」
そう言った。
言い訳も可愛いなんてずるいなと僕は思う。
少々気が引けたが、アトラクションのお金は彼女の分は彼女に出してもらうことにした。
2人でジェットコースターの列に並ぶ。
ここの遊園地のジェットコースターはかなり人気で、列もそれなりに長かったのでその間も彼女とかなり話が出来た。
少し周りを見てみると、やはりカップルが多かった。
カップルでジェットコースターに乗るなんてのはかなり定番の事なのかな、なんて考えていたら僕達の番が回ってきた。
「いよいよだね慧斗くん!」
二宮さんは嬉しそうにそう言っていた。彼女には悪いが僕はそれどころではなかった。
ジェットコースター何てものは小さい頃に乗ったきりだったため、その時は怖い印象がとても強かったので、今この時までほとんど触れてこなかった。
「う、うんそうだね」
少し引きつって言う。
これ程安全バーの信じれない乗り物はないだろう。僕はジェットコースターの話になると直ぐにそう思う。少しキツめにしたかったのだが、彼女との共有のものだったのでその願い叶わなかった。
ジェットコースターは上がるときが1番怖いというが多分それは間違っていないのだろう。
隣に座る二宮さんはとてもワクワクした様子で周りを眺めていた。
いよいよ下りだ……
────
非常に楽しかった。
ただそれだけだった。
思わず彼女と一緒に叫んでしまった。
風を切る感覚、体がふわっと浮く感覚。とても気持ちの良いものだった。
なんて余韻に浸っていると彼女の声が耳に入る。
「慧斗くん怖いの大丈夫だった?」
「え?」
「だって始まる前すごく怖がってたから……」
自分ではそこまで怯えていないつもりだったが、周りから見える様子は違ったようだ。
「怖かったけど、下りだ始めたら面白かったよ!これも二宮さんのおかげかな……」
「へ?」
「あっ!」
思わず変なことを口走ってしまう。
僕は焦って謝ろうとしたが彼女は、
「うれしい」
思わない言葉が聞こえてきた。そして、
「慧斗くんさ」
「な、なに?」
「私の事、名前で呼んでくれない?」
「え、でも」
「2人きりだし……なんかさん付けだと壁を感じちゃうからさ……ね?」
願ってもいない言葉だった。本当に名前で呼んでもいいのだろうか……でも彼女はそう言ってくれてるし……よし、僕も男だ。
勇気をだして彼女のことを名前で呼ぼう!
「さ、咲音さん」
「まださんが付いてるよ」
「え?さ、咲音?」
「それでよし!」
呼び捨てでいいのかな……なんか少し怖くなってきたが、彼女の笑顔を見たら許されることなのかと思った。
次に何に乗るかの話になる。
彼女に、お化け屋敷と提案されてしまった。僕は文化祭のものしか入ったことがなく、本格的なものがどれほどのものかは知らなかったので、いいよっと言った。
お化け屋敷の建物を見ると少し寒気がしてきた。文化祭の時は男だけでノリで入ったのだが、今日はさ、咲音さん……咲音と2人で入るのだ。
多分大丈夫だろう。なんて淡い希望を抱いて入ることにする。
横にいる咲音はジェットコースターと同様にワクワクしていた。
中は外よりも少し冷えていた。
冬にも関わらずお化け屋敷に入ったのは何故だろうかなんて思ったのは、入ってすぐの事だった。
「さ、咲音はお化けとか大丈夫なの?」
思わず声が震えてしまった。
「私は大丈夫だよ。慧斗くんが苦手なんだろーなーと思って入ったんだもん」
耳を疑った。苦手だから入った?今確かにそう言ったよな……
「それってどういう……」
「見栄を張ってる慧斗くんが可愛いのが悪いんだよ」
彼女は笑顔をでそう言った。暗がりの中でもその笑顔をはわかった。
彼女は以外にも少しSっ気があるのだろうか。そんな一面も可愛いと思ってしまう自分がいた。
進んでいくとかなり脅かす要素が多くあったが以外にも平気だった。
咲音も普通に少し驚いていた。
そろそろ終わりが近づいて来たのだろうか一直線の道の先にあかりが見えていた。
僕はもう何も来ないだろうと思い、完全に油断する。
歩いていると、咲音が急に
「慧斗くん後ろ!」
と声を上げた。
何かと思い、後ろをむくとそこには髪の長い白い服を着たお化け役の人なのかその時は分からなかったが、お化け役の人が立っていた。
僕は思わず、
「うわっ!!」
と叫んで腰を抜かしてしまった。
それを見て咲音は、笑っていた。
僕はその時多分顔が真っ赤だっただろう。
彼女は笑いながらも、手を差し伸べてくれた。僕はその手を掴んで立ち上がる。
