異世界転生
物語と言うものは、日常から非日常に変わる時に始まる、一番のお約束と言えば美少女の突然の登場。
学校に行く朝、出会い頭にパンを咥えた美少女とぶつかったり、時季外れの転校生が美少女幼馴染であり、そこから学園ラブコメと言う物語が始まる。
朝、鳥に餌を与えた後ラッパを吹いていたら美少女が空から降ってきて、奇想天外摩訶不思議冒険ファンタジーが始まったり、そして、お約束的な死から始まる転生記、トラックにひかれそうな子猫を助けるが、自分が死んだり、なにを勘違いしたかゆっくり走るトラクターから助けようと飛び出し、美少女を突き飛ばしてケガをさせたあげく自分はショック死して転生をし物語が始まったりする。
そして俺は過労からくる鬱になりストレス性高血圧となり、くも膜下出血で死んだ。
天国か地獄かと日本人の思う死生観しかなかった俺の目の前には、ティラノサウルスに翼を付けたようなドラゴンが一匹口からチロチロと火を出しながら立っている。
なぜこうなったかと言うと、・・・・・・
美少女閻魔ちゃんに薦められ異世界転生をさせられてしまった俺は、スイスの高原のような澄みきった青空と、ひたちなかのネモフィラの花畑、周りには雪化粧した切り立った山々が見える地で気が付いた。
なるほど、実はここが天国と言うわけで、あの閻魔ちゃんはきっと、中二病を発症している閻魔であって素直に天国行きとは言えない体質なのだろうと都合よく考えてみた。
が、俺は会社から出た時の姿、サラリーマンスーツに、似合わない日本刀が腰に大小セットで無理やり牛革のベルトに差さっていた。
やはり異世界に転生したと考えるべきか。
うん、なんか痛いコスプレイヤー、いや、西洋文化を取り入れたけど帯剣して戦う白虎隊の隊士のよう、白虎隊のコスプレ?とりあえず刀を抜いてみると刀身の波紋はまっすぐ。
白とも言えない、銀とも言えない、金とも言えない、タングステンのような渋い金属色の刀身。
明らかに金属であるのにまるで竹でできた竹刀のように軽い。
片手で軽々と扱えてしまうような日本刀だ。
鞘も同じ金属製のよう、鍔に深紅の宝石で北斗七星が描かれた装飾が綺麗に面妖な赤い輝きを放っている。
鍔のデザイン良いね~好みだよ。
どれ、ちょっと軽く振ってみるか、
シュッ
ズサササササササ
オリハルコン製と思われる日本刀を振り下ろした先の地面には約幅15cm深さ30cm長さ1mの亀裂が出来た。
ないないない、こんなのあり得ないから、剣使えるようにって設定したけど、これはいくら何でも無茶苦茶過ぎるでしょ。
きっとこの地面が柔らかいんだな、よし抜刀術を試してみますか。
シュッ
お~すげぇ軽く抜ける、速い、めっちゃ速い、神速の抜刀術って憧れてたんだよ。
ズザザザザザ~~~~~
抜刀術を抜いた先の山の頂に積もっていた雪が一気に滑り落ちて大きな雪崩として崩れ落ちた。
偶然、偶然、偶然、抜刀術で雪崩なんか起きるわけないじゃん、ないないないない、あり得ないから。
はははははははは、そんなの偶然に決まっているから。
さて、とりあえず村とか人の住んでるとこに行かなきゃ。
このままここでは暮らせなさそうだし、夜には冷え込みそうだから凍死してしまうな、しかし、何でサラリーマンスーツにビジネスシューズかね~旅には不向きだろうに、閻魔ちゃんに頼むとき願の一つは冒険者の服装って言ったほうが良かったのかな?剣と魔法は欲張りだったのか?あ、魔法ってどうやって使うんだ?習わないとならないのかな?イメージだけで火出せるかな?右手人差し指に火が着くイメージで「火でろ」
ボッ
お~すげぇ、ライターいらないじゃん。
最悪野宿には焚き火出来るかな?
ってライターあれば魔法いいらなくない?まぁ~魔法の事はあとにしておくか。
異世界転生ってサポートないと何にもわからないんだな、スマホを異世界に持ってきても電波ないからダメか、なら異世界ライフ電子辞書か?電池すぐなくなりそう。
考えないでとりあえず歩こう。
ビジネスシューズで砂利道は合わないから、足痛いなぁ、砂利靴に入るし参ったなぁ~。
一時間ほど歩くと、
おっ、煙り発見、人居そう良かった、野宿は回避出来そうだな、もう一踏ん張り歩けば建物見えて来るかな。
煙り、煙り、煙り・・・・・・ってか、火事やんか~