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3.夢の中の出逢い

 長い時間の手術は終わった。手術は成功したみたい。看護師さんに「安静にしていてくださいね」と言われた。それから寝るまでの話は割愛する。なぜなら、寝てからの事がとても重要だからだ。僕は不思議な夢を見た。これから僕の見た夢の話をするね。                                                                         僕の目の前に見知らぬ少女がいた。服装はピンク色でチェック柄のリボンとスカートのブレザータイプの制服を着ていて長い髪が肩甲骨あたりまであって前髪がぱっつんのいかにも女子高生らしい女の子だった。彼女は左上を見ている。一体何を見ているのだろう。僕は周りを見渡したが何も無い。何も無いどころか上下左右全て真っ白なのだ。白い壁の部屋ではない。はるか遠くを見渡せるようなぼやけた世界。そんな真っ白な世界に彼女と僕。彼女は一体何者なんだろう。そんな事を考えているうちに彼女は僕に気づいたのだろうか。静かにこちらを向いてにっこり笑った。そして少女は足音も立てずに僕の所に来た。その静かさはまるでこの世界から音が消えたようだった。そして僕はこう言った。「君は誰?」音の無い世界に僕の声が水の波紋のように響いた。彼女はこう答えた「あなたの心臓よ。」僕は思わず「えっ」て言ったが、頭の中では解釈していた。つまり僕のドナーになった人だ。という事は彼女はすでに死んでいる。ならばここはどこなんだろう。色々考えているうちに今度は彼女の方から口を開いた。「私の名前は月岡和歌。」僕はまた「えっ」て言った。「ほら、真筝君さっき『君は誰?』って聞いたじゃない。だからその答え。心臓って言っただけじゃわからないでしょ。まぁ、あなたの事だから大体わかっていると思うけど。」彼女が僕の事を「真筝君」と呼んだ。「なんで僕の名前を知ってるの?」彼女は笑いながら答えた「いや、私の心臓の持ち主の名前知らないとかおかしいでしょww」僕は何がおかしくて何がおかしくないか全くわからなかったけど、ずっと疑問に思っていた事を聞いた。「ところで、ここはどこ?」彼女は後ろに腕を組み体を左右に揺らしながらこう答えた。「この世とあの世の間ってとこかな」僕は言った。「えっ、じゃあ三途の川がすぐそばにあるってこと?」彼女は否定した。「違う、違う。てか三途の川とかもうあの世だから。ここがあの世だったらあんた死んでる事になるから。やめてね。私が知らないうちに死んでる設定なってるとか。私、許さないから。」どうやら僕が無知な為に彼女を怒らせてしまったらしい。まぁ、あの世に行ったことが無いから知らなくて当然かもしれないが。僕はもう一つ疑問に思った事を聞いた。「幽霊って、足あるんだね。」僕はまた和歌さんを怒らせてしまった。「私、幽霊じゃないから。ただの死者だから。幽霊だったら今頃下界でいやなヤツら脅かしてるから。別に真筝君に恨みなんて無いから。逆に感謝してる。私の心臓使ってくれてありがとう。これからもあなたとして生きてられるわ。」そして彼女はこう言った。「だからね、私の願い事を叶えて欲しいの。」僕はまたまた「えっ」と言ってしまった。「あなた『えっ』が口癖なの?さっきから『えっ』ばかり言ってるじゃない。これで4回目よ。まぁ、今日は驚く事が多かったからしょうがないけど」彼女は続けて言った。「最近さ、つまらない事ばかりだったからね。楽しい事考えようとして行ってみたい所とか日記帳に書いていたのよ。だけどさ私、死んじゃったじゃない。もう行けないじゃん。ということで、私の心臓を持っているあなたに代わりに行って来て欲しいんだ。」「これを頼みに私はこの空間に来てあなたの事をここに呼んだの。願い事を叶えるまで真筝君の夢にちょくちょく出てくるから、それまでよろしくね!」僕は生まれて初めて死者と約束をした。まぁ、病状が良くなれば退院出来るし、学校だって通信だから報告課題さえちゃんとやってれば特に問題はない。唯一、問題があるとしたら僕の体力くらいだろう。和歌さんがもう一つ僕に頼み事をした。「条件1は妹の夕樺梨から私の日記帳を借りること。条件2は私のスクバについているピンクのくまと一緒に出かけること。」「あっ、あと夕樺梨の電話番号も一応入れといて」僕が「ケータイ持ってないです。ずっと病院の公衆電話使ってたから。」と伝えると、「あんた、DK(男子高校生)なのにスマホどころかガラケーも持ってないの!」「いいわ、私のスマホ貸すから、それで夕樺梨と連絡とって。」と言われた。和歌さんの話によると夕樺梨ちゃんは小学4年生らしい。最近は小学生でもケータイを持ってるとこの前テレビでやっていたが、どうやら本当のようだ。この後、和歌さんから家の住所を聞いて「真筝君。じゃあ、よろしく。」と言われた後、目の前の和歌さんがだんだん薄くなり、しまいには、消えてしまった。そしてまた音の無い世界に戻っていった。

                                                と、いう所で僕は目を覚ました。時計を見たら、朝の7時30分を少し過ぎたくらいだった。8時には朝食の時間になる。僕は残りの約30分をどう過ごそうか考えていた。それとともに夢の中で出会った少女和歌さんの事もあの世界の景色のようにぼんやりと考えていた。    


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