僕は少し泣いていたのだろうか、もうよく覚えていなかったが、彼女の手だけは握っていた。
────
「慧斗くん泣かないでよ」
咲音はまだ笑っていた。
離れてしまっていた手で、涙を拭う。
「……別に泣いてないけど」
「そう?じゃあなにか食べようよ。私笑いすぎてお腹すいちゃった」
「わかった」
彼女と何か少し食べ物を食べに行くことにする。
ここは、何か小腹がすいたら食べられるものがかなりあるのだ。遊園地なら当たり前のことなのだろうかだが、その当たり前のおかげでかなり助かっているところがある。
彼女に何が食べたいか聞くと、僕と同じものでいいと言っていたので、僕はクレープを買うことにした。
クレープに当たり外れはないだろうと思い、僕はよく都会の女の子とかが食べてそうなクレープを選んだ。
彼女にクレープを、持っていくと喜んで食べていた。
僕も彼女を見ていたら、少しお腹が空いてきたので僕も食べることにする。
「慧斗くん、ほっぺに」
「ん?」
彼女の手が僕の頬に触れる。
「ほっぺにクリームついてたよ」
そう言った通り、彼女の指にはクリームがついていた。そのクリームを彼女は舐めていた。
正直、現実にこんなことがあっていいのかと思うほど嬉しかった。
「あ、ごめん」
正直何を言ったらいいかわからず、謝ってしまう。
あまり女の子相手にこういう言葉は使いたくなかったが、非常にそそるものがあった。
その後僕は心臓がドキドキとなりっぱなしだった。
クレープを食べ終わりふと、時計を見るとイルミネーションの点灯時間が近づいていることに気づく。
僕は彼女を観覧車に誘うと彼女は笑顔で了承してくれた。
2人で観覧車の列に並ぶ。
さすがにカップルが多かった。園内のカップルがほぼ集まったんじゃないかと言うくらいいた。その中にも家族連れや、男だけで乗ろうとしている人もいた。
そろそろ自分たちの番かと思っていたら後ろの方から、歓声が上がっていた。
振り向いてみると、イルミネーションが点っていた。
地上からでもその美しさはわかるほど綺麗だった。上から見るとどうなるのかと、期待をそそられた。
「わぁーキレイだね慧斗くん」
「うん。本当に、でも観覧車から見たらもっと綺麗だよ」
「そうだね。楽しみ」
そんな会話をしていたら僕達の番が回ってきた。
係員の人にチケットを渡し、観覧車に乗る。
この中は完全なる個室。誰からも邪魔されない最高の空間だ。
僕らは向かい合わせに座る。
観覧車に乗った直後の会話なんてのはほぼ無いに等しいだろう。
僕はこの彼女との空間に緊張していて何も声に出すことが出来なかった。
僕がオドオドしている最中彼女は外の景色をずっと眺めていた。
観覧車が4分の1登りきったところで、ようやく外の景色がよく見えるようになった。
やはり観覧車に乗ると上から一望出来るため、奥のイルミネーションまで綺麗に見えた。
イルミネーションは、木や街灯、アトラクションにも施されていた。
色とりどりでとてもうつくしかった。
それを見ている咲音も。
すると彼女が、
「今日は誘ってくれてありがとね」
「え?」
「私、クリスマスはいつも家族と過ごしてるんだ。男の子と2人きりで過ごすなんて初めてですごくドキドキしたんだよ」
「ぼ、僕もだよ」
彼女は外を向きながら僕に話しかけていた。
今なのだろうか、当初の予定とは違うがよく考えると観覧車の中は2人きり、告白にもってこいの場所じゃないか……
そんなことを考えていると、観覧車が頂点に達する。
僕はそれと同時に勇気を出し、彼女に
「ふ、二宮咲音さん」
「ん?どうしたの慧斗くん改まって」
「じ、実は僕……」
『君のことが好きなんだ』
僕は彼女の方をしっかりと見て言った。
すると彼女は、
「そうなんだ」
そう言って、僕の座っている隣に座る。
「あ、えっとその……」
『私も好きだよ』
「え?」
“え?”思わず声に出ていた。思ってもいない言葉が聞こえてくる。確かに僕に誘われて2人で来てくれているから多少の気があったとしてもりょ、両思いだなんて……
「ほ、本当に?」
「うん」
彼女が、そう言うと顔を近づけてきた。
僕は何も言わず、彼女も何も言わず唇を重ねる。
彼女唇はとても柔らかく、とても気持ちがよかった。
すると、目が合ってしまった。
恥ずかしくなって離れようとしたが彼女が、口を少し開き柔らかい舌が僕の口の中に入ってきた。
キスするのは初めてだったが、彼女はまだ離れたくないことは僕でもわかった。
僕も彼女と同じように舌を絡める。
