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1.月岡和歌

 私は、高校2年生。県内の女子校に通っている。最近、何もかも上手くいっていない。成績も部活も人間関係も。中学校の頃、勉強もバスケもそこそこ成績が良かった私は、推薦で今の高校の一番上のコースに入学した(なおクラスは上からS・A・ℬ‐2・ℬ‐1・進学5〜1の順)。その分、高校の先生方に期待された。結果、勉強もバスケもスランプに陥った。毎回呼び出される私を見て、S組の子達は私のことを無視するようになり、中学から仲の良かった進学4組の子とも仲悪くなった。ここまでは平気だった。問題は高校2年生の春、成績不十分によりℬ‐2組に移動になってから。ℬ‐2の子に、「S組の子はしっかりしているもんね」と鍵やゴミ捨てなどの当番を押し付けられたり、「S組から来た子」というだけでイジメられた。大好きなバスケ部でも人間関係がおかしくなった。1年の頃から私の心の支えだった先輩に「少し距離を置こう」といわ言われたり、S組で一緒だった子に白い眼で見られたり、今までの人間関係が音を立てて崩れた。6月の大会のスタメンからも外され、部活を辞めてしまった。唯一の癒しは妹の夕樺梨。小学4年生。さすがにこんな悲しい事は相談出来ないが、一緒に遊んだり、他愛のない話をしているだけでも心が落ち着く。        _ そんな日常を送っていた。 そう、あの日までは _  

 7月19日 よく晴れた日の朝、私はいつも通り夕樺梨の「いってらっしゃい!おねえちゃん。」という言葉を聞いて「いってらっしゃい!ゆかり。」と言いながら自転車を漕いだ。私達は逆方向。夕樺梨は家を出て左に曲がり、私は右に曲がる。だから私達は毎朝、家の前でこのようなやり取りをする。でもまさか、これが大好きな妹との最期の会話になるなんて。この時はまだ、思ってもみなかった。私はまたつまらない1日を過ごすのか、ぐらいは思っていたかもしれない。案の定、そうだった。普通に授業して、お弁当を食べて、ℬ‐2の子達に罵声をあびせられ、それをひたすら無視し続け、消しゴムや石を投げられ、いつも通りつまらなかった。そんな帰り道、自転車を漕ぎながら明日の事を考えていた。明日は20日。終業式。やっと悲しい学校生活が一時的だけど終わる。待って、7月20日は夕樺梨の誕生日だ。最近、ドタバタしていて忘れてた。そういえば、プレゼントを買っていない。そう考えて私はいつもの道を曲がらずまっすぐ行った。おもちゃ屋さんに行った。扉を開けると、入口付近に猫のぬいぐるみが置いてあった。綺麗な色の三毛猫。そういえば、夕樺梨猫飼いたいって言っていたっけ。値札を見たら2500円、ギリギリ買える値段だった。会計の時、店員さんに「ラッピングしてください。妹の誕生日プレゼントなんです。」と言うと、「優しいお姉さんですね。妹さんきっと喜びますよ。」と言ってくれた。嬉しかった。店を出ると、プレゼントを前のカゴに入れて、自分のかばんを後ろのカゴに入れた。自転車を走らせた。これから家に帰る。坂道を下って行く。夕樺梨には明日まで内緒。気に入ってもらえるかな。そんな事を考えていた。その時、十字路に差し掛かった。三角形の≪止まれ≫の標識が見える。左側から車の音が聞こえてくる。私はブレーキを掛けた。が、止まらない。ブレーキがきかない。まって、まって、とまって、ねぇぇぇぇ。そう思ったときはもうすでに遅かった。私は乗用車に轢かれた。自転車ごと飛ばされ、私は近くの塀に頭をぶつけた。かばんは側溝に落ちた。ピンク色のプレゼント袋は私の頭から流れた血によって赤く染まった。

                                                

                                           

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