王都セルシー
四日後、約束通り馬車が迎えに来た。
馬車は四頭立ての大型の馬車、御者は前に二人座り、後ろに箱型の乗客室があるタイプで六人くらい体面に座れそうな大きさだった。黒塗りでドラゴンと剣を具象化した紋様が装飾されている。
明らかに、宮廷の関係者だよね?ってわかる馬車。
フワフワの椅子にビジネススーツを着た俺は座った。天叢雲剣は手に持っている。帯刀ベルトまだ買ってないや。
買わないと、持ち運びに不便なんだよな。
勿論、ミラと、ハイトンも同行する。
ミラと、ハイトンはミラ手作りの俺のビジネススーツを真似て作った服を着ていた。ダサい。やめてほしい。
別に俺、このビジネススーツにこだわりはないから。
今度、ミラに作ってもらおうかな、買えばいいかな?
休憩をはさみながらゆっくりと馬車は王都に向けて進んだ。
村から二時間を過ぎたくらいには左手に海が見えていた。
空と海の境界線がわからないような澄んだスカイブルーの海に目を奪われた。
少し疲れが出たがその光景で落ち着いた。
そこからさらに二時間が過ぎると、王都セルシーの城壁が見えてくる。
王都セルシーは城壁の外は川が流れ堀の役目をしている、城塞都市、城壁はおおよそ20メートルくらいの石組壁。
川には一本の大きな橋がかけられていた。
橋を渡る直前に関所があったが、馬車のせいか、フリーパスで入った。関所の番人が両側5人ずつ計10人が敬礼していた。
橋から城壁の門へとつながり中に入ると、まっすぐな大通りの先に、小高い丘に建てられた西洋風のお城が見えてきた。日本の城好きとしては許せないデザイン感がある。
大通りには商店がひしめいていた。そこで目に留まったのは眼鏡の看板。
「止めてください」
その看板が通り過ぎたところで馬車を止めてもらった。
「いかがなさいました、御主人様」
「ミラ、あれって眼鏡売ってる?」
「はい、眼鏡屋でございますが、御主人様は目がお悪かったのですか?」
「いや、悪くはないのだけどサングラスが欲しくて」
「サングラス?ああ、色付き眼鏡ですか?」
「ちょっと寄っていいかな?」
御者に伝えるとまだ面会の刻限ではないというので寄らせてもらった。
「いらっしゃい」
あまり良い感じではない主人が椅子にもたりかかりながら言った。
初めて入る異世界の店、品は多くはないもののサングラスは置いてあった。
「試していいですか?」
「壊すなよ、高いんだから」
なんか、態度悪いね。
「御主人様、ここは貴族御用達の看板が出ています、その、我々庶民はあまり相手にはされません」
そうミラが教えてくれた。
金ならあるんだが。
二つ三つと試させてもらった。
「けっ、どうせ冷やかしだろ帰りな、高くて買えないだろあんたみたいなのには」
まあ、よれよれになってきているビジネススーツにだから金ないように見えるのか、なんか気分が悪くなり何も言わずに店を出た。そこで深呼吸をする、
「スーハースーハー」
「大丈夫ですか?なぜ色付き眼鏡などお求めになりたかったのですか?」
「いや、このカラフルな街が苦手でね、少し緩和したくて、色の情報が多いのも疲れるんだよ」
「そうでございましたか」
「さあ、用を済ませてさっさと帰ろう」
この町は、色が多すぎた。城は白に金色の装飾の壁、町の建物は黄色や赤の壁が連なり、屋根はオレンジ色の瓦で統一されていた落ち着かない。生垣とかもないと。
西洋の城塞都市はこれだから嫌いなのだ。
何も買わずに馬車に乗り込むと15分くらいで城の門に着いた。
門の外では、バルーサス大臣とプルートー先生が立って待っていた。




