ミライアとシュルリー王女
「私とシュルリー王女は魔術師士官学校の同期生なんです」
そう、話を始めたミラ。
俺は、静かに聞いた。
「ライトワール王国では10歳から5年間、魔法に才能があるものは魔術師士官学校で、専門的魔法を学びます。
平民でも貴族でも、みんなそこに入学します。
まあ、入学にはそれなりにお金はかかりますが。
シュルリー王女とは、その学校で入学からの友達でした。
ですが、3年の終わりの日に急に、
「あなたも、他のみんなと一緒だったのね!」
そう言い残して、学校には来なくなりました。
プルートー先生が通いで授業をしていたらしく、賢者学科主席で卒業にはなっていますが」
前世では当たり前のごとくニュースになっていた、『イジメ』が頭を過った。
「もしかして、イジメがあったとか?」
「はい、シュルリー王女はイジメを受けていましたが、私はそれには参加してませんでした、間違いなく友達と呼べる関係でした」
「ミラはイジメられなかったの?」
「はい、下級とはいえ貴族の家でしたから、父もまだ生きていましたので」
『あなたも、他のみんなと一緒だったのね!』って言葉が気になる。
この国には身分がある、王族ならイジメなんて受けないはずだ。
可笑しい。あれ?もしかして、
「シュルリー王女ってもしかして身分隠してたりした?」
うつむきかげんで床を見ながら話していたミラが、なぜそれを?と、言うかのように顔を上げて驚いてた。
「はい、ちりめん問屋の娘だと言って通ってました」
だいたい、予想はついた。
『あなたも、他のみんなと一緒だったのね!』
その言葉は、誤解から生まれたのだろう。
「で、身分がバレた?」
え?って顔をするミラ。
「は、はい、私、風邪で一週間ほど休んでたんですよ、で、その間にどういうわけか王女であることがバレたみたいで、イジメてた子達が仲直りしようとしてました」
ミラの目にはそれは仲直り、と、言う綺麗な事に見えたんだね。
「ミラは、休みあけの時にシュルリー王女の身分を知ったの?」
「いえ、私は2年生の頃に宮廷勤めだった父から聞かされました、ですがその頃はもう友達だったから気にしなかったですね、今思えば子供だったから出来た事かもしてませんね」
「王女と知っていてもそれを言わなかった?」
「はい、隠しているのに私が言うのは駄目だと思いましたよ、友達の隠し事を話すのは良くないと思っていますから」
「でも、休みあけにバレててシュルリー王女の周りの反応は変わっていた」
「はい」
コクりと頷くミラ。
「もしかして、ミラ、休みあけに呼び方変えたりした?シュルリー王女の」
また、コクりと頷く。
「シューリーと、呼んでいましたが周りは王女陛下と呼ぶようになっていたので、私だけシューリーなんて呼ぶのは流石に気が引けて、私もシュルリー王女陛下と・・・え?これが原因なんですか?」
人の言葉とは、言った側、受けた側が同意語として通じないことがある。
言った側は良かれと思って言った一言が受け手には、嫌な言葉に聞こえたりする。
「明日、王都に行こうか」
俺は、そう言って寝室に入った。
眠る前に飲む煎じ薬には眠りを深くする薬草を追加して貰っていたので眠気が出てきた。
・・・ベッドで俺の枕を抱えて眠るハイトン。
うん、枕の匂いをスーハースーハーするのやめて。