彼女の、咲音の味を僕の舌が感じとる。
2人何も意識せず同時に離れる。少し気まづくなってしまい目線を外す。
ちらりと彼女の方をむくと顔が真っ赤になっているのに気づく。
少し顔を見ていると彼女と目が合う。
2人また意識せず唇を重ねる。
────
観覧車から降り、2人とも自然と手を繋いで歩く。
それからイルミネーションのみが飾られているところに行こうと彼女を誘う。
告白する場所だったため誘う手段というものがなくなってしまうのではと思ったが、イルミネーションを見ないで帰るなんて少し損した気分になると思った。
彼女はそれを快く了承してくれた。
2人で向かうとそこはやはりカップルが多かった。というかもうどこへ行ってもいるのだろうか。少し気が滅入ってしまうが、多く居るおかげか僕達も少しイチャつけるのかもしれない。
2人で手を繋ぎイルミネーションを眺める。観覧車から見るのとは一味違い、近くで見るとより一層美しく見えた。観覧車からだと景色を独り占め出来たが、近くで見るとまるで自分が異世界に迷い込んだのかと思わせるようだった。
ここで僕はあることを思い出す。
そう、プレゼントの存在だ。
咲音に向かって不器用にそのプレゼントを差し出す。
「さ、咲音……」
「どうしたの?」
「こ、これクリスマスプレゼント」
「え?!ありがとう!」
彼女は喜んで僕の渡したプレゼントを受け取ってくれた。そこで彼女は開けてもいいかと聞いてきたので、少し恥ずかしかったが中身はネックレスですぐ着けられるのでいいかと思い、了承した。
「わぁー、これ可愛ね!」
彼女は心の底から喜んでいた。この笑顔が見れるなら大城と頑張ったかいがあると思えた。
そのネックレスを彼女は早速着けてくれた。
僕のセンスは冴えていたようで、彼女にとても似合っていた。
下から上へと照らすイルミネーションがあったのでまだ二人きりで写真を撮っていなかったので2人でそこで、心優しい通行人に撮ってもらうことにした。
派手にイチャつかず、せめてSNSに載せれるくらいの軽くイチャつく。
僕らが去った後に、同年代くらいだろうか男達が騒いで写真を撮っていた。僕は少しそれを見て悲しくなった。でも、今は咲音がいるから、大城達と終わったわけじゃない。まだ付き合っていけるだろうそう思った。
ある程度回ったところでそろそろ帰ろうかという話になった。
帰り道はバスに乗っていくか聞くと、歩きでいいとまた彼女がそういった。疲れていないか聞くと、ゆっくり歩きたいからと言われてしまい、実際僕もそうだった。
彼女ともっと一緒にいたい。長く話していたい。触れていたい。そう思っていた。
だから、帰りも歩いて帰ることにする。
行きの道で少し迷いそうになったのだが、夜になると本当に真っ暗で何も見えず、迷子になってもおかしくない状況だった。少し不安にもなったが、彼女の手を握っていたので不安はかなり和らいだ。
少し歩いていると彼女が、話しかけてきた。
「け、慧斗くん」
「どうしたの?」
彼女は下を向いて俯いていた。もしかして、怖いのかなと思った。なので彼女を心配するように声をかける。
「もしかして怖かった?」
「うん」
やっぱり。すると彼女続けて話す。
「こ、怖いから抱きついてもいいかな……?」
「えっ……いいよ」
急に言われびっくりしたが女の子に抱きついて貰うのに断る理由なんてのは僕には思いつかなかった。
彼女と抱き合う。彼女の匂いが、感覚が直に伝わる。
『幸せだ』
僕はとてつもなく幸福だった。正直今死んでも後悔しないくらい。
すると彼女は、僕のことを押し倒した。
「いたっ……さ、咲音?」
「……してもいい?」
僕はとても緊張した。それは何故かと言うと僕の急所の近くに彼女がいたからだ。
それから僕はされるがままだった。
彼女は僕がオドオドしているのを笑っていたが、彼女いきなり入れてしまった。僕はそのまま快楽へと堕ちていった。
少し意識が飛んでいたが、彼女の荒々しい息遣いだけは耳に残っていた。
────
テレビから女性アナウンサーの声が聞こえる。
『昨夜未明神無木遊園地附近のところで男性のバラバラ死体が発見されました。死体は四肢を切断され首だけがない状態で発見されたようです。男性の身元はまだ分かっておりません』
なんて悲しいニュースなんだろうと私は思った。でも今の私には彼がいる。
横に転がっている彼の顔にそっと口づけをした。
END
最後まで読んでいただきありがとうございます!!!!
是非感想を、書いていただけるとありがたいです!